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傷心令嬢は初恋王子に飼われる? 

作者: 雨宮莉兎
掲載日:2026/02/14

「リリー、ごはん持ってきたよ」

「ありがとうございます」


 アランは優しげな笑みを浮かべながら私の前に朝ごはんを並べた。

 朝ごはんからは湯気がのぼっていて、しかもどの食べ物もリリーの好物だった。思わずよだれがたれてしまいそうになる。


「た、食べていいの?」

「もちろん。リリーのために作ったんだから」


 その言葉を聞いて、リリーは「いただきます!」と勢いよくごはんを食べ始めた。どれも頬が落ちるほど美味しい。


「これアランが全部作ったの?」

「うん。そうだよ?」


 これを全部アランが、とリリーは瞳を輝かせる。


「アラン!ずっと私のこと飼ってください!」

「今更?」


 アランは怪しげにリリーに微笑みかける。


「リリーをさらったその時から僕はずっと飼うつもりだったけれど」


 ◇◇◇


 思い出すのは一週間前の舞踏会。

 婚約者であるジョナスは約束の場所にいつまで立っても来なくて、リリーは泣きそうになりながらなんとか耐えて、入口近くに立っていた。


 わかっている。ジョナスはもう来ないだろう。なぜなら私のことを捨てて、アイリーンと恋人になったから。


 でも、今の今まで友達から聞いたそのことを信じたくなくて見ないようにしていたのに。


「私、ばかだ」


 両親から今日の舞踏会のために送ってもらったドレス。今まで一番似合っていて、自分でも綺麗だと思っていた。でも、今の私は誰が見ても惨めな令嬢だろう。


 眼の前が涙でぼやけていく。


 泣きたくないのに、泣いてしまいそうで。


「あれ、リリー?どうしたの?」


 声をかけられリリーは上を向く。


 声の主は、幼馴染のアランだ。婚約者ができたことで距離を取らざるを得なくなったが、幼い頃はよく遊んでいた。

 そして、アランはリリーにとって初恋の王子様でもある。


 そんな人に、今の自分を見られたくなかった。


 惨めで、醜い今の自分を見てほしくなくて、リリーはアランから目を逸らす。


「ジョナスは?」

「……」


 涙をこぼさないように唇を強く噛んだ。


「……リリー、今日の君はとっても素敵だね」

「え」


 いきなりの褒め言葉に思わずアランを見る。


「まるで天使のようだ」

「嘘でしょう?今の私は綺麗でも、可愛くも、ない」


 褒められてもとても立ち直れそうにない。

 そんなリリーの様子を見て、アランは手を差し伸べた。


「僕がエスコートするよ」

「え、そんな悪いよ」

「大丈夫、だって今日のリリーは世界一可愛いから。僕が逆に君に釣り合わないくらいだ」


 手を捕まれ、そのままリリーはアランに連れられて会場に入る。


 暗闇にいたから突然の光に目がチカチカする。

 そのせいかアランの笑顔もキラキラと輝いて見える。


「リリー!!」


 ビクリと体が固まる。

 中央の階段にジョナスとアイリーンがいる。アランは険しい表情を浮かべ、アイリーンはくすくすとバカにしたように笑っていた。


「な、んですか」


 声が震えているのがわかった。

 だって、これはまるで。


「リリー、お前との婚約を破棄する。俺は最愛の人を見つけてしまったんだ」

「ジョナス様!」


 アイリーンがジョナスに抱きついた。ジョナスは鼻の下を伸ばしている。


「こ、んやく、はき?」


 最悪の想像が現実になってしまった。

 力が抜け、床に膝をつく。


「はははは!さまあない!お前は俺とアイリーンの純愛を邪魔してきたのだからな。当然の報いだ!」

「そうですわ!私はジョナス様が大好きなのに、あなたが婚約者だから我慢するしかなかったのです!」


 好き勝手に悪口を言われている。でも、それに言い返すほどリリーは勇気を持ち合わせていなかった。

 ジョナスのために今まで努力を続けてきた。でもそれもジョナスの重しになっていたのだろうか?私が婚約者であることが二人にとったら邪魔になっていたのだろうか。


 私がやってきたことはなんだったんだろう。


「ジャナス。本気か?」


 アランの地を這うような声が会場に響く。


「あ、ああ。本気だ」

「そうか。でもさ、婚約者っていうのは本人の意志で決められるものではないんだ。君たちだって親に決められた婚約だろう?」

「そうだが」

「ならば、リリーを悪だと言うのはよくない。そして、こんな公の場で言うべきでなかった。これは君たち三人でちゃんと話し合って決めるべきだった」


 アランはそこでリリーに振り返った。


「なあ。本当に婚約破棄するんだよな?」

「何度も言わせるな。そうだ、俺はアイリーンと婚約する」


 アランは誰にもバレないように苦笑した。そして、リリーに向かって膝をつく。


「リリー、君のことがずっと好きだったんだ。俺と婚約してください」


 アランの突拍子もない言葉にリリーは目を丸くする。

 

 でもただの幼馴染であるだけの私に婚約を申し込むなんて少し苦しい冗談だと思った。私は確かにアランのことが好きだけれど、アランにとったらただの幼馴染。

 この状況で私が恥をかかないようにしてくれただけだろう。


 ならその申し出を断るのも申し訳ない。


 それに、今だけでも好きな人と一緒にいたかった。


「はい。私もです」


 アランはリリーを抱きしめた。

 周囲から歓声が上がる。


 ジョナスとアイリーンは予想外の出来事に動けないようだ。


「それでは、皆さんいい夜をお過ごしください」


 いこう、と耳元で囁かれ、リリーとアランは会場を後にした。


 なにかを喚いているジョナスとアイリーンの声は、好きな人に連れ去られているという事実でいっぱいいっぱいのリリーには届かなかった。


   ◇◇◇


「リリー、ぼうっとしてるね?大丈夫?」


 少し思い出す時間が長すぎたみたいだ。


「大丈夫です。なんか今も夢みたいで、現実かなって思うほど幸せで」

「そっか。それならよかった」


 でも、そろそろ家に一回は帰らなければいけないだろう。

 婚約破棄だってお互いの両親からの許可がいるし、新たな婚約を結ぶにしても同じだ。


「アラン、私そろそろ家に帰らなきゃ」

「なんで?」

「なんでって、わかるでしょう?」


 アランからの思いがけない言葉にリリーは驚く。


「ジョナスとの婚約を正式に終わらせなきゃいけないし」

「そんなの僕がしておくから」

「で、でも」


 アランは妖美に笑った。


「いいんだよ。リリーがここにいてくれれば、後は僕がなんとかするから」


 それでもリリーが食い下がろうとすると、アランは笑みを消した。


「それともなに?僕との婚約が嫌になった?僕のこと嫌いになった?」

「そんなわけない!」

「じゃあ、いいよね?ここにいればずっと一緒にいれるし、辛いことは僕が全部消してあげるから」


 それだけ言い残し、アランは部屋を出た。そして、ドアの鍵を閉めていく。内側からは開けられない。


 今更気付いたがこれは監禁されているのではないだろうか。

 

