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第16話 アトリエと初錬成

 冒険者ギルドの2階にあるプレイヤーだけが立ち入り可能な円形のギルドホール、そこ存在する錬金術師ギルドにコーディーは居た。

 ホールの壁際に職業の数、ギルドが存在する。戦闘職の職種は、戦士・剣士・拳闘士・狩人・盗賊・槍使いなどという一般的なものから、戦闘職ではないが支援職もそこに括られており、魔法使いや僧侶、魔物使いに召喚士がある。


 戦闘職のギルドが存在する場所の反対側には生産職のギルドがあり、生産職の職種は、鍛冶師・細工師・料理人・錬金術師・農業士などが存在する。

 だが、プレイヤーの間では【ミリアド・ワールド・オンライン】にまだまだ職業があるのではないのかと噂されており、様々な検証が行われている。

 コーディーは錬金術師を極めると決めているので、いくら強くとも他の職業に変える気はないので、新たな職業にはあまり興味を持っていない。


 ギルドホールから爆発するモンスターやら雨を降らせるモンスターが居るという話が盛り上がっているのを、耳にしつつコーディーは錬金術師ギルドでクエストの報告をした。

 すると受付の男が抑揚のない声で言葉を話す。


「特殊クエスト『劣化版賢者の石を作成』の納品アイテム、ユニコーンの血液を取得している事が確認されました」


 その言葉の後、コーディーの視界が瞬時に切り替わった。

 どうやら転移したそうだ。それを理解したコーディーは少し驚くも、然程気にならなかったようで、辺りを見回す。


(これは、錬金釜……)


 転移した場所は出入り口のない密室で、8畳くらいの広さがあった。

 錬金釜は部屋の中央に置かれており、コーディーの目の前ある釜には何やら液体が入っているのが窺える。

 コーディーの隣に立っている、一緒に転移してきた受付の男が口を開いた。


「ここアトリエで、今から錬成の指南を行いたいと思います。作成するのは、コーディー様から納品頂いたユニコーンの血液を使用した"劣化版賢者の石"です」


 一呼吸置いて受付の男は言葉を続ける。


「本来ですと錬成には時間がかかるのですが、今回は特殊なアイテムを使用して時間を短縮させていただきます。準備はよろしいでしょうか?」


 いきなり始まった錬成の指南だが、コーディーはこうなる事をある程度予測できていた。

 クエスト選択時に、クエスト名に反して納品物がユニコーンの血液のみという事に少々疑問を感じており、クエストクリア後に何らかの方法を用いて錬成に関しての教えがあるだろうと思っていたのだ。

