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第4話 狂気を纏う錬金術師

少し短いですが、キリが良いので。


 あれから、ゲーム内時間で2週間、現実時間で1週間が過ぎた。

 この日も前日と変わらず黙々と調合をし、ゴブリン退治等のクエストを受け、モンスター相手に回避の練習を繰り返す。

 作成したポーションであるポイズンポーションとパラライズポーションは、どうやら投擲が可能な"特定のアイテム"に含まれていないようで、投げるとストレージへ消えてしまい、意味のない物になっていた。しかし、調合のレベルを上げる為に作成はしている。

 そして数が多く、ある程度はNPCの道具屋に売却して金銭を確保していた。


 所持金が増えればもちろん、露店を開いていたプレイヤーに装備の注文をして白衣を手に入れる事ができた。

 これで研究者の見た目に一歩近づいたが、まだ片眼鏡は手に入っていない。

 白衣にただでさえ少ない全財産の大半をつぎ込んでしまったので、片眼鏡はいつになることやら。

 ただの眼鏡なら割と安く購入できるので、いっそ妥協しようか、などと悪魔の囁きの様な物が聞こえたりと言うことがあったが、この【ミリアド・ワールド・オンライン】では悪魔族という種族が存在するので、そういう種族が使える魔法の類かもしれない。


 まあ、そんな事はどうでもいいだろう。重要なのはコーディーが、未だに始まりの街から次の街へ行けずに居る事だ。彼にとって道中のモンスターが強いのはもちろんの事だが、次の街に行く前にブラックヴァイパーに勝ちたいという目標があった。

 だから、コーディーは時偶ときたまいる小者のようなプレイヤーに嘲笑をされても無視を決め込み、回避の上達に取り組んでいた。

 そしてこの日、遂に変化が起きた。


 周りにプレイヤーが全く居ない平原フィールドで、トレインというモンスターを引き連れる行為をして集めたゴブリン15体を相手に、只々回避を繰り返していたコーディー。

 短剣を上手く使い棍棒を受け流し、なるべく小さな動きで攻撃を避ける。

 時折攻撃を受けつつも、自作した低級ポーションでHPを回復して満腹度が減ればNPCの道具屋やプレイヤーの開いている露店で購入した料理を食べ、ストレージから取り出した石を投擲しゴブリンの数を減らす。


(そろそろ休憩を挟むとしよう……)


 レベルアップで手に入れたボーナスポイントをAGIとDEXに振り分け、反復練習で回避能力は上達しているお陰で、15体のゴブリン相手に石でヘイト――モンスターからの怒り――を集めながらでも考える余裕が今のコーディーにはあった。

 一旦休憩を入れる為、投擲のスキルレベルが上昇した事により手に入ったアーツ、《複数投擲》と短剣を巧みに使用して多くの石を投擲、加えて短剣で攻撃をし、ゴブリンの数を減らしていると……。


【投擲スキルのレベルが15になりましたので、職業と投擲スキルの相性により投げる事の出来る"特定アイテム"に自作アイテムが追加されました】


 というログが抑揚のない合成音声と共に流れた。

 攻撃の手を止め、1、2体逃走するゴブリンを見逃して、残っているゴブリンから繰り出される攻撃を回避しつつ、ログに目を通す。

 プレイヤー間のチャットや運営からのお知らせ等が表示されるログだが、音声と共に流れた事は一度たりとて経験していなかった。


(ほう、これは……)


 ログを非表示にするとコーディーは持っていた石をストレージに仕舞い、代わりに今までストレージの肥やしになっていた自作のポーションである、ポイズンポーションとパラライズポーションを持てるだけ取り出した。

 いつか使うかもしれないと一定数取っておいた甲斐があったというものだ。

 今までは低級ポーションや石以外は投擲する事ができなかったのだが……コーディーはゴブリンの円から抜け出して距離を取ると両手の指に挟んだ、ポイズンポーション4本、パラライズポーション4本の計8本のポーションをゴブリンに投げつけた。


