喪女とドラゴンと父親
毎度お馴染みの括弧の役割
「」……人が話している時
『』……トゥーリが話している時
〈〉……トゥっちょがおもちゃを使って話している時
[]……ネット画面の文字
『ちゅ、ちゅ、ちゅー!』
トゥっちょは、帰ってからのブログ作りと更新を楽しみにしてるのか鼻歌を歌ってるのね
私は、面倒なんですけどね!
「ただいま戻ったわ。サリン?」
「はい!おかえりなさいませ、お嬢様」
「お帰り」
と久々に懐かしい声が聞こえた
「お、お義父様……えぇ、ただいま戻りました」
同時に私はトゥっちょを隠した
お義父様に言えないわ、トゥっちょをトゥーリを
「元気そうにしてるね」
とお義父様は優しくお声を掛ける
「えぇ、あれからは特にパニックになる事もなく無事に過ごしています。あの時は申し訳ありませんでした」
『ちゅ?ちゅ?』
ちょ、トゥっちょ!
私は急いでトゥっちょの口を塞いだ
「今、ネズミの声が聞こえた気が……」
「気の所為ですわ、お義父様」
「そうかい?」
「えぇ、そうですよ。あの私は荷物置いて着替えて着ますので…」
「分かったよ、気をつけて」
「は、はい」
こうして、私は急いでトゥっちょを運んで自分の部屋へ戻った
〈相棒、なんでさっきは俺を隠すような事したんだよ?〉
「お義父様にはバレてはいけないのよ」
〈何だよ、相棒のおとうさんはドラゴンハンターなのか?〉
ドラゴンハンターとは、その名の通りドラゴンを密猟して高い値で売る仕事のことよ
お義父様はそんな野暮な事はしないわよ
「違うわ」
〈じゃあ、何で俺を隠すんだよ!〉
「トゥっちょには関係ないわ!これは私自身の問題ですので!」
〈そうやって、自分だけで抱え込もうとするのか?〉
「そうよ!悪い!?」
〈悪いに決まってるんだろう!俺らパートナーじゃねぇの?なぁ!?〉
「いつからあなたと私がパートナーですって?冗談じゃないわ!仮にそうだとしても土足で踏み込もうとするならパートナーでも何でもないわ!」
〈土足で踏み込もうしねぇと相棒何にも教えてくれねぇじゃねぇか!〉
「そんなことないわ!ちゃんと私は貴方に色々と教えてるつもりよ!」
〈物事のいろはを教えても相棒の事は何一つ教えてもらってねぇよ!〉
「物事のいろはで充分じゃない!?何でプライベートまで教えなきゃいけないの?もう、知らない!」
〈おい、待てよ、相棒!〉
バタンっ!
もう、知らない
あんなドラゴンなんてとっとと捨ててしまえばよかったのよ!
土足で踏み込もうとするドラゴンなんて……
あのドラゴンときっと同じ
期待させて裏切るんだから
だから私はもう知らないわ
「大丈夫かい?随分、騒がしかったけど…」
とお義父様は心配そうに言う
「ご心配お掛けしてごめんなさい。もう大丈夫です」
「ならいいけど……隠し事してないか?」
「そんな事ありませんよ。私は、隠し事するような事ありません」
「本当にかな?」
「えぇ、大丈夫です。ところでお義父様あの時私が契約を交わしに行った生産系の会社との契約は…?」
「断ったよ」
「断った…とは?」
「大切な娘が散々酷い目にあったのに契約を結べる訳が無いよ。違う生産系の会社と契約してそっちにしたから」
「そうなんですか……」
自分が不甲斐ないばかりにお義父様にとんでもない御迷惑を……
「お義父様、本当に申し訳ありませんでした。自分が社会を舐めてたばかりにこのような事になってしまい…」
「いや、社会を舐めてたどうこうより相手側がえげつないのがいけないし、それを判断出来なかったお義父さんがいけない。ごめんな、本当に」
「いいえ、お義父様のおかげでここまで成長し、たくさんの重大なプロジェクトに参加出来たのですからそれ以上の我が儘を言ってはいけませんよ」
「昔から堅いなぁ。もっと、甘えてもいいんだぞ?
