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第26話  順位発表と圧倒的な差

投稿が少しばかり遅れてしまいましたね。

申し訳ございません。

『それでは、皆さんお待ちかねのランキングを発表したいと思います!』


 運営のその言葉にコーディーの心臓が早鐘を打つ。

 多くのモンスターやボスモンスターも倒し、NPCだって救出した。


 彼はゲームをとことん楽しみ、PKをする事でそのプレイヤーがメダルを持っていた場合、そのメダルを死に戻り時に落とすという隠し要素を見つけるほど、コーディーは【ミリアド・ワールド・オンライン】を楽しんだ。

 これで、自身がランキング上位に入っていれば万々歳だろう。


 そう考えていると、突如として【ドリット】の街の上空に巨大なスクリーンが複数現れた。

 そこに映し出されているのは、黒のスーツを着た黒髪短髪の男性が白い空間に立っている映像。

 男性の後方には真っ白な空間の中で異様に存在感を放つ、豪華絢爛な表彰台があった。


『皆さん見えていますか? 僕は運営の一人、クアラルーンでーす!』


 先程まで喋っていた若い声の男性と思われる運営がスクリーン上に姿を現し、マイク片手に開いている手をこちらに振っている。

 クアラルーンと名乗った運営の男性は自己紹介後、再度口を開く。


『えー、これから発表されたプレイヤーは僕が居るこの空間に転移してもらいます。んで、なんか適当に一言よろしく! それじゃあ、早速発表するよー!』


 子供のような性格をしたクアラルーンは、軽い口調で淡々と説明をした。

 どうやら、10位以内に入っていれば上空に存在している多数のスクリーンにその姿が映されるらしい。

 ずっと上空を見上げていると、ゲーム上だが首が凝りそうだと思ってしまう。


 コーディーは後ろ首に右手を当て、凝りを揉みほぐす。

 ゲーム世界なのだが、心做しか凝っているかのように錯覚したのだ。

 ここまでリアルに作らなくても良さそうだが、運営は凝り性なのだろうか。

 そんな疑問をコーディーは抱いた。


 スクリーン上ではクアラルーンがパチンッと指を鳴らし、それによって彼の居る場所以外が暗くなる。

 そして、そこからともなくドラムロールが鳴り、クアラルーンは口を開いた。


『11位との差は僅か100ポイント! 1万3420ポイントを獲得し、仲間と共に多くのモンスターを倒して10位になったプレイヤーは……』


 スクリーンはクアラルーンから誰もいない暗闇を映し出し、ドラムロールが止まった。


『この男だ! 変幻自在の槍捌き、魔法だって使いこなすぜ! 魔槍使いのクニキダァァァ!!』


 スクリーンに映し出されていた暗闇の中央にスポットライトが当てられ、そこには短髪緑髪の華奢な男性が立っていた。

 魔法と槍を巧みに扱い、ただの槍使いから魔槍まそう使いに転職を果たしたクニキダ。

 彼は突如転移した事と自身が10位に入賞した喜びで呆然としている。


(魔槍使い……?)


 コーディーは自身の知り得なかった新たな職業に疑問を浮かべた。

 そして、瞬時に隠し要素である職業への転職が存在するのだと理解する。

 明かされていなかった転職だが、プレイヤー間では転職が存在するのではないかと言う話はあった。


『よっっ……しゃぁぁあ!!』


 クニキダは自分が入賞した事を反芻はんすうしながら、両方の拳を握りしめ喜びを表現した。

 演出の為に暗くしていた空間が明かりを取り戻し、クアラルーンはクニキダの元へ移動する。


『クニキダさん、10位入賞おめでとうございます! では、今のお気持ちを6文字でお願いします』


 クアラルーンがクニキダに賞賛の言葉を送ると共に無茶ぶりをした。

 そして、マイクをクニキダへと向ける。実はこのマイク、形はマイクなのだが実際は刃が中に仕込まれている暗器だ。

 つまり、マイクのような機能は一切ついていない。


『嬉しいです!』


 クアラルーンの無茶振りにきちんと答えるクニキダ。


『はい、ありがとうございます。では、次に――』


『ちょっと待って! 僕の扱いがあまりに雑すぎない!?』


 予めクアラルーンは適当に一言お願いしますと言っていたが、本当に適当で且つ一言だった。

 そして、次に行こうとするクアラルーンをクニキダが止める。

 まるで二人の掛け合いは、前もって決められていたかのようにスムーズだ。


 こんな調子で次々と発表がされていく。

 当然上位10名の中にはコーディーも知っているプレイヤーが入っていた。


『2万410ポイント獲得で第4位! その小さな体躯からは想像できない高度な剣さばきで多くのモンスターを葬った! 2つの剣を巧みに扱う小さな双剣士! プレイヤー、ヨウジョォォォォ!』


