表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

イエローの世界 -2

目の前に赤い無数の剣戟が見える。大きなもの、小さなもの、いっぱいある。土を飛ばして風に乗ってやってくる。世界はスローモーションのようだった。その時、地面から大量の樹が現れた。後ろから声が聞こえる。


「咲き誇れ」


振り返るとそこにいたのはレイだった。切られていく木々をさらに覆うように木々が生長して防いでいく。これなら大丈夫かも。だが、私の手を誰かが引いた。マオだった。

マオが言う。


「テントの中で隠れてろ」


そう言って私は押された。後ろで世界が赤く染まった。どこかで声がする。


「ファイアーストーム」


木々が炎で燃やされる。その奥に見たことない褐色の女性がいた。髪は短く服装はなぜか迷彩服だった。けれど、体にぴったりとした服。なんだか不思議だった。胸の辺りに黒い鎧をつけている。マオが言う。


「赤の女王は配下のフィーネだ。あいつは炎をつかうんだ」


炎に木々が焼かれていく。マオが言う。


「惨劇が始まるんだ。赤の女王が来たんだからな」


私は考えていた。ナイトのハオとマオがいる。だから「3」と「3」で「6」だ。

ビショップのライがいる。だから「3」だ。ルークのグリードとレイがいる。だから「5」と「5」で「10」だ。合計で「19」私を入れて「20」だ。

相手は、

ルークのアレグロのフィーネがいる。だから「5」と「5」だ。そして、赤の女王がいる。だから「9」だ。合計で「19」だ。でも、赤の時間。1.2倍になる。


「22.8」


相手のほうが強い。

たとえ、ノコキがボーンになったとしても「21」で届かない。私は首を振った。勝てないよ。しかも私もノコキもこのテントで守られている。でも、どうしてこのテントは炎に負けないのだろう。その時、気がついた。このテントは私があのマゼンダの世界で守られたみたいに膜が張られている。ライが私のほうを見てウインクしてきてこう言った。


「嬢ちゃんたち、そこから出るんじゃないぞ」


その表情を見て私は不安になった。多分、ここにいる人はみんな私たちを守ることしか考えていない。私はテントの外に出ようとした。だが、私の袖を誰かがひっぱった。白の女王の一部。あの女の子だった。女の子が言う。


「アリスは信用してないのか。誰も死にたくない。それに最後の戦いはまだ先だ。だから、その時に誰かが生き残らないといけない。ハオ以外が」


私は解らなかった。どうしてハオ以外なんだろう。女の子が言う。


「最後まで見ているがいい。私たち力なきものは踏み入れるだけで足手まといになってしまう」


私は目の前で起きている状況を見た。ライがフィーネごと炎を包むように土で覆い隠そうとしている。そして、レイが木々で赤の女王の攻撃を防いでいる。そして、アレグロの風も同じく。その隙をハオとマオが剣で攻撃をしている。その時私は気がついたグリードがいない。私は周りを見渡した。どこかで音がした。すごい音だ。その時、ライが大きな声でこう言った。


「皆、つかまれ!!」


その時、土が盛り上がった。そしてその土を木々が更に押し上げる。


「一体何が?」


その時、私を支えにマオが来てくれた。


「しっかりつかまってろよ」


私はコクリと頷いた。その時、どこからか大量の水がやってきた。


「えげつないな、グリードは」


マオが言う。大量の水で赤の女王もアレグロのフィーネも押し流されていった。空が赤からイエローに戻っていく。赤の女王が遠く離れたことがわかった。白の女王の、あの女の子が私に言う。


「きっとこれは一瞬の安らぎ。アリスは後悔しないように話をするといい。皆と」


そう言って、女の子は気を失った。倒れる前にハオが抱きかかえていた。話をすること。

私はコクリと頷いた。でも、全員と話しをする。周りをみると一番近くにレイが居た。

私はレイの近くに行った。レイが言う。


「どうしました?アリス。

 何か面白い研究対象が見つかりましたか?」


そう言ってレイは手に植物の種を持っていた。レイの能力が一番不思議だった。私は聞いた。


「どういう力なんですか?」


私の言葉にレイが右足首を見せてくれた。右足の変わりにある義足。私はそう思っていた。けれど、それは木の一部だった。そして、上半身を脱いだ。そこには体がすでに木になりかけている状態だった。レイが言う。