」
「とんでもないです。私が…。それにお義父様がこちらに帰って来たと言う事はそろそろまた出勤した方がよろしいのですね?」
「悪いな…。今、ちょっと会社が株取られるか取られないかの境目なんだ」
「分かりました。では、今からちょっとした会議を開いてなんとかしていきましょ」
この会議は、夜中の2時まで続いた
会議を通して思ったのは、私は仕事は好きであるという事や、あんなにパニックになった私なのに皆様が温かく接して会議に参加して下さった有り難さ、また会社へ戻ってもいいと言う声掛けで随分安堵したわ
お風呂入って寝ましょう
『ちゅー、ちゅー』
(あんな怖がる相棒初めて見たぜ。よっぽど嫌な過去なのか?俺もそんな過去あるけど、相棒になら話せるのに… 相棒は俺をまだ信頼してねぇのか?)
『ちゅー…』
「あっ、やっぱりネズミがいるじゃないか!」
『ちゅ?』
(相棒のおとうさんだよな…とりあえず逃げるか…)
「逃がさないよ、ネズミくん」
『ちゅー!ちゅー!』
「大丈夫、殺したりしないから」
(この人こぇぇぇぇぇ!)
「とりあえず、これ使える?」
(相棒が俺に渡してくれた奴と同じだ!使えるけどよ…相棒が俺の事隠したいんだよな…使えないフリをして…いいや。相棒のこと知るためならちゃんと話さなきゃな…よしっ!)
〈えっと、相棒…T・Tちゃんのおとうさんですか?〉
「うん、そうだよ。君はネズミなのにものすごく賢いね」
〈俺、いや、私はドラゴンです。名前はトゥーリと申します〉
(敬語ちゃんと使えてるかな?)
「そこまで堅くならなくてもいいよ!気楽にいこう!」
〈は、はぁ……では崩して話していきます〉
「で、トゥーリくんはなんでうちにいるのかな?」
〈相棒に拾われたんだ。行くあてもない俺を。とても感謝してる〉
「そっか……あの子ドラゴン嫌いなのにね」
〈そうなのか?〉
(でも、オレの事本当の姿を見た時は怯えてた、と言うより最早悲鳴をあげてたな……)
「あぁ、僕の所へ来る前にね。何があったのかは分からないけど…」
〈相棒は、おとうさんにも自分のプライベートのこと話してねぇの?つーか、僕の所へ来る前って?〉
「あの子は、養子なんだ。僕の寂しさを紛らわすための子なんだ。だけど、今じゃいなくなられては困る人だな…仕事できるし。まぁ、僕の子だから当然だけど。うーん、ちょこちょこ話してくれたよ。ただ、ドラゴン嫌いな理由は聞いてないな……言いたくないのだろうね。まぁ、無理に聞く必要はないと僕は思うよ」
〈はぁ……相棒ってそうだったんだ…〉
「驚いた?」
〈あぁ、すげぇ驚いた。でも、相棒は色々と出来るから本当にすげぇよ〉
「うん、本当にそうだね。僕もそこには驚くよ」
〈それでさ、そんな相棒なのに仕事で何かやらかしたのか?〉
「あー、あの時の事かな?あれはあの子が悪いわけじゃないんだ。実はね、去年の夏にとある生産系の会社と契約しようとあの子が出向いたんだけどね、その会社でいわゆるセクハラを受けてパニックを起こしてね。たまたま同行してた人が治めてくれたから大した事にはならなかったけど…。しばらくパニック状態だったから仕事を休ませてたんだ」
〈そうなんだ…〉
(だから、相棒あんなに男の人嫌いなのか…人間版の俺とか)
「でも、今僕はトゥーリくんがドラゴンくんがあの子の下にいることだなー。どうやって出会ったかが気になるよ」
〈それは…〉
「私、とあるサイトを開いてて、そのパートナーとしてトゥーリを選んだの。若干トゥーリがストーカー気味だったのもありますけど」
「サイト?いつの間に…」