 スクリーンに軽鎧とフリフリの可愛い服を合わせたような装備をしている、小学生低学年くらいの女性プレイヤーが映し出された。

 スポットライトが当てられその姿が映し出された瞬間、街中に幾重にも重なった雄叫びのような声が響く。


「ヨウジョたぁぁぁぁん!!!!」


 中央広場から離れた通りに居るコーディーの耳にも、その野太い声援は聞こえた。

 その声援に答えるように、明るくなったスクリーンに映っているヨウジョは、飛び跳ねたり大きく手を振ったりしている。


『ヨウジョちゃんだよ~! 皆の応援もあって4位になれました~! ありがとうございま~す!』


 MWOは性別を偽ってキャラクターを作成できないので中の人は女性なのだろうが、大人がヨウジョを演じているだろうと考えたコーディーは、ふいにも痛々しいと思ってしまった。

 ロールプレイ――キャラを演じる事も1つのゲームの楽しみ方なのだと理解しているので、コーディーは先程の考えを捨て去るように頭を振る。


 彼もコーディーというキャラクターを演じているのでロールプレイの面白さは分かっているのだが今、初めてヨウジョを目にした時、見えていない内の部分を想像してしまったのだ。

 それは、スクリーンに映るヨウジョから、照れという部分が出ているのを感じ取ったからだろう。


 彼女は多くの視線が集まった所為で、緊張からか完全にキャラを演じきれなかったようだ。

 声援に答え終わったヨウジョは、他のプレイヤー達が居る表彰台の近くへ移動する。


『ここからは、いよいよトップ3の発表です! もう誰の名が呼ばれるのか分かっている方も多くいることでしょう!』


 クアラルーンが語調を強くして言い放った。

 再度スクリーンが暗くなってドラムロールが鳴り、一呼吸置いてクアラルーンは口を開く。


『総獲得ポイント数2万7700ポイントで第3位! 身の丈以上の大剣から放たれる一撃は大岩すら容易く砕く! 攻撃こそ最大の防御を体現してみせたそのプレイヤーの名は! ヤァァァクモォォォォ!!』


 背中に身の丈以上の大剣を担ぐ黒色の重鎧を纏った大男が、スポットライトを浴びせられ暗闇から姿を現した。

 身長は190はあるだろうヤクモは普段全身鎧を纏っている。


 だが、現在は頭部の装備だけ外しており、威圧感を放つ『男』らしいより『漢』らしいという言葉が似合う顔を見ることが出来た。

 ガッシリとした身体は漆黒の鎧で隠されているが、それでもガタイが良さそうだという事は見て分かる。


『ん? ここはどこだ? さっきまでモンスターと戦っていたはずだが……?』


 ヤクモは転移した表彰台から降りて、辺りをキョロキョロと見回している。

 実は彼、先程まで街の外でモンスターと戦闘をしていた。


 ヤクモの頭にはイベントの事など全く入っておらず、イベント中は街にモンスターが現れたので、ただ暴れ回っていたに過ぎない。

 そして、モンスターが周りから居なくなると、北門の付近に居た彼は門から外に出て戦闘を行っていた。


 その所為でイベント中にヤクモをずっと探していた、クラン流星の作戦参謀をしているフル―という男性プレイヤーは、イベントで全く活躍できなかった。

 それでも、一応彼は20位台のポイントを獲得している。


『ああ! ちょっとヤクモさん! 少しの間で良いですので表彰台に居てください!!』


 クアラルーンは明るくなった白い空間を移動し始めたヤクモを止めて、どうにか表彰台へと戻した。

 その際にクアラルーンは、これだから脳筋は………と小さく呟いた。その声は誰にも聞こえること無く消えていく。


『で、では気を取り直して、第2位の発表です!』


 彼は声を張り上げて言った。

 状況を掴めずに居るヤクモは表彰台で大剣を振り回し、素振りをしている。

 スクリーンが発表のため暗転した。


『総獲得ポイント数、3万200ポイントで第2位! ボスモンスターに狙いを定めイベントボスを3体もその拳でノックアウトした! そんな最強の女性プレイヤー! フレェェェアァァァァ!!』