「私はこの世界の、鏡の世界の大地と一体化したんだ。

 だからこの様な体になった。けれど、その代わりに木々を使えるようになっている。

 ルーク以上の力も手に出来た。

そして、この体になったからこそ解るんだ。この今居る世界が、いや、チェスの盤いる私たちの場所というのが正しいのかも知れないが、あの世界が造られて誰かに支えられている世界だってね。

 そして、もう一つ。どうしてハオはチェス盤にいないのかということがね」


私は解らなかった。ハオは確かに『ここ』にいる。チェス盤にいないってどういうことなのだろう。私が不思議そうな顔をしていたからか、レイはこう言って来た。


「ハオに聞いて見るといい。といっても、どう聞いていいのか解らないだろうね。

 だから、こう言うといいよ。

『次の世界にハオは来てくれるのか』とね」


私は解らなかった。いつもハオは私の事を守ってくれていた。マゼンダの世界だけだ。

私の所に来てくれなかったのは。私は不思議だった。レイが更に言う。


「私は多分この世界で終わるだろう。そう神託が降りている。

 だが、私には解らない。どうしてそんな事で終わるのかという事が。

 でも、これだけは言っておきたい。何があっても強く生きて欲しい」


そう言ってレイは手を差し出してくれた。私はその手を取って気がついた。すでに人の手という感じではなく、木を触っているような感じになっていた。強くなるために何かを失わないといけないのだろうか。私はレイの顔を見て少しだけ悲しくなった。気がついたらレイの所から立ち去っている自分が居た。


「どうしたんだ」


そこに居たのはグリードだった。私はぐるぐるした中でこう言った。


「強くなるのに何かを失うって必要なのでしょうか?」


一瞬グリードは考えて話し出した。


「強くなりたいって思うのは、守りたい人がいるからだろうな」


グリードは笑いながらそう言ってきた。私は言った。


「グリードさんは誰を守りたいんですか?」


私は言って白の女王だって気がついた。だが、グリードが言ったのは違った。


「俺はあんな姿になったがレイを守ってやりたい。

 レイが力を求めて自分の体を実験したのは俺のせいだからな。そう俺のな」


そう言ってグリードは遠くを見ていた。多分、私には解ることが出来ない何かがこの二人にはあるのかも知れない。グリードがポケットから写真を出してくれた。

そこに写っていたのは、銀色の髪をした目がくりんとした男性と、黒い髪の男性だった。

黒い髪の男性は端正な顔をしていた。グリードはサングラスを取った。


「実はな、そこまで昔は強くなかったんだ。俺もグリードも。まだあの時はボーンだった。

 俺が弱そうだったから標的にされたんだ。その時、レイが庇ってくれた。代償として右足がなくなっちまったがな。

 だから俺は強くならなきゃいけないんだ。アイツの分までな」


私は唖然とした。グリードの目がつぶらで可愛かったからだ。グリードはサングラスをかけてこう言った。


「見た目から強そうに見えなきゃいけないだろう。だから外見から変えたんだ」


私は考えていた。誰かのために強くなりたいって思い。今の私なら解るかも知れない。傷つく誰かを見たくない。いつも一番傷ついているのはハオのような気がする。私は次にライの元に向かった。ライは木陰で空を見ていた。ライが私に気がつく。