とお義父様は驚いた顔で言った
「えぇ、自分のパニック障害を治すために。でも、それ以上に自分の過去を克服できてるはず…だと思ってます。トゥーリのおかげで」
〈あ、相棒……!〉
「そうなんだ…僕が見ないところで自力でなんとかしようとしてたなんて知らなかった…」
「自分への戒めです」
〈って言ってもいい事してるじゃねぇか。人の恋路を応援してさ〉
「ちょ、トゥっちょ、それは言わないでよ!」
「へぇ…誰かを応援したいその気持ちは変わらないんだね。お義父さん安心した」
「……ありがとうございます」
〈相棒、照れるなって!〉
「照れてないわよ!」
「仲がいいな、2人とも」
〈だろ?だって、相棒だもんな!〉
「だから、相棒じゃないわ!何回言えばわかるの?」
〈でも、さっきパートナーって!〉
「パートナーと相棒はまた違うのよ!」
〈分からねぇよ!〉
「いつか教えるわ!」
〈相棒…俺ずっと相棒のそばにいるからな!〉
「いなくても良くってよ!」
「本当に仲がいいな…お義父さん嫉妬ぉ」
「べ、別に仲はよくありませんわ」
〈いいや、俺の中では1番か2番だな〉
「そこまで上に行かなくても…」
「まぁ、そんな2人にお願いがあるんだ」
「〈お願い?〉」
「実はね、もうすぐ亡くなった奥さんの命日なんだ。毎年ね、奥さんのお気に入りの花をあげてるんだけど今年は特別に違う花にしようかなって。何がいいかな?」
とお義父様はこれでもかと言うぐらいの照れ顔で言った
いい歳なのにここまで照れ顔が似合うおじ様いないわよ…
〈好きなのでいいと思う!〉
考えなしで言うか、そこを
まぁ、トゥーリらしい発言ですけどね
「毎年、確かユリの花を差し上げてましたよね?」
「そうだね、奥さんの好きな宇宙飛行士さんの名前とかけてあげてたけど…」
〈じゃあ、宇宙飛行士や宇宙にかけた名前にしようぜ!例えば、コスモスとか!〉
……トゥーリはオヤジギャグがたいそうお得意なようで
「トゥーリくん、面白いこと言うね!なんで僕は考えられなかったんだろう?これでも奥さんの事は1番理解してるつもりだったのに!ありがとう!」
〈いや、それほどでもないぜ!〉
「あはは…」
お義父様は、意外と頭が固い方だったのね
いや、でもこの宇宙飛行士が好き、と言われればその事を考えるのは間違いないわ
でも、その方に関連する事なら…いや
世の中にはこの人好きってなるとその人しか見ない人だっているわよね
「そういえば、お義父様は本日こちらに泊まりますの?」
「そうだよ!今日はトゥーリくんとサリンと僕と4人で焼肉しようかなって。肉も揃えたよ!」
〈肉っ!!食べたい!〉
「貴方に食べる肉はありませんよ、トゥーリ!」
〈ケッチィこというなよ!〉
(ブログに書くこと一杯だな)
仕事の事はひとまず置いておいて私とトゥーリとお義父様とサリンで焼肉を堪能した
長々しくなりましたがいかがでしょうか?
いや、なげぇよ!本当にいつもいつも読んでくださる皆様には感謝です!
今回は、T・Tちゃんのお義父さんが登場!どうなる?
本当は修羅場修羅場したかったんですけどね!そういうの苦手なんであっさりしました(笑)
次は3回に1回の番外編!
勿論、主役はお義父さんです(`・ω・´)
傲慢かもしれないが、気長に待って欲しいと思わずにはいられなかった!
では( ̄^ ̄)ゞ
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詳しい内容やリクエスト方法が載ってますので、よろしければそちらの方も見てください。