09. Bad Jobs
宴は終わり、訪問者達をそれぞれの世界へと戻す時間となった。
何があったのか、なかったのか、詳しく語るのは止めにしておこう。
取り合えず楽しかった。言えることはそれだけだ。
そうそう、タニヤが写真を一枚置いていった。
セクシーな彼女の姿は魅惑的。飽浦式治療法に使えそうだ。患者達の悩みを聞くのに疲れたら見ることにしよう。
僕とシナガワは訪問者達の舌先に、闇の滴と無の滴を垂らした。そして、別れを告げることにする。
闇の心臓から送られる、闇の滴。
無の心臓から送られる、無の滴。
三位の一つである天使。無名の天使に贖罪の滴をもって奇跡を祈れば、彼女は必ず応えてくれる。
愛佳と悠馬は彼女達の世界、イル・モンド・ディ・ニエンテに戻り、
ヘクターとダリアは彼らの世界、ヨルドモ王国へ戻り、
そして、ティアラ、マティウス、タニヤ、アレクはアウラヴィスタ国に戻った。
閑散とした部屋には僕とシナガワだけになった。
僕はシナガワに話かけた。
「結局、髭セレブと白髪博士はどうなったの? 後で教えてくれるって言ったよね?」
僕の質問に彼は淡々とした口調で答えた。
「法による裁きなど期待できないからな。セレブと白髪博士の取引情報と個人情報をアンダーグラウンドに撒いた。それをネタに強請られ続けるだろう」
「そうか。シナガワが電話をしていたのはハッカーだったね」
「誰が何をしようと俺の知ったことではない。だが、俺に噛み付くのであれば躾が必要だ。躾はわかりやすい態度で。お前が見ていたブログにも書いてあったろう?」
シナガワが僕の部屋の玄関を開けた。帰る時間が来たらしい。僕は笑って見送ることにする。
「告発者って、損な役回りだったんだね」
「この世界で大事なのは、貼付けられたラベルであって事実ではない。それがわかるまで随分と時間がかかったよ」
彼は薄く笑って去って行った。
「元気でね、シナガワ」
「ああ、お前もな、飽浦」
シナガワはシナガワの世界に帰っていった。
さあ、僕は僕の世界に戻らなくては。
部屋の電気を落とすと、暗闇が僕の部屋に押し寄せてきた。
窓の外にある賑わいも暗闇にまで届きはしない。
闇は闇にあるべきだ。
僕は僕の世界に戻る事にする。
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【Supplement】
物語中での設定や背景の説明。
【タニヤちゃんのセクシーショット】
福山陽士さんから頂いたタニヤちゃんのセクシーショットです!
ありがとうございます!
福山陽士さんのページはこちらですっ!
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【Satan】
初めてSatanという言葉が出てきたのは、旧約聖書内のヨブ記。
旧約聖書として統合される、それまでの宗教文章に善悪二元論的な観念はなく、
この時期辺りにペルシャのゾロアスター教の影響を受け、
Satanというキャラクターが登場したとする向きもある。(諸説色々あり)
旧約聖書内にあるヨブ記で登場したSatanは
ヘブライ語でha-Satanと記載されており、意味は「告発者」という意味になる。
ヨブ記においてSatanは神と親しく話をする間柄で、
天上の会議においては、天使達と同じ席につき、地上を巡回していたと語っている。
そこでは神から人間ヨブは信心深いと聞かされるが、
Satanはヨブの信心深さを計る為に、試練を与えるように神を唆す。
旧約聖書にあるゼカリア書においても、Satanは告発者という立場で、
罪を神に訴えるという役割を担っている。
ただ、ヘブライ語のSatanは「敵対者」という意味もある。
これが他国語へ翻訳される過程で「告発者」という意味が失われてゆく。
ギリシャ語に翻訳された際には、敵対者(diabolos:devilの語源)という
単語があてられ、神の敵対者という色彩が強められてゆくことになる。
時代が下るにつれSatanの言葉の解釈は更に変わってゆく。
旧約聖書創世記3章:1-15節にイブに知恵の実を食べるように唆すヘビが、
サタンとされているが、それも後付けの解釈によるものである。
ミルトンの『失楽園』では、Satanは悪魔の首長となり、
それは現在のSatan像にも受け継がれている。
ミルトンの『失楽園』は英語にするとParadase Lost。
本来、告発者であったはずのSatanは楽園を追放された。
ヨブ記の解釈についてのURL
(書いた人は聖書学を学んでおり、神学的素養も相当にあるが、
一つの視点の考察である)
http://www.geocities.jp/todo_1091/bible/jesus/047.htm
【おまけ:今回の登場人達がセッションするとこんな感じ:カッコ内はソロ演奏】
Bass:シナガワ (0:00 - 0:11)
Drums:飽浦
Baritone sax:悠馬(0:12 - 0:27)
Trumpet:タニヤ(1:02 - 1:15)
Tenor sax:ヘクター(1:16 - 2:05)
Alto sax:愛佳(2:08 - 2:54)
Trumpet:アレク(2:56 - 3:40)
Trombone:ティアラ
Tuba:マティウス
Piano:ダリア
http://www.youtube.com/watch?v=w5swOSTab3Y