「どうしたんだい、嬢ちゃん。おじちゃんと火遊びでもしてみたいとか?」


私は「まさか」って答えた。ライはいつも笑顔のイメージがある。私はライに聞いてみた。


「ねえ、ライはハオ様について何か知ってる?」


自分で聞きながら漠然とした質問をしたって思った。ライは言う。


「嬢ちゃんはマオとハオとどっちが気になってるんだい?」


私はなんだか見透かされた気になった。少し前ならハオって答えていたかも知れない。

でも、マオが気になっているのもわかる。けれど、知りたいんだ。ハオのこと。何か隠されている気がする。私はライに向かってこう言った。


「どっちも気になってる」


その返答にライが笑いながらこう言った。


「いいね~そういうのって。わがままじゃなくて決めかねているところがさ。

 じゃあ、これだけは言っておいてあげようかな。

 人はいつ死ぬか。それは忘れ去られた時さ。俺はラキシスを忘れない。

 きっとアリスだって同じだろう。誰かの記憶に居る限りラキシスは生きているんだ。

 それと同じことさ。いつかこの意味が解る時がくるだろう。

 いや、その時は意外と早いかも知れないけれどな」


そう言ってライはまた空を見上げている。雲の形が人の形に見えて来た。ああ、ライは今ラキシスを感じているんだろうな。私はひっそりとその場を離れた。


ゆっくり歩いているとマオにぶつかった。


「おい、気をつけろよな」


マオは私の額をつんってつついてきた。私はマオに向かってこう言った。


「マオは死なないよね」


マオは私を見てこう言って来た。


「なんだよ、急にそんなこと言ってきやがって。

 俺がやられるほどへましそうか?」


マオはそう言ってきた。だが、私が何も言わなかったからマオは更にこう言って来た。


「その、なんだ、黙ってんじゃなくてな。

 心配してくれるんは嬉しいんだけれど、その、な」


なんだか歯切れの悪いマオを見て笑ってしまった。マオに向かってこう言った。


「何、あせってんのよ。マオは生きていてほしいな~って思ったんだってこと」


私が笑いながらこう言ったことにマオは言い返してきた。


「ま、俺よかアリスの方がやられてしまいそうだけれどな。

 よわっちいしさ」


そう言ってマオが笑ってきた。私はマオに言い返した。


「ふん、私がこのまま突き進んで女王になってやるんだから。そうしたらマオなんてもっとよわっちいんだからね」


そう言った時、一瞬マオが固まったのがわかった。

マオが静かに話し出した。


「そうだな。アリスが試練を乗り越えられたら強くなれるかもな。

 そうだ、これやるよ」


そう言って、マオは短剣を一つ私にくれた。その刀身には何か書かれている。私は覗き込んでその刀身を見たが読めなかった。マオが言う。


「ここは鏡の世界だからな。文字は反対になってるんだぜ。

 ま、それが解ったとしてアリスに読めるかな」


そう言ってマオは笑って去っていった。そういえば、この世界に来てから鏡を見ていないかも知れない。私は周りを見渡したがなかった。私は短剣をそっとしまった。

私はテントの中に入った。

そこに白の女王の一部の女の子とハオが居た。ハオが私を見る。

女の子が私を見て笑ってそっと奥に消えた。

私はハオを見ていた。

綺麗な顔立ち。優しい目。そしていつも助けてくれる、頼りになる背中。華奢なはずのその体に私はいつも助けられていた。


「傷だらけだね」


私はハオを見てそう言った。ハオは言う。


「僕らの『アリス』気にしないで下さい。私は『アリス』をお守りするのが役目ですから」


にこやかに笑うハオを見て私はレイの言ったセリフを思い出していた。ハオに向かって聞いた。


「ハオ様は次の世界でも私を守ってくれるんですよね」


けれど、ハオの答えは私が望んでいるものではなかったのだった。そう、なにもかも。





ハオはゆっくり話してくれた。そう、それはあまりにも印象的で、その表情が儚げで綺麗過ぎた。ハオが話す。


「僕らの『アリス』チェスって何マスあるか知ってる?」


私の質問の答えじゃなかった。私は首を横に振った。ハオは話して来た。


「チェスはキング、クイーンを中心にその横にビショップ、ナイトそしてルークがいる。

 そして、チェスは8マスと8マスに囲まれた枠の中にいるんだ。ボーンであるアリスがいるのは2列目。前には6つのマスがあるんだ。そう、前に進めるマスは6つしかないんだ」


私は聞きながら不思議に思った。クイーンは9マス進むようにと言って来た。でも、私が進めるのは6マスだけ。私の疑問にハオが答える。


「そう、僕らのアリスはもう『プロモーション』をすることが出来るんだよ。

 すでに6マス進んだから。でも、それだけじゃ足りない。ここから先は僕らの『アリス』が進むべき先を、なりたい自分を見出せているかなんだ」


私はよくわからなかった。けれど、わかったのはもう前に進むマスがないということだけだった。きょとんをしている私にハオは更に話を続けてきた。


「この世界は鏡の世界。光が色を集めてくれる。光の三原色に彩られた世界なんだ。

 赤、緑、青。そして、その3色のうち2色が合わさって出来た色の三原色。そう、マゼンダ、シアン、イエローの世界。僕らの『アリス』が歩んできた世界だよ。

 でも、この世界は、いや、このチェスの盤の世界は誰かの記憶で出来ている。そして、その誰かの記憶の中に僕らが入っているんだ。でも、『アリス』が強くなるには『アリス』自身の記憶の中に入らないといけない。それはこのチェスの盤の中にはないんだ。

