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イエローの世界 -1

~イエローの世界~


銀杏並木に囲まれた世界。そこに私は降り立った。目の前に白を基調にしたピンクのフリルのついた服をきた人が立っていた。


ハオだ。


だが、ハオの姿を見てびっくりした。服はかなり傷ついていた。そして、血がかなりついている。ハオは私の所にきて頭を下げてこう言って来た。


「僕らのアリス。すみません。私がいけなくて」


ハオはそう言って私を見てきた。私は思っていた。ハオは楽な方にいるのだと。でも違った。この姿を見る限りハオのところも激戦だったんだ。私はハオに伝えた。


「ハオ様は悪くないです。だって、ハオ様は白の女王を守っていたのですから」


私はこう話していたが、ハオの顔は曇ったままだった。ハオが曇った表情のまま話して来た。


「もし、よろしければ白の女王に会われますか?」


私はわからずコクリと頷いた。多分、ハオは私を白の女王に会わせたがっている。


私はハオについて歩いて行った。その先には白いテントがあった。テントというより円柱に三角錐がついた大きなものだった。入り口に屈強な男性がいる。坊主に黒ヒゲ。そしてサングラスをしている。そして、黒いスーツを着ていた。黒いスーツの男性が言う。


「君がアリスだな」


顔を近づけてくる。なんだか怖い。私はハオの背中に隠れるように動いた。ハオが言う。


「グリードは顔は怖いけれど優しい人だよ。ルークなんだ」


グリードといわれた人は笑いながら手を差し出してくれた。


「よろしくな、アリス。白の女王にも伝えてくれ」


そう言って笑ってくれた。いい人なのかも知れない。私は思った。近くで見るとシャツが赤く滲んでいた。皆、怪我している。誰かを守るため、いや、赤の女王に勝つため。

私は自分もどこかで覚悟を決めないといけないのかもって思った。

ハオが優しく笑いかけてくる。


「大丈夫、アリスはアリスのままでいいから」


その笑顔が背中を押してくれたみたいだった。私はテントの中に入った。そこには銀髪の眼鏡をかけた男性が座っていた。そして、もう一人、小さな女の子が居た。真っ白なワンピースを着ている。女の子は走り回っていた。私は一瞬意味が解らなかった。


「ハオ様、まさかこの子が白の女王なの?」


ハオではなく、銀髪の眼鏡の男性が私を見て話して来た。


「君は、アリスだね。僕らが待っていた。

 彼女は白の女王の一部さ。私はずっと研究をしている。けれど解らない」


そう言って、銀髪の眼鏡の男性は奥にあるカーテンを開いた。そこには一人の女性が眠っていた。ハオが言う。


「白の女王は眠りについたまま目を醒まさないんだ。

 誰も白の女王の眠りを目覚めさせることは出来ない。そして、もう一つ。

 この子は白の女王の意識の一部なんだ」


ハオはそう言って走り回っている女の子を持ち上げた。女の子が言う。


「ハオ、遊んでくれるのか?

 だが、この世界には赤のあいつらがいる。そして待っている。

 世界が赤く、赤黒く染まるその瞬間を」


私は背筋がぞくっとした。女の子なのに、話した瞬間顔つきが変わった。その瞬間にまた変わって女の子が言う。


「みゅ~ハオが私を捕まえたのです。私はハオのものになったんです」


そう言って女の子はハオのほっぺたにキスをしていた。銀髪の眼鏡の男性が言う。


「アリスなら白の女王を目覚めさせられるかも知れない。

 けれど、まだ白の世界に踏み込むには早すぎる。今までの傾向から考えてもう少しだけ足りない。そうあと少しだけ誰かの涙が流れなければならない」


そう言って銀髪の眼鏡の男性はどこか遠くを見ていた。立ち上がったとき、私は気がついた銀髪の眼鏡の男性の右足が義足だということに。私が右足を見ていると銀髪の眼鏡の男性が言って来た。


