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禁忌薬学の調合師 -使用上の注意はございませんが、責任は負いかねます-  作者: 川井田ナツナ


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1/1

1:プロローグ

「――――だ、れ、かッ……。死……ぬ……」


 工房で一人。私は調合したてホヤホヤの丸薬を一粒、試し飲みして悶え苦しんでいた。

 死に際の苦しみだが、症状の記録は他の何よりもテンションがぶちあがる。


「はあ……はあ……はあ……。めまい……、吐き気。呼吸不全……脈拍数の低下、耳鳴りに……吐血。あと、手の震えか」


 震える手で書き終えると、「ただいま戻りましたぁ」とお手伝いのシーラが帰って来た。

 ……助かった。


「先生、寒くなって来たからって。ちゃんと換気はしないとですよ! あ、そうだった。今晩はお鍋にしましょう! お白菜が安かったんですよぉ」


 シーラはそう言って、床に転がる私の上をジャンプしてキッチンに向かった。


「ああ――――ッ、死ぬかと思った。シーラ、お昼ご飯作って~」


「お昼って、もう十五時(さんじ)ですよぉ。先生」


 そう、私はお腹が減って――。シーラの帰りが待てず、甘いチョコレートの香りのする丸薬に手を出してしまったのである。


 

 油絵の匂いがわずかに残る工房が私の調剤室。


 禁忌薬学をしていることがバレてしまった私は――。

 王都イチの調剤施設から除名処分となり、表向きには街の小さな薬局店をやっている。



 私はあらゆる毒物に【不死の耐性】があり、よく自分を実験台に使う。

 だからといって、他の人が服薬したときの苦しみがないわけではない。

 なのに、お手伝いのシーラと来たら……。見慣れて、心配すらしてくれなくなってしまった。


 だが良いのだ。症状が収まれば便秘が治ったくらいの爽快感があり、私はそのマッチポンプのためにやっているのだから!



「今回は何を入れたんですか?」


 軽食と紅茶を準備してくれたシーラが聞いてきた。


「ん?? あ、今回はねぇ~バジリスクの毒牙とサイクロプスの涙をいつものに足してみたんだぁ。まあでも、十日分の爽快感って所かな」

「先生よく……食事中にその例えできますね。あ、そうだった……これ。次の依頼です」


「それ以外の例えがないからねぇ。ん~~困った困った」


 呆れた様子のシーラから受け取ったのは二つ折りの紙。


「なるほど……ドアの角で小指をぶつける薬か。それもやや遅延性、味なし、ご飯粒サイズ……これはなかなか深い恨みがあると見える」


「どこがですか! 単なるイタズラじゃないですか!? あぁ~、目から血を流すとか……自我を保ったまま体が勝手に動いて、仲間を切るとか。私はそういうのが見たいんですよぉ」


「……マッドメイド」


 すると、シーラは「んんんんんんんっ!!」 と、トラフグのように頬を膨らませ。


「次からは私が依頼を受けるかどうか決めます!」


 そう言うのだった。

 もちろん、シーラの言ったようなものを作ることは禁忌薬学では可能だ。


 そして、ゆくゆくは私も観たいと思っている……。

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