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魔術師狩りのエルアリア ~魔術が使えない少女は剣で憧れを目指す~  作者: 雪柳ケイ
1章

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03.お母様と魔術

  ぐぅ~。

  と言うお腹の音が廊下へ響く。


  お腹空いた......。

  結局、木を傷つけた罰としてコゼットから昼食抜きを言い渡された私は、腹をグーグーと鳴らしながら、お母様の部屋を目指して廊下を歩いていた......。


  まぁ、仕方ない。 私があの木を練習台にしたのが悪い。

  次からは、別のもので試すようにしよう。


  父様が帰ってきたら庭の端っこに丸太を一本置いてもらおうかな。

  どうせ今の私の実力じゃあ、お父様みたいに切り刻んだりは出来ないし、暫くはそれで試せるはず。



  ちなみにご立腹中のコゼットは、ふくれっ面で私の後ろをついてきている。

  口は聞いてくれないが、コゼット曰く『プロは私情で仕事を投げ出さない』との事らしい。


  本当にプロなら主人のお昼ご飯を抜いたりしないんじゃ......。


  なんて呟きそうになったけど、心の中に押しとどめる。

  あの木にしたことは私が全面的に悪かったので、これ以上コゼットを怒らせるのはやめておこう。


  なんて思っているとお母様の部屋の前に到着した。


  私は気を取り直して洋服に着いた皺を手で払って直し、軽くノックして扉を開ける。



  すると、そこには異様な光景が広がっていた。


  空中を泳ぐ沢山の半透明の魚、ベッドで丸くなった半透明の猫、お座りした半透明の犬。

  そして、びしょ濡れのお母様。


「あらエル、どうしたの?」


  そんな状態のお母様は何食わぬ顔でそう言って、私に視線を向けた......。



  ミリスティア・アドニス。

  旧姓はミリスティア・ヘカーティア。

  北の大陸で唯一の王国、ヘカーティアの王族の一人。


  とは言ったものの、実践はお母様の(お爺様)がヘカーティアの()元第二王子だから、()()一応お母様も王位継承権を持っていると言うだけで、本人は王族だからとか、政治だとかには全く一切興味のない性格をしているので、あまり王族らしくはない。