 だって、その世界は僕らの『アリス』そう、君の中にあるんだから」


私は聞きながら話してみた。


「ハオ様は私の中にも来てくれるんだよね」


私は不安だった。まるでハオがもう来てくれないように感じてしまったからだ。

だが、その不安は間違っていなかった。ハオが話し始める。


「僕らの『アリス』私はアリスに言わないといけないことがあるんだ。

 ただ、これだけは約束して欲しい。『ハオという存在を忘れないで欲しい』んだ」


私はハオが言う意味が解らなかった。これがどれだけ難しいっていうことかさえも。

けれど、私は「もちろんじゃない」と言ったんだった。

ハオはそんな私を見て笑って話し始めてくれた。


「アリス、私はここには存在していないんだ。ここに居るのは私の意思だけ。肉体は遠い所にあるんだ。そして、動くことも出来ないでいる。ずっと待っていたからね。『アリス』が来ることをね。

 今の私は誰かの記憶の中にいる私。その思いが私を模ってくれている。けれど、強く残っていない世界には、その時に私が居ない世界には私は存在することが出来ないんだ。

 そう、この世界の果てに来る僕らの『アリス』が見る世界には、その時の『アリス』の記憶には私はいないんだ。でも、忘れないで欲しい。いつも近くで『アリス』を見守っていることを」


ハオはそう言って私の手を握り締めてくれた。この感触がウソだなんて思えない。でも、ハオの表情を見ていて、ハオがウソを言っているとも思えない。私はこうハオに聞いた。


「ハオ様はいつまで私と居てくれるの?」


私は不安だった。私が自分の世界から戻ってきて、自分の進むべき道が決まった時はハオが近くに居てくれると思っていた。ハオは悲しい顔を私に向けてきて、話し出した。


「おそらく、僕らの『アリス』が私と会えるのはこのイエローの世界が最後かも知れない。もし、僕らの『アリス』が赤のキングを倒せたのなら、そして、『キングの庭園』にたどり着けて何かを少しでも思い出せたのならもう一度だけ出逢えるかも知れない」


私はハオの手を強く握り返した。そしてハオに向かってこう伝えた。


「絶対に強くなるから。そして、赤のキングを倒すから。それまで私、ハオ様の事絶対に忘れないからね」


ハオは優しく笑って私の頭を撫でてくれた。優しく、そっと。そして、こう伝えてくれた。


「ありがとう」


それだけで私は嬉しくて、泣きそうになった。ハオがそっと優しく抱きしめてくれた。こぼれそうな涙はハオの胸が受け止めてくれた。優しい思い。そのハオの気持ちがすごく伝わってきた。ハオが耳元で話して来た。


「僕らの『アリス』が例え私を忘れたとしても、私は忘れないから。そして何度でも『はじめまして』からはじめるよ。そう全ては『アリス』のためにね」


私はそのハオの言葉を聞いて胸がチクリと痛くなった。私はどこかでハオと会っていたのかも知れない。こういう形ではなく、違う形で。けれど、思い出せなかった。名前も環境も違う世界だったかも知れない。でも、ハオだけは忘れていなかったのかも知れない。私が忘れたその世界を。その時、何かすごい音がした。ハオが立ち上がって話した。


「赤の女王が来ましたね」


ハオはそう言って外に向かって走っていった。私はどれだけハオの背中をこうやって見てきたのだろう。私も立ち上がった。白の女王の一部の女の子がどこからか現れてきてこう言った。