 今まで幸せすぎてなにも考えれていなかったけれど、部屋からも出してもらえず、自分の意見を言っても聞いてもらえず。

 でもあったかいごはんをくれて、寝床もあって。

 優しくしてくれる。


 どうしたらいいんだろう。逃げ出すにしても道具がないし。部屋のドアは鍵で固定されているし。


 悩んでいると、ドアからコンコンと控えな音が聞こえた。


「どうぞ」


 ゆっくりとドアが開き、姿を見せたのは小さな女の子だった。

 アランの妹だろう。名前はフローラと言っていたはずだ。


「フローラちゃん?」

「え、お姉ちゃん、私のお名前知ってるの?」

「もちろん、だってアランの妹ちゃんでしょう?」


 こくりと頷き、フローラはドアを静かに閉めた。


「お姉ちゃんは?」

「私はリリーよ。よろしくね」

「うん、よろしく」


 フローラはまるで花がほころぶ穏やかで素敵な笑顔をした。

 どこかアランに似ているところもある。


「お兄ちゃんがこの部屋には入るなって言ってたから気になって来ちゃった」

「入るなって言われたのに来ちゃったの?」

「うん」


 フローラはしゅんとする。

 そのかわいい様子に思わずリリーはときめく。リリーには兄弟がいない。だからこんなかわいい妹がいるなんて、アランを羨ましく思う。


「お兄ちゃん、怒るかな」

「大丈夫よ。もし怒られたら私が守ってあげるから」

「ありがとう。お姉ちゃん」


 フローラはころころ笑った。


 久々にアラン以外の人に出会えたので嬉しい。

 