 クアラルーンは喋っている内に気分が良くなったのか、フレアの名を呼ぶ際に分かりやすく巻き舌が入った。

 暗くなった空間で表彰台にスポットライトが当てられる。

 第2位の場所には火山フィールドのボス、レッドドラゴンを討伐した証である真紅の鎧を纏った、腰まである赤髪の女性プレイヤーが立っていた。


『おおっ、私が映ってるな。いや~正直な所、私が一位だと思ってたんだが、上には上がいるんだな。驚いたよ』


 フレアはクアラルーンから渡されたマイクを手にそう口にした。

 スクリーンを見ながら口角が完全に上がりきったコーディーは最早、緊張をしていない。


 彼は歪んだ口角を元に戻し、冷静でクールなコーディーというキャラを思い浮かべ息を吐いた。

 スクリーン上では3位のヤクモと2位のフレア、そして運営兼司会のクアラルーンの3人が1位は誰なのか予想できますか、と話をしていた。


 ヤクモは、強い奴が1位だろう。それより、俺は何故この場に呼ばれたんだ? と述べる。

 フレアは、最早想像がつかないと述べた。

 そうして話が終わると、クアラルーンは指を鳴らして、白い空間の明かりを落とす。


『それでは、第1位の発表です』


 沈黙の中にドラムロールが主張をするように鳴っている。

 一度深呼吸をして、クアラルーンは続けた。


『数々の猛者を押しのけ、初イベントで栄えある第1位に輝いたのは…………3万9980ポイント獲得でダントツのトップに躍り出た錬金術師のコォォォディィィィィィ!!!! なんと生産職で且つ単独にも掛かわらずボスモンスター2体を倒し、大量のモンスター掃討に貢献して、更にはNPCの救出もした化物だ!』


 名前を呼ばれたことでコーディーの視界は切り替わり、次の瞬間には先程まで自分が見ていたスクリーン中、ヤクモやフレア達がいる空間へ転移していた。

 コーディが現在、目が痛くなりそうなデザインをした表彰台の真ん中に乗っていること、前方に街の光景を見ることの出来るスクリーンがあること、クアラルーンがこちらに歩いてきていることを確認した時、空間は明かりを取り戻した。


『では、見事1位になったコーディーさん、感想をお願いします』


 クアラルーンからマイクが渡される。

 それを受け取り、コーディーは口を開いた。


『突如として始まった初イベントですが、大変楽しませていただきました。単純にミリアド・ワールド・オンラインという世界を楽しんで、そして1位になれたのですからこれほど嬉しいことはありません。これからもミリアドを心ゆくまで楽しもうと思います』


 そう述べてコーディーはマイクをクアラルーンに返した。


『はい、ありがとうございました。皆さんの活躍はプロモーションビデオに使用させていただきますので、完成した際にはぜひ見ていただけると嬉しいです。それじゃあ、お待ちかねの褒賞です。お受け取りください!』


 クアラルーンがそう言うと、目の前にウィンドウが表示され、そこには多くの賞金と名の知らぬ素材や記念品などが記されていた。

 コーディーはそれに目を通した後、一番下の受け取るというボタンをタッチする。


 すると、ウィンドウから光の球が出てきて、それはコーディーの身体へと入り込む。

 いつも通りの、アイテムが手に入ったエフェクトだ。褒賞はストレージに収納されたのが理解できた。

 こういう所までおしゃれなのがMWOというゲームだ。


『では、皆様に褒賞や記念品を配り終えました! これで、ミリアド・ワールド・オンラインの初イベントは終了とさせていただきます! 皆様、本当にありがとうございました!』


 クアラルーンは声を張り上げて言い放った。

 その直後、視界が切り替わり、転移する前に居た大通りに戻される。

 街の上空からはスクリーンが消えて、周りにはイベントが始まる前の様にNPCが建物から出てきて、脅威は去ったと互いに喜び合っていた。


「あのマイク、暗器でしたね……しかも、PKが可能な武器とは」


 コーディーは誰に言うでもなく呟いた。

 クアラルーンからマイクを渡された時、彼は《鑑定眼》を使ってマイクを調べていた。

 すると、マイク型の暗器であることが分かったのだ。


 そして、プレイヤーへダメージを与えることが可能となるのだと記されて、内心では驚いていたが決して顔には出す事はなかった。

 あのタイミングで驚いた表情をするなど、コーディーというキャラクターには似合わない。

 自分はコーディーなのだから無様を晒す訳にはいかないという思いで、彼はクールなコーディーを保った。


「これで、初イベントは終了ですね。ですが、あのメダルは……」


 彼ははしゃいでいる子供のNPCや抱き合い喜んでいる人々へ視線を向けた。

 その時、目の前にウィンドウが現れる。


 運営からのお知らせだろうか、と疑問符を浮かべるコーディーの視界に入り込んできたのは、メダルの換金に関するウィンドウだった。

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