αプロローグω
少し童話チックなファンタジーです
ティカには、なぜスノーさんが泣いているのか、よくわかりませんでした。小さい頃に拾ったティカが少し居なくなるだけなのに、なんで泣いているのか、わかりませんでした。
「泣かないでよお母さん。僕、もう行くよ」
スノーさんは泣くばかりでした。長い髪を乱して、顔を手で隠していました。
『お父さんが、牢屋から出てくる』
そうスノーさんが言ったのは、昨日の事でした。その時のスノーさんも、今にも泣き出しそうな顔をしていました。
その時まで、ティカはお父さんが居た事も、自分が捨て子である事も知りませんでした。考えてみれば、ティカは自分の名前と誕生日くらいしか、自分の事を知りませんでした。もう一つ知ってる事と言えば、
『自分が悪人にしか見えない』
という事ぐらいでした。だからティカにお父さんがいるなんて、ティカにとってとても嬉しい事だったのです。
でもそれを、スノーさんは少しも嬉しい事と思っていないようでした。それはお父さんが、“人殺し”だったからなのかもしれません。ティカが生まれたと同時に、人を殺してしまったからかもしれません。
どちらにしても、ティカにはよくわかりませんでした。
ティカは呪術師にかけられた呪いを、解きに行かなければなりませんでした。それだけの事で、こんなにスノーさんが泣いているのか、ティカは不思議に思っていました。
ティカはボロボロと涙を流すスノーさんを見ているのを、ついに我慢できなくなりました。
「行ってくるよ、お母さん」
ティカは小さな木の家のドアを開けました。ティカはもう十二歳なのに、友達がいませんでした。だからあまり外に出る機会はなかったのです。
久しぶりに出た外は、相変わらず眩しくて、ティカは目を閉じました。キャスケット帽を深く被り直し、リュックを背負い直して、ティカは歩き出しました。