 しかし、いきなり転移で尚且つ心構えもなしに早速、錬成の指導が開始されるとは思わなかったが。


 だが、出来るのなら早速受けようと小さく息を吐き、改めて気合を入れた。

 そして、隣に立つ男に準備ができた事を伝える。すると、彼はウィンドウを操作した後、手に持っているビンのフタを開け、中の液体を錬金釜に投入し始めた。


「錬金釜を使用する前に作成する物のジャンルを選択し、その後このように錬金釜へ素材となるアイテムを入れます」


 コーディーはその説明を聞きながら、錬金釜に最初から入っていた液体に疑問を覚えたがゲーム的な何かだろうと結論を出し、気にしない事にした。

 受付の男は錬金釜を近くに置いてあった棒でかき混ぜ始める。

 中の液体は不透明ではあるが、ユニコーンの血液が混ざっていても赤くはなっていない。


「劣化版賢者の石はこのまま数時間ほど経つと完成するのですが、先程も申したように、特殊なアイテムを用いて時間を短縮させます」


 そう言って彼は小瓶を手に出現させると、中の透明な液体を錬金釜に投入した。

 そして少しかき混ぜた後、それは完成した。

 錬金釜から出てきたのは真っ赤な色をした淡い光を帯びている宝石。


 コーディーは《鑑定眼》を行使してアイテムを見ると、"劣化版賢者の石"とあった。

 スキルを使用したいと思うだけで《鑑定眼》も使用できるのだが、最早慣れたものである。


 劣化版賢者の石は然程大きくなく、片手で握れば見えなくなる程度の赤い宝石。

 中心部には濁りなのか分からないが、1センチ程度の黒い球体が存在しているのをコーディーは確認する。

 見た感じでは簡単に作成していたのだが、実際に錬成してみるとどう感じるのだろうか。

 コーディーの胸中には早く錬成をしてみたいという思いが占めていた。


 次の瞬間、唐突に彼の視界は切り替わり、錬金術師ギルドの前に居る事を認識した後、転移したのだと理解した。

 何の説明もなくいきなりだなと思ったが、口にはしない。早くしてくれた方が彼としても助かるのだから。


「流れは理解して頂けたでしょうか?」


 眼の前に居る受付の男の言葉に、コーディーは理解したと返す。

 そして、男からアイテムを壌土された。そのアイテムは先程の劣化版賢者の石だ。


「そのアイテムは記念の品としてお渡しします。以上で錬成の指南は終了いたしました。何かご質問等はございますでしょうか?」


「そうですね。アトリエを購入したいのですが、ここで買えるのですよね?」


 予めアトリエについてある程度調べていたコーディーは、ギルドでアトリエを購入できる事を知っていた。

 受付の男に問うた後、肯定の意が返され、目の前にウィンドウが表示される。

 現在の所持金と比べ、余裕とは言えないが購入可能な値段だったので、ウィンドウを操作するとコーディーはアトリエを購入した。


「アトリエのご購入ありがとうございます。アトリエの場所はマップに印を付けておきました。ご確認お願い致します」


 受付の男にそう言われ、コーディーはメニューを操作しマップを表示された。

 すると、冒険者ギルドから少し歩いた所にアトリエの文字が記されている。

 お礼を言った後、アトリエについての簡単な説明を受け、コーディーは冒険者ギルドを出て、アトリエへと足早で向かった。




「少し怪しい雰囲気を感じますね……」


 とは、アトリエの外観を見たコーディーの言葉だ。

 黒色で塗られた建物は見る者に圧迫感を与える。アトリエは購入者の自由にカスタマイズが可能だが、この見た目はまだ何も弄っていない状態だ。

 まるで、コーディーの心の中を、目の前のアトリエに映し出している様にも見える。


 アトリエの存在するこの場所は、ある一定のエリアから視界が切り替わる。

 まるで転移の様だと感想を抱くだろう。実際その通りであり、ここはアトリエやホームを購入したプレイヤーだけの隔離空間の様な場所になっているのだ。

 この空間に他のプレイヤーが入るには、持ち主の許可が必要で、このコーディーだけの空間の場合コーディーに許可を出された者だけが訪れる事が出来る。


「入ってみましょう」


 ずっと外に居ても意味が無いのでコーディーはドアを開けて早速、建物内へ入った。

 バタンとドアを閉めてアトリエ内を見回す。コーディーは感嘆の息を漏らしながら、視線をあっちにこっちにと忙しなく動かした。

 犬であれば尻尾が左右にブンブンと振られている事だろう。


 今はあまり物が少なく広さもあまりない。が、錬成の指南を受けている時に居た部屋と、また印象は別である。

 このアトリエ内全てが自分の物だという優越感が心地良い。そんな感想を抱き、8畳ほどの部屋を彷徨うろつく。

 棚には何も置かれておらず、錬金釜を置くスペースの近くにある机にだって何もない。


 しかし、これから自分の色に染められるという思いは、次々と花が咲くようにコーディーの心へ多くの考えを浮かばせた。

 この場所にはあれを置こう、これを置こう、こうしようと脳内にぐるぐると考えが巡る。

 そして少しした後、ようやく落ち着いたコーディーは今まで溜め込んだ思いを爆発させるように、錬金釜をストレージから出して設置すると錬成を始めた。


 今までずっとストレージに入っていた錬金釜が解放されたのだ。

 コーディーは少し感動を覚えた。


 ウィンドウを操作して『アイテム』というジャンルを選択。他にも武器や防具、装飾品などがあったが次々と試すので問題はない。


「フッフッフッ……」


 不気味な笑いを浮かべ、初の《錬成》を飾るアイテムを作る為、素材を厳選し投入する。

 レシピはまだ存在していないようで、完全にDEX頼りの生産だ。

 だが、不思議とコーディーは失敗するという感じがしなかった。


 本能の思うがままに素材を投入していき、壁に立て掛けてあった鉄の棒で錬金釜をかき混ぜる。

 淡い光と帯びて中の液体が輝き、かき混ぜる事を数十分。


 錬成はものの見事に失敗した。


「……さて、真面目にやりましょうか」


 大量に投入したモンスターの素材や血液、鉱石などはロストした。

 これがコーディーの初錬成を飾る事となったのは、彼のとって黒歴史となるだろう。

 テンションがおかしいままで錬成をしてはいけないという教訓を、コーディーは決して忘れる事はない。

 改めて錬成を開始した。

隔離空間には農場やらモンスター牧場やらが存在しいたりします。

プレイヤーにより千差万別。

オープン設定にすると、誰でも入る事が出来ますし詳細な設定で土地に入れても建物内へ進入不可にする事で、建物の自慢ができます。

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