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緑の世界 -1

~緑の世界~


その世界もまた不思議だった。芝生の上なのだろうか。緑の地面。そして、たまに何かのアトラクションとかで見る迷路のように緑の木々で細く道が区切られていた。

ただ、違うのはその高さ。どこまでも高くそびえている。向こう側を覗こうにもこれじゃ見えてくれない。そして、木々に手を伸ばしてみると棘がいっぱいあって向こう側にはいけそうにもない。

私は自分が立っているところを見ていた。

前と後ろに道が伸びている。前はT字になっていて、後ろは十字路になっている。闇雲に歩くと迷子になりそう。私はそう思った。

自分の歩く方向を良く見てから進まないと迷子になってしまうかも。

私は前に歩いて右に曲がった。曲がった少し先に人がいるのがわかった。

背の高い女性。すらっとした手足はモデルのような感じ。髪はパーマがかかっていて一つに束ねてあった。背の高い彼女は地面にカードを並べていた。

タロットカードだ。

背の高い彼女はカードをまとめて鞄にしまい、私のほうを向いて話して来た。


「この世界では始めましてかな。『アリス』

 私はイズミール。

 私はずっとあなたを、『アリス』を待っていたの。だってあなたの出現は占いで出ていたから。そう『アリス』は私にとって『運命の輪』の正位置のカードですから」


私は彼女の、イズミールの話を聞きながらタロットカードの意味を思い出していた。

そういえば昔アニメの影響で少しだけ意味を覚えた記憶がある。


『運命の輪』の正位置。


確かいい意味だったと思う。でも、ちゃんと思い出せない。イズミールが話を続けてきた。


「いきなりゴメンなさいね。私はどうしても運命を占ってしまうの。

 だって、これから起こる出来事が不安だから。だから知りたくなるの。

 次に出逢う人の流れに私の沿っていく。その運命が見えたの」


私はなんとも言えなくなった。

私だって占いに頼っていた時だってある。いや、何かに頼りたいって思っていた時だってある。けれど、やはり歩き出すのは、選ぶのは、最後は自分だから。その勇気がカードなのかも知れない。イズミールが続けて話して来た。


「でも、占いに頼ってばかりもいられない。けれどあたってしまうから。

 だから頼ってしまう」


私は一瞬びっくりした。そんなに当たる占いなのだろうか。私はよせばいいのに聞いてみた。


「それって相性占いとかも出来る?」


そう、私は気になっているハオとの未来を知りたくなった。イズミールは頷いた。

私ははやる気持ちを抑えられずに聞いた。


「ハオと私の相性を占って欲しいの」


その瞬間イズミールの表情が曇った。そして、話して来た。


「ハオ様との未来は知らない方がいいわ。それに調べたとしても出るカードは解っているの。このカードのはずよ」


そう言ってイズミールは鞄の中に手をいれ、中も確認せずに出してきた。そのカードはタワーの逆位置だった。私の記憶ではタワーは正位置でも逆位置でもいい意味はなかったはず。けれど、まだ逆位置。私は恐る恐る聞いた。


「これって、どういう意味だっけ?」


イズミールは答えてくれた。でも、それは私が望んでいるものではなかったけれど。

イズミールの答えはこういうものだった。


「タワーのカード。

 これはもともと人の傲慢から始まったの。

 このカードの絵にあるタワーの元は旧約聖書のバベルの塔なの。

 人はその傲慢から天にも届きそうな塔を建てたの。

 中には自分がスーパーマンと勘違いして空を飛べると思ったものがいたり、王と同等の力を持っていると過信して王冠を身に着けたりしていたの。

 そんな傲慢な人を神は許さなかった。罰をあたえたの。

 雷を落として、天変地異を起こしたの。

 堕落していることにも気がつけず王冠を身に着けたまままっさかさまに落ちたり、飛べると勘違いをした人はただ地に落ちていくだけ。

 分不相応なものを求めた結果。

 これがこのタワーのカードの意味よ。カードには意味だけじゃなく物語としての意味もあるの。単なる正位置の意味はこうだとか、逆位置の意味はこうだからということだけで見ていたら本当に伝えたいものを拾いそびれてしまうから」


イズミールがそう言ってきた。私ははじめて知った。タロットカードにはカードそのものに意味が、そして物語があるということを。ハオを思うことは私にとって背伸びをしていることなのだろうか?

解らない。

けれど、やはりもう一度会いたいって思ってしまう。それにどうしてみなハオをハオ様と呼ぶのだろう。私はイズミールに聞いてみた。


「ちなみに、どうしてハオを『ハオ様』って呼ぶの?」


イズミールは話してくれた。


「ハオ様だけは特別なの。

 ハオ様はこの世界の、鏡に閉ざされた世界から抜け出せる唯一の人なの。

 でも、それはハオ様がこの鏡の世界に本当の意味でいるから。

 私も『アリス』も本当はこの世界の住人じゃないでしょう」


私は解らなかった。

鏡の中にしかいない人。確かに私がこの世界に来た時、ハオは鏡の中にしかいなかった。

私は、それはこの世界の人がみなそうだと思っていた。鏡の中にしかいないハオ。

どういう意味なのだろう。

私は考えていた。イズミールが話して来た。


「ねえ、『アリス』進まないとこの緑の迷宮からは抜け出せないよ」


イズミールの言葉に私はコクリと頷いた。


イズミールは分かれ道のたびにカードを出して道を決めていた。

どれくらい歩いただろう。1時間以上は歩いたはずだ。イズミールが話してくる。


「もう少ししたら広場にでるからそこで休みましょうか?」


そう言ってイズミールがカードを取り出した。その瞬間イズミールが軽く悲鳴を上げた。

出てきたのは「戦車、チャリオット」の逆位置だ。私はイズミールにカードの意味を聞いた。イズミールは話す。


「戦車のカード。

 白と黒のスフィンクスを従えた鎧を着た若者のカード。

 白のスフィンクスは戦場へ駆り立て、黒のスフィンクスはこのまま逃げたいと訴えてくる。

この2体のスフィンクスは、自分の中の葛藤と同じ。

そして、着ている鎧は仮面と同じなの。自分を表さないようにね。

でも、下半身はすでに戦車と同化している。

もどることなんて出来ないの。逃げたくてももう戦士じゃなく戦車になってしまっているから。

そういう悲しいカードでもあるの。

だから、自分を奮い立たせて突き進むしかない。

弱さを鎧に隠してね。

逆位置は準備をしなさいってこと。つまりこの先に何かがあるということ」


イズミールはそう言ってきた。私は自分の姿を見てみる。腰には剣がささっている。戦わなきゃ。相手がボーン一人だといいな。

私はそう思っていた。

相手がボーン一人なら勝てるかも知れない。いや、同じ能力だから負けるかも知れない。

ハオの言葉が頭に浮かんだ。


「気持ちは強く持っていてください。

 でないと強さは『1』にすらなってくれませんから」


私、強くなるね。そしてハオとの運命を切り開いてみせる。たとえどんなに困難な道でも。


私とイズミールは少し休憩をしてから先に進んだ。そこは少し広くなっている場所だった。そして、そこにいたのはトランプ兵1体と変な杖をもった人がいた。

イズミールがいう。


「ビショップがいるなんて」


私は記憶の中を読み戻していた。ビショップの能力は『3』ナイトと同じ『3』だ。

勝てっこない。

逃げようとした時には後ろにトランプ兵が1体いた。私はイズミールの手を引っ張って広場の中に入った。心の中で叫んでいた。


「助けてハオ」


何度も、何度も。


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