「ねえ、お姉ちゃんはずっとここにいて飽きない?」

「まあ、確かにずっと部屋にいるから外に出てみたいなとは思うわ。でも、アランが許してくれないからね」


 私は苦笑する。

 何度かアランに頼んでみてはいるが先程のように断られている。


「お姉ちゃん。私、実はねお姉ちゃんを連れ出せちゃうんだよ?一緒にお外いかない?」

「え、本当に?」

「うん。お兄ちゃんから鍵奪ってきちゃったから」


 そう言って、フローラはリリーに鍵を見せた。


「フローラは意外と大胆なことするのね」


 兄妹揃ってずる賢いところがあるようだ。


「出てみる?」

「……」


 私は即答できなかった。


 なぜなら外に出たらいろいろな問題を解決しなければいけないからだ。アランはすべて自分に任せたらいいと言っていたが、本当はリリー自身ですべて終わらせるべきだと思う。


 でも、婚約破棄された娘を父と母は優しく迎え入れてくれるだろうか。社交界にはもうすでに噂が流れているかもしれない。それが悪いものだったどうしよう。


 不安要素が多くて、考えることが多くてすべて投げ出してしまいたくなる。


「ごめんなさい。私……」

「出たくないの?」


 フローラの純粋な質問にリリーは困ってしまった。


 はたから見れば閉じ込められている私が出たくないと言うのはまるで二人で共依存に陥っているみたいだ。


「まだ、覚悟ができなくて。向き合えないの」


 そうだ。

 わざと見ないようにしていたけれど、ジョナスに婚約破棄を言い渡されたのはかなりショックだった。いや、かなりではない。リリーの心の中で天変地異が起きたように感じた。


 今までの努力を否定され、精一杯ジョナスを愛そうとしていた自分が馬鹿みたいに思えて。


 まだ私は事実に向き合えない。だからこの状況を利用しよう。


「ごめんね、フローラ」

「そっか。出たくなったらいつでも言ってね」


 フローラはそう言って部屋から出ていった。



 お昼になった。

 またアランがごはんを持って部屋に現れる。


「はい、熱いから気をつけてね」

「うん」


 アランはいつも通りだ。鍵を一つ失くしたことに気づいていないようだ。


「ねえ。ここに誰か来た?」

「な、なんで?」


 アランは部屋をぐるりと見渡す。


「匂いがする」

「そう?私にはわからないけど」


 内心ドキドキしながらリリーは素っ気なく返事をする。


 フローラが怒られるのは嫌だった。またフローラとお話できることをリリーは楽しみしているからだ。


「まあ、いいか」


 リリーはほっと胸を撫で下ろす。


「はあ、疲れたよ。仕事が多くてさ」

「そういえばアランは当主になったのよね?」

「ああ、父から引き継いで数年経ったけれどいまだに慣れなくて」


 そう語るアランの表情には疲れが見えた。

 きっと、会えなかった間もアランはたくさんの努力をしてきたのだろう。


「アランは頑張っててすごいわ」

「本当?」

「うん、すごい」


 リリーが褒めるとアランはニコニコと笑う。犬の耳と尻尾が見えてきそうな程だ。そんな様子が可愛くてリリーも微笑む。

 思わず撫でてしまうと、アランはぴたりと動きを止めてしまった。


「ご、ごめんなさい。嫌だった?」


 恐る恐るリリーが聞くと、アランは困ったように微笑んだ。


「ううん。うれしくて」


 アランはそう短く答えると目を閉じた。そしてもっと撫でてと最速するように頭をリリーの手に擦り付ける。

 でもそんなアランはどこか寂しそうに見えた。リリーは何も言わず優しくアランの頭を撫でた。


   ◇◇◇


 今日はなぜかアランが来なかった。


 朝ごはんが食べられなくて残念だけれど、一食抜くくらいなら別に問題ないだろう。

 そう思って、ゆっくりしているとドアが開いた。