 ゴブリンへ飛来する小瓶。それらは本来であれば投擲直後にストレージへ戻っていたのだが、今は嘗てとは違い投擲アーツ、《投擲力上昇》の恩恵によりかなりの速度を伴い、集団のゴブリン達に打つかると高音を立てて割れ、中の液体が襲いかかる。

 砕けた小瓶の破片がゴブリンの目や皮膚に刺さり、毒々しい紫の液体は対象の皮膚を焼き、醜い悲鳴が辺りへ響く。

 対して沸騰して色が黄色に変わるという不可思議な現象を起こし作成されるパラライズポーションは、黄色い液体が掛かったゴブリンの動きを止め、飛びかかって来ていた個体は地面へ倒れ伏した。


 奇跡的に躱す事が出来た個体や、確率が低く状態異常に掛からなかった者は、追加で投げられた2種の状態異常ポーションに襲われる。

 それでも無事な個体は石と短剣を振るうコーディーによって消えてゆく。

 悲鳴を上げ、もがき苦しむゴブリン達を視界に入れたコーディーの口角は、自然と上がってゴブリンへ更なる恐怖を植え付けた。


 少し前に逃走した個体を羨み、妬み、憎むゴブリン達だが、その感情を恐怖が上書きし毒で苦しみながらも動ける者は這ってコーディーから距離を取ろうと――生を掴もうとするが、突如背中に衝撃を受けた事で更なる恐怖に陥る。

 何故ならば、歪んだ笑みを浮かべたコーディーが足で背中を踏みつけているのだから。最早どちらがモンスターなのか分からない。

 ゴブリン達にとって、コーディーは突如進化を遂げたボスキャラのような物だろう。


「クハハハハハハハハハッ!!」


 コーディーのキャラクターに合う様な高笑いを周囲へ響かせ、敢えて短剣を使わず足裏でグリグリと踏みつけ、トドメとばかりに力を込め頭部へ足を振り下ろす。

 もし【ミリアド・ワールド・オンライン】に血の表現があったなら、血のエフェクトが飛び散っていた事だろう。

 ゴブリンの汚らしい脳漿が撒き散り、緑が生い茂る平原とコーディーの純白の白衣を赤黒く染め、見る者にSAN値チェックが入る事必須だ。


 だが、保護者の許可は必要だが子供でもプレイできるこのMWOに、血のエフェクトは存在しない。

 素材としてモンスターから血液は手に入るのだが、生々しい物ではないのでスプラッタ趣味のある者には些か物足りないだろう。

 収まる事のない高笑いを響かせ、コーディーはゴブリンを始末していく。


 全てのゴブリンが消え、ようやく彼の気の高ぶりは収まった。

 幸いにも現時刻は太陽が辺りを燦々《さんさん》と照らしている昼間なので良かったが、これが夜の帳が落ちている夜間であったならば、奇声を発している人型のモンスターと間違われてもおかしくはない。

 夜間はモンスターの強さが増し視界も悪くなるので、コーディーにはキツイかもしれないが。

 それでも、何度か夜間に平原へ出ていたりする。もちろん、採取の為だ。


「クックックッ……! これで漸く……」


 ブラックヴァイパーに勝つ道筋が見えて来た事により、高笑いの次は含み笑いして、怪しさが滲み出て来たコーディー。

 まさか、職業とスキルの相性という物が存在していようとは。これは掲示板でさぞ話題になっている事だろう。

 そして、その相性のお陰でコーディーは先へと進めるようになった。


 これが、死を振りまくマッドサイエンティストの序章。


 コーディー

 職業 錬金術師

 Lv11

 HP 100/100%

 MP 100/100%



 STR 10

 VIT 10

 AGI 60

 DEX 25

 INT 10


 空腹度 100/100%


 スキル

 《錬金術 Lv1》《調合 Lv11》↑8UP《投擲 Lv15》↑12UP《採取 Lv10》↑7UP《鑑定眼 Lv8》↑6UP

一気に日数が経過しましたが、くだくだしては出したい話が遅くなるのでこうなりました。

強くなった印象が薄くなってしまいましたが、錬金術師の強さはレベルなどではなくアイテムだと、考えています。



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― 新着の感想 ―
[一言] ウハハハハはないよ
2021/07/14 16:46 yfytfghfgfchft
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