「ハオは大丈夫です。この世界で誰かがハオを覚えている限り。

 だからこそ、ハオは赤の女王の一番の盾になるのです。他のものと違ってこの世界で消えることはないですから。その代わりにチェス盤にはハオは現れてくれません。

 アリスが試練を乗り越えられた先にはハオと再び会えるかも知れません。けれどこれが最後の別れになるかも知れません。このままでアリスはいいのですか?」


私はその言葉を聞いて走り出した。

テントの入り口にレイがいる。

すでに木で結界のように覆われていた。うっすらと見える外は真っ赤に染まっていた。赤の時間だ。このままだと私たちは勝てない。私はレイに話した。


「私も外に出して。戦いたいの。ハオと一緒に」


けれど、レイは首を横に振るだけだった。ライの声が聞こえてきた。


「嬢ちゃん。こっちの世界は戦場だ。誰も嬢ちゃんを守るなんて余裕がない。だからそこで待っていてくれ。そして、誰もが皆生きて帰ってくることを祈っておいてくれ」


私はライの言葉を聞いて思った。


「そんなのイヤだ。守られているだけなんてイヤだ」


木の結界部分が火で燃えて来ている。私はその隙間から外を覗き込んだ。外は風と火と、赤い剣戟が飛び交っていた。最前線でハオが戦っている。その近くでマオも戦っている。

私も戦いたい。手伝いたい。もっと私に力が欲しい。その時どこからか声が聞こえた。


「意識を集中して。深呼吸をして大気の流れを感じ取るの」


その声はラキシスだった。私の中にラキシスを感じ取れた。私はその声の通り目を閉じて大気の流れを感じていた。そう次に言う言葉はわかる。ラキシスも同じように私と叫んでくれた。


「召雷!!」


雷はアレグロに直撃した。ライが、マオが私を見た。私の姿はラキシスが着ていた鎧を見に纏っていた。私は木の結界から外に出た。赤い剣戟が襲ってくる。


「土を」


ライが土の壁で防いでくれた。私は更に叫んだ。


「サンダーボルト!!」


あたりに雷の渦が出来て赤の女王の剣戟もろとも飲み込んでいった。世界が変わる。私は自分の中にラキシスを感じられた。マオが話してくる。


「おい、アリス。強くなったじゃねえか」


私はマオに向かって話した。


「もっと強くなってやるんだからね。そしたらマオなんて跪かせてやるんだから」


そう言った時、どこからか声が聞こえた。


「ファイアーストーム」


フィーネが私に向かって火を放ってきた。雷では炎は切り裂けない。私の前にマオが来る。マオが言う。


「しっかりつかまってな。」


そう言ってマオは剣で縦にした。炎がその剣によって切り裂かれていく。マオが言う。


「大事な戦力なんだ。別にお前だから守ったわけじゃないからな。勝つためだからな」


そう言ってマオは前に進んでいった。グリードの声がした。


「もう一度サンダーボルトを放ってくれ。赤の女王めがけて」


私は言われた通りにサンダーボルトを繰り出した。その瞬間、マオが私を掴んでテントに向かって走った。そして、マオが言う。


「急ぐぞ。危険だ」


私は事態が飲み込めていなかった。


「え?どういうこと?」


自分の言葉の後すぐに大量の水が押し寄せてきた。

ただ、この前と違うのは私の雷を帯びた水になっていたのだった。水が押し流していく。その時風が吹いた。風が赤の女王を空に押し上げたのだ。アレグロが赤の女王を。

赤の女王が私にめがけて赤い剣戟を放った。


よけられない。


私とマオは直撃から逃げられないと思った。大きな壁が私の前に現れた。ライだ。全ての剣戟を体で受け止めてくれている。血が飛び散っている。ライが話して来た。


「嬢ちゃん、気をつけなきゃダメだぞ。特に勝ったと思った時ほど余計にな」


ライはそう言って手をあげて叫んだ。


「ストーンシャワー」


赤の女王めがけて大量のとがった岩が落ちた。だが、その瞬間に赤の女王は消えた。

その瞬間空は赤からイエローに変わっていった。ライの背中がうっすらと消えかかっている。ライが言う。


「ラキシスが守ろうとした『アリス』だ。俺も守れてよかったよ」


ライはそう言って笑っていた。消え行く最後まで。私は何て言っていいのか解らなくなってしまった。マオが言う。


「悲しんでいる暇はないんだ。世界が変わる」


イエローの世界がどんどん歪み始めた。ハオが走ってきた。ハオが言う。


「僕らの『アリス』ここで私はさよならです。後は自分を強くそして、信じて下さい。

 『アリス』は一人じゃないですから」


そう言って、ハオは私を力いっぱい抱きしめてくれた。けれど、その感触も徐々に薄れていく。歪み行く世界にハオだけは取り残されていた。

マオの声がした。


「先にチェスの盤で待っている。お前が帰ってくるまで俺らは堪えきるからな」


その言葉の意味は後になってから解った。私が降り立った場所。そこは真っ白な、そう何もない真っ白な世界だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