「アラン?」


 アランかと思ったが、姿を見せたのはフローラだった。


「お姉ちゃん」


 なぜかフローラは今にも泣きそうだ。

 放っておけなくてフローラに近づく。


「どうしたの?なにかあったの?」

「お、お兄ちゃんが、ね」


 リリーに会ったことでフローラは安心したようで大粒の涙をながしながらフローラは必死にリリーに訴える。

 だが呂律が回っておらずうまく理解できない。


「助けて、お、おにい、ちゃんが」

「大丈夫よ、安心して」

「お姉ちゃん、助けてよ。あっちで、お兄ちゃんが」


 フローラはぐいぐいとリリーの服を引っ張り連れて行こうとする。


 外に出ないと助けにはいけない。

 だが、リリーは逡巡する。


 出たら私は向き合わなければいけなくなる。

 でも、出なければアランを助けにいけない。


「お姉ちゃん!」

「フローラ……」


 フローラの必死な顔を見て、リリーは決める。


(大丈夫、私はすべて終わらせる)


 一歩踏み出すと心がすっきりした。

 これはアランのための一歩だ。


 外に出るとフローラがこっちだと案内をしてくれた。


「ここがお兄ちゃんの執務室、お姉ちゃん早く!」


 指さされた部屋の扉を開け、あたりを見渡す。


「アラン!」


 机の近くに倒れているアランを見つけ、一目散に駆け寄った。

 顔色が悪く、呼吸も浅い。


「アラン!アラン!」


 必死に呼びかけていると、ぴくりとアランの瞼が動いた。


「アラン!」

「あれ……リリー?なんで、ここに」


 アランはまだ混乱しているみたいだ。

 リリーは優しくアランを抱き上げ、床に座らせた。


「フローラがアランが倒れたって伝えに来てくれたの」

「フローラが?な、なんで?」

「なんでって、それは」


 リリーはそこで気づいてしまった。

 私とフローラは本来出会うことも話すこともなかったはずなのだ。アランが私を閉じ込めていたから。でもフローラが鍵を盗んで私に会いに来てしまったから。


「あはは、なんだ。そうだったんだ。鍵を盗んだのはお前だね、フローラ」

「お、お兄ちゃん、ごめんなさい。私なにがあるのか気になって」

「なんで!なんでお前はリリーに会ったんだ!俺だけが、俺だけがリリーの全てになりたかったのに」


 アランは激昂した。

 怒っている。でもその表情には悲しみの色と苦痛が混ざっていた。


「リリーもリリーだよ」

「アラン、ごめんなさい」


 アランのこんな表情をリリーは見たことがなかった。間違いだったんだと今このときになって痛感する。

 本当は私がすべておしまいにすべきだったのにアランにすべて任せてしまったから。だからアランを余計に不安にさせてしまったのだろう。


「リリーに見合う人になりたくて頑張って、頑張って。でもリリーに婚約者ができて、それでもリリーが欲しくって。頑張ってようやくチャンスをものにしたのに。閉じ込めて俺以外見ないようにしたのに」

「アラン」


 アランの言葉がリリーに突き刺さる。昔のリリーと同じだったからだ。好かれるために努力してそれでも婚約者は振り向いてくれなくて。


 アランは手で顔を抑えて泣きはじめてしまった。

 どうしたらいいのかわからずリリーとフローラはその場に立ち尽くす。


 痛いくらいにアランの気持ちがわかる。でも今のアランはリリーからの言葉を素直に受け取ってくれないだろう。


 アランの泣き声が部屋に響く。


「ごめん。ごめんねリリー」

「え」


 アランはいきなり謝りだした。

 泣きながら精一杯話そうとしている。


「間違いだってわかってたよ、好きだからって閉じ込めてしまうのは。別に君は俺のことが好きではないだろうし、あのときは追い詰められていたから俺の手を取らなきゃいけなかったし。俺はそれをいいように利用していただけなんだ」

