鮮やかな血の記録をクリームティーと共に
初投稿作品です。
語彙の足りないところもあるかと思いますが、少しでも読んで頂ければ幸いです。
また、この作品には残虐な表現が含まれています。それでも大丈夫という方のみ閲覧下さい。
「お嬢様、お目覚めの時間で御座います」
揺れるカーテンの隙間から心地良い風が少女の頬を撫でる。まだ眠たそうに、重い瞼を開けた少女はふぁ、っと大きな欠伸をした。
「本日はカモミールティーを御用意致しました。シンプルにハーブティーも良いかと思ったのですが、朝にはこちらの方が気に入って頂けるかと」
漆黒の髪に雪の様な白い肌。そして血に染まったかの様な赤い、赤い瞳。少し不機嫌そうな双眼は執事の姿を捉えるとティーカップを手に取った。
少女の大きな部屋にはもう既に、紅茶の優雅な香りが漂っている。
「本日は如何なさいますか?」
「……今日は少し庭を散歩したい気分ね」
「然様で御座いますか。天気も良いので丁度いいかもしれませんね」
「えぇ」
ベッドから細く白い脚が姿を現す。その脚でクローゼットへ向かうと中からロイヤルブルーのシンプルなドレスを取り出した。
執事はすっと背を向ける。後ろから微かに聞こえる絹が擦れる音。静かな二人だけの空間を、窓の外から覗く太陽の光だけが優しく見守っていた。
ドレスを纏った姿は、まるで西洋人形の様に美しい。繊細な白い肌にロイヤルブルーの上品な色はとてもよく似合っていた。
着替えを済ませた少女は大きな机の引き出しから大事そうに何かを取り出す。
「それは……?」
「大事なものよ。……いつかは貴方にも見せてあげるわ」
不思議そうにソレを見つめる執事はその言葉を聞いてから微笑んだ。
「嬉しいです」
身支度を終え、散歩の準備は整った。
執事は玄関ホールの大きな扉を開ける。
「行ってらっしゃいませ」
数分歩くと、花が美しく咲き誇る広大の庭が見える。しかし、そこには薔薇しか存在しない。血に染まったかの様な真っ赤な薔薇。それは少女が望んでそうしたのだ。
真紅の色に囲まれながら、少女は庭に置かれた椅子に腰掛けた。そしてやっと抱えていたものを見つめる。それは所々破け、古びた一冊の日記帳だった。
それでも大事そうにそっと開くと、懐かしげに、しかし何処か悲しげに分厚い本を読み始めた。
これは、ずっとずっと昔のお伽噺。