「これは研究で失ったのだよ。けれど、失ったもの以上に得たものはある。

 そんな顔をしなくていい。私はただ世界の真理を知りたいだけだ。この鏡の世界のね」


そう言って銀髪の眼鏡の男性はハオを見た。ハオは目線をそらす。この世界の、いや、この鏡の世界の真理って一体。私は知らないことが多すぎるのかも知れない。ハオが私を見て言って来た。


「アリス、疲れているだろう。この奥で休むといいよ」


私は白の女王が寝ている所と違うところに通してもらった。そこにはマッシュルームカットの女性も居た。マッシュルームカットの女の子が言う。


「私はノコキ。白の女王のお世話をしております。本当はボーンだったんですけれど、どうしてか戦えなくて、今はみんなのおせわをしています」


そう言ってノコキはそこにあるシーツでベッドメイキングをしてくれた。なんだか悪くて手伝おうとした。ノコキが言う。


「大丈夫です。これは私の仕事ですから。私はハオ様やグリード様、そしてレイ様みたいに戦えませんから」


レイ。誰だろう。私がきょとんとしていたら、ノコキが言って来た。


「レイ様は銀髪の眼鏡の人です。あの人もルークなんです。

 でも、レイ様は白の女王を守るために全てを捧げている人ですから」


私はなんだか悲しくなった。守るべき白の女王は眠りについているだけ。でも、みんな守るために必死だ。その時、私の服のはしを引っ張られた。振り返ると白の女王の一部の、あの女の子が居た。

女の子が言う。


「アリスの見る世界はどう映っている?

 白か?黒か?赤か?」


解らなかった。この世界はイエローだ。銀杏並木に囲まれ黄色の世界。どうして、白か黒か赤なのだろう。私は考えていた。今まで辿ってきた世界も色が個性的だった。

女の子が言う。


「辿った世界は何を意味する?世界は何を伝えようとしている?

 アリスはそしてどこに行くのだ?どこに行きたいのだ?」


服を引っ張られながら言われている。けれど、その言葉はすごく大事に思えた。だが、女の子は続けてきた。


「行きたい世界、なりたい自分が決まっていないと迷子になるぞ。

 この世界はそんなに優しくないからな」


そう言って女の子は走って去っていった。ノコキが言う。


「白の女王の神託ですね。意味はあるけれど、そのときが来るまで解らない。

 もし、その意味が解った時、アリスは何かを得るんだと思いますよ」


少し寂しそうな顔をしたノコキが気になった私は聞いた。


「ノコキも実は神託もらったんじゃないの?」


私はそう思った。ノコキが言う。


「私は解っていたけれど選べなかったんです。どうしてもその人が気になって、

 やめておけばよかったのに、手を差し出してしまった。

 それはその人にとっても私にとってもいい選択でも結果でもなかったのかも知れない。

 ねえ、アリス。人ってわかっていても選べない時ってあるよね」


私はゆっくり頷いた。そして暫く考えて話し出した。


「多分その時できた一番のことをノコキはしたんだよ。

 そうじゃないって思えるのは今だからなのかも。その時は解っていても出来ないときだったんだよ。

 それに過去は変えられなくても未来は変えられるんだもの。だから立ち止まることに飽きたら前に進んでもいいんじゃないのかな~」


私の言葉を聞いてノコキはゆっくり頷いてくれた。そしてノコキは話し出してくれた。


「ありがとう。なんだかアリスに助けられた気がする。

 私、もう一度頑張ってみようかな~」


ノコキが笑顔になったとき、どこからかすごい音がした。私は外に向かって走り出した。

世界はイエローじゃなく赤に染まっていた。まるで空が燃えているような感じ。声がする。


「出てくるな、戻ってろ」


そこにはマオが居た。風が吹く。アレグロの風だ。風をさえぎるように地面が盛り上がる。


「嬢ちゃん、ここは惨劇が始まる。ちょっとで終わるから待っていな」


ライがウインクをして私の前に立ってくれた。


何が起こるの?


その時、すごい勢いで土が吹き飛ばされた。目の前に開けた世界は、倒れているハオと赤の女王だった。ハオが言う。


「アリス、逃げて下さい」


私は足が震えて動けなかった。そう、解っていたのに動かせなかったんだ。


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