「アラン、そんなことない。私は、アランのこと」

「いいよ、言わなくて」


 アランはリリーの言葉を遮った。

 そして顔をあげて、リリーを優しく見つめる。その顔は諦めを滲ませていて、今離してしまえばすぐに折れてしまいそうだ。


「君はこんなところに閉じ込めておくべきじゃないよ。君の両親も君のことを待ってる」

「私の両親が?」

「うん、君に無理やり婚約をとりつけて悪かったって、あんなやつこっちから願い下げだって。だから君は外に出てちゃんと幸せを掴むべきなんだ」


 アランはリリーの頬を優しく撫で、瞳を細めた。


「こんなことしてごめん。君のことずっと好きだったんだ。今までありが」


 リリーは無我夢中でアランに抱きついた。


「そんなこと言わないで!」

「リ、リリー?」


 さらに強くアランを抱きしめる。


「私もアランのこと好きだよ」

「あはは、ありがとう。こんなときでも優しいんだね」

「違う!」


 リリーは少しアランから離れて、力強くアランを見つめる。


「私の目を見て」


 アランは何も言わずリリーを見た。


「努力しているアランが好き、助けに来てくれたアランが好き、ごはんを作ってくれるアランが好き、わんちゃんみたいなアランが好き、それから」

「ちょ、ちょっと待って」


 リリーがアランの好きなところをどんどん並べていくとアランは顔を赤くさせた。


「私を閉じ込めちゃうくらい好きなアランが好き」

「っ」


 アランは真っ赤になってしまった。顔から湯気がでそうな程に。


「ねえ、伝わった?」

「つ、伝わったよ。でも本当にいいの?こんな俺で。なにも完璧じゃないよ?君の理想の王子様じゃない」

「私はそんなアランが好きなの」


 そう言うと、アランは今までに見たことないくらい安心した顔をして笑った。


   ◇◇◇


「それではこれで以上ですね」


 さらさらとペンを書類に走らせ、自分の名前を書く。


「ああ」


 元婚約者はそれだけ言い、無言になった。

 

 婚約破棄は順調に進んだ。両親も私の味方になってくれたし、元婚約者の両親もあんな公の場で言うことじゃないと元婚約者にこてんぱんに怒ったそうだ。


「それでは」

「なあ」


 外に出ようとしたリリーを元婚約者が止めた。


「俺のこと愛していなかったのか?」

「はい。でも愛そうと思っていましたよ。あなたのことを支えていきたいとも本当に思っていました。でももう私は決めましたから」


 扉をゆっくりと開ける。


「さようなら」


 これで全ておしまいだ。


 外ではアランとフローラが待っていた。


「ごめんなさい、待たせた?」

「ううん。僕が勝手に迎えに来ただけだよ」

「そう、お兄ちゃんが勝手にしてるだけだから」


 アランはフローラを少し睨んだ。リリーはその様子を見てくすりと笑う。

 そして、みんなで並んで歩き出した。


「体調はどうなの?」

「よくなってきてるよ。リリーが手伝ってくれるおかげ」


 過労で倒れたアランはどんどん顔色がよくなり、今ではこうして普通に生活できている。でも自分で全て終わらそうとする癖は抜けていなくて、心配になったリリーは勉強をしてお手伝いをしている。


「よかった。少しでもアランの支えになれていたならとっても嬉しい」

「リリーは傍にいてくれるだけで支えだけどね」

「そう、お姉ちゃんはいるだけですごいんだから」


 何気ない会話をしながらみんなで家に帰る。

 

 愛されるでけ、愛するだけの一方的な思いではなにも伝わらない。もらった愛をちゃんと自分の思いで返しにいくこと。それが大切なんだと今のリリーにはわかる。


「大好き!アラン」


 リリーの言葉を聞き、アランは微笑んだ。


 


 


 





 

 


 

 



 

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