第23話 偶然の再会
投稿が少し遅くなった気がしないでもない。
イベント終了後にポイントと交換できるというメダルを集めに、街を駆けるコーディー。
白髪と白衣が風になびき、魅力を上げるのに一役買っている。
「さて、NPCにこちらの攻撃は当たらないようですし、派手に動きましょうか」
少し前に3人のNPCを助けたコーディーは、そのことを知っていた。
イベント故に何があるか分からない。その現状でNPCにプレイヤーの攻撃が当たらないと判明した事は、彼を動きやすくしてくれる。
しかし、自身が持つ2種の状態異常を与える煙玉まで無事なのかは判明していないので、煙玉の使用は避けようと考えつつ足を動かす。
すれ違うモンスター達を容易く屠り、モンスターからはメダルが落ちないことを確認する。
確定はできなさそうなので、できるだけモンスターも蹴散らしてNPCを探した。
そうして北門側へ向かっているが、NPCは愚かプレイヤーすら見かけない。
だたモンスターの数は増えているように感じた。
メニューを一瞬だけ開き、現在のポイントが3000を超えている事を確認する。
ランキングのような物があれば、と思いながらもコーディーは辺りへと視線を向けた。
「ナナミちゃん、早く早く!」
「駄目っ! 追いつかれちゃう!」
中央広場から離れ、北門の方向へ進んでいたコーディーは偶然見知ったプレイヤーを発見した。
「ん? この声は……」
思わず呟いたコーディーが前方の十字路に目をやると、逃げる数人のNPCを庇う様に2人のプレイヤーがモンスター相手に奮闘しているのを確認した。
小さい体で身の丈ほどの斧を操るドワーフの少女と、弓を操るスラッとした身体のエルフ、この2人が少し先にいる。
直ぐに多くのモンスターによって見えなくなったが、先程聞こえた声と一瞬だけ見えた容姿からコーディーは知り合いのプレイヤーであると当たりをつけて、一気に地を駆け出した。
状態異常付与がされている投げナイフを指に間に出現させ、直ぐさま投擲し、続けて爆弾と各種状態異常ポーションを投擲する。
モンスター達は呻き声を上げて、爆音とガラス瓶の割れた音が辺りへ響く。
「な、何!? 何なの!?」
ナナミの声がコーディーの耳に入り、彼は2人を安心させる為に声を張り上げて助太刀する事を告げる。
「助けに入ります! 2人はそのままNPCを連れて逃げてください!」
コーディーが40は居るだろうモンスターの数をすごい速度で減らしていく。
中には彼も知らない【ドリット】の街周辺に生息するモンスターも居るのだが、他のモンスターと同じように屠っている。
毒、麻痺、盲目、鈍足を与えるポーションと、毒に麻痺の状態異常が付与されている投げナイフを次々と投擲し、近くに来たモンスターは短剣と蹴りで対処して、トドメとばかりに爆弾を投げ、確実に命を奪う。
いくら数がいた所でコーディーには全くと行っていいほど攻撃が当たらない。
まるで、攻撃が彼を避けるかのように抜けていくのだ。回避の腕は全く鈍っておらず、回避しつつ攻撃もする余裕がある。
そうしてハルとナナミ達を追っていたモンスターの過半数を倒し、残りはハルとナナミが冷静に対処していた。
遠距離からナナミが弓を放ち、矢が避けようとしたモンスターに追尾する。次々と放たれる無数の矢は、彼女たちに迫るモンスター達を穿つ。
ハルは巨大な斧を振り回して、自分達に襲い掛かってくるモンスター達を一刀両断した。
斧が弧を描くように振り上げられ、次いで繰り出される振り下ろしは衝撃波が具現化されモンスターへ襲いかかる。
どうやら数体であれば自分達でもどうにかなると考え、倒していたようだ。
(そろそろ爆弾の使用は控えましょうか)
爆弾は強く使い勝手が良い反面、使いすぎにより数が極端に減っていた。
元々、残りが少なかったことも原因だろう。
さらっとストレージの中を確認した後、彼は2人の元へと向かった。
そして、声をかける。
「お二人とも大丈夫ですか?」
数多くいたモンスター達を全て倒し終え、ハルとナナミは一息ついているようだ。
「ええ、大丈夫です。本当に助かりました。ありがとうございます、コーディーさん」
ナナミがハルより早くコーディーにお礼を言い、ハルの方はと言うと身だしなみを気にしている様子だ。
そして小さくよしっ、と呟くとハルもコーディーにお礼を述べる。
「本当に助かったよ、コーディー! 何か王子様みたいだった!」
コーディーの見た目だけは、本当に格好いいキャラクターである。
彼のことを知っている第三者がこの場にいれば、騙されていることに何故気が付かないのかと、哀れな表情を向けているかもしれない。
「助けに来てくれたのがコーディーさんだと気がついた時、ハルったらすごく燥いじゃって」
ナナミが苦笑を浮かべながら言う。それを聞いたハルが言わないでよ、とナナミをポカポカと軽く叩き、恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
それを見たNPC達は優しそうな顔をしている。
ハルとナナミは戦いの最中、助けに入ってくれたのがコーディーだと直ぐに気がついた。
安定の白髪白衣なので分かりやすかったのだろう。
「お二人がご無事で本当に良かったです」
コーディーは歯が浮きそうになるセリフを躊躇いもなく口にした。
ゲームなので死ぬことはないのだが、実はそういう事で言っているわけではなく、翻訳するとこうなる。
貴重な情報源である二人が死に戻りしなくて、本当に良かった。二人は顔も広いし、これで良い情報がもらえる。
打算的な彼は利益があったので、積極的に2人を助けたに過ぎない。
彼女らは生産職であり、有名なプレイヤーであるフレアと共にいた事から、良い情報が入る確率は高いだろう。
鉱山で初めてあった時はフレアの事を知らなかったが、かなり有名なプレイヤーなので自然と情報は入ってきたのだ。
そして有名プレイヤーであると知った後、そのフレアと共にいるハルとナナミが細工師と料理人の道でこれまた有名プレイヤーであると知った。
彼にとって森フィールドで彼女らを助け、仲良く成れた事は幸運だっただろう。
コーディーは彼女らと話し情報を引き出しがてら、この後のことを相談した。
結果、NPCを安全な場所まで移動させる間、3人は共に行動をすることになった。
生産職である2人でNPCを、多くのモンスターから守るのは流石に難しかったようだ。
そしてその話の中から、現在フレアが単独でボスモンスターの元へ向かっていると知った。
どうやら、ボスモンスターは北門の直ぐ近くに居るようだ。
生産職であるハルとナナミはボスモンスターを相手にはできなさそうなので、別行動をしているらしい。
本来であれば他にもメンバーが居るのだが、今日は運悪くログインしていなかったようである。
「どこに向かいましょうか?」
NPC達を助けたは良いが、特に何も決めていなかったようだ。
これからどこに向かえばいいか考えているナナミに、コーディーは前に聞いた避難場所を教えた。
「避難場所として冒険者ギルドか宿泊施設、教会などの大きな建物へ集まると前に聞いたので、ここから近い教会に連れていきましょう」
プレイヤー同士、ある程度中の良さを保って置かなければいけないと考えたコーディーは、自分が前衛と誘導を務めると言ってNPC達にも軽く挨拶をする。
そうしてコーディーが全員を守る形で教会へと向かった。
教会はここからかなり近くにある。
だが、おかしな事に周りにはプレイヤーが全く存在していない。
それらを全く疑問に思わず、彼らは教会へと進んでいった。