  きっとお爺様が、若い頃に王位継承を放棄する程の魔術バカだったから、それが遺伝したんだろう。


  それにしても.......。



「——魔術を教えてもらおうと思って来たんだけど、なにこれ?」


  と要件を伝えつつ、目の前の半透明の生き物達が何なのか聞いてみた。


「水の初級魔術の練習と言うか開発? いえ、改良かしら。 少ない魔力でどのくらい形を弄れるかの確認をしてたの」


  どうやら魔術の研究中だったらしい。

  一応、お母様はこの国の魔術学院で仕事をしているので、これはその一環なのだろう。


  因みに、こんな感じで仕事のほとんどは家でやってるので、お母様の部屋は半分実験室のような作りになっている。

  何かの手違いで爆発してもある程度はこの部屋の中だけで収まるようにしたのだ。


  昔、兄様に炎魔術を教えようとして屋敷を燃やしかけたことがあり、お父様に叱られた結果こうなった。


  それにしても不思議な光景だなと思い、ベッドの上に寝ている猫に触れてみる。

  すると本物同然のような暖かさを感じられた。


「あぁん、あんま触らないで~。結構魔力の操作ムズいのよコレ。形と温度の両方を同時に変えて、それを維持してるから」


  お母様はそう言ってベッドに歩み寄ると、猫を持ち上げてバケツに入れた。


  そして、それと同時に猫はバシャと液体に戻ってしまう。


「それじゃ、今からっ!片付けるからっ! 少しまってて。今日は風の初級魔術を教えてあげる」


  空中を漂う魚をジャンプして捕まえながら、お母様はそう言う。


「わかった。何か必要なものある?待ってる間に準備しておくけど」


「書庫から風魔術の教本を持っててくれると助かるかも。あ、コゼットはお茶をお願い」


「は~い」


「かしこまりました」


  という事で、コゼットは厨房へお茶を準備しに、私は書庫に魔術の本を取りに行くことになった。




「——はい、それじゃあ風魔術の講義をはじめます!」


  コゼットと私も頼まれたものを持ってお母様の部屋に戻り、諸々の準備を整えたところでお母様の号令がかかった。


  お待ちかね、魔術の勉強のお時間だ。


  私はルンルン気分で、部屋の隅に置かれた椅子に座ってメモの用意をする。

  因みにコゼットはお茶を用意し終えて、部屋の隅で茶菓子片手に私達を見守っている。


「まず初めに、風魔術の基礎も基礎。微風(ゼフィ)から教えま~す!」


  そう言うと、お母様は部屋の真ん中に紙の束を置き、詠唱を始めた。


「其は無貌の精霊、命を運ぶ恵の息吹。大地を駆けろ、微風(ゼフィ)


  詠唱が終わった瞬間、お母様の綺麗な黒藍色の髪がふわりと揺れたと同時に、周りを微風(そよかぜ)が駆け回って紙の束が全てヒラヒラと舞い上がる。


「これが風の初級魔術、微風(ゼフィ)。 ただの微風(そよかぜ)を起こす魔術。濡れた服とか髪とかを乾かしたりするのによく使うかな」


  確かに、水浴びした後に髪を乾かしたりするのに便利そう。


「あと他にも使い道があって......。回帰する詩。微風(ゼフィ)


  と、お母様が私を指さして再使用の詠唱をすると、目に強烈な風が入ってきた。


「うわぅ」


  私は口に情けない声を漏らして咄嗟に私は目を閉じてしまう。


「こんな感じで、目眩しにも使える」


  確かに、顔に直接風が当たると目が乾かないように反射的に閉じてしまうだろうし、例え閉じないように我慢したとしても、涙で視界が悪くなる。

  近接戦でも使えそうな魔術だ。


「外だと砂利とか砂とかを巻き上げたりも出来るから、魔力が本当に少ない時の、最後の手段として使ってる魔術師が多いかな」


  ふむ、将来魔術師を相手にする時は気おつけないとな。


  と、毎回こんな感じで、戦闘面で役に立つ豆知識や応用の仕方を主に教えてもらっている。

  前回は確か、詠唱省略と魔法陣について教わったけな。



  詠唱省略とは、先程お母様が詠唱をせずに魔術を唱えたやつだ。

  基本的に、魔術を使うにはそれなりに長い詠唱が必要なのだが、使い慣れた魔術であれば、名前を唱えるだけでも魔術が使えるようになるらしい。


  ただし、きちんと詠唱をした方が魔力操作の手間を省けたり威力や効果が上がったりするそうだ。

  それでも、戦いなどの速度を求められるような場面では殆ど詠唱省略しか使われてないらしい。



  そして魔法陣とは、それら詠唱とは別の魔術の発動方法。


  魔術は《《言葉》》と深く関係しているらしく、詠唱の場合は発した言葉に、魔法陣の場合はその場に刻んだ言葉へ魔力を流すことで、術を発動させてるのだそうだ。


  大昔は魔法陣での発動が主流だったらしいが、四百年前の英王大戦の時に十三英雄の一人、私の御先祖様でもある賢王ニクス・ヘカーティアが魔術詠唱を創り出してからは、そっちが使われるようになったとか。


  もっとも、未だに魔法陣での発動にこだわる流派の人も居るらしいけど......。

  魔術が使えない私には関係ないのない話だ。


  なんて、前回の勉強内容を思い返してる間にも、お母様の講義は続いている。

 

「ちなみに魔力の込め方次第で温風や冷風も出せたりする」


  お母様がそう言うと、真夏の昼間のような生暖かい風と、真冬のような凍えるほどひんやりとした風が頬を撫でた。


「風魔術は他の魔術との組み合わせがしやすい魔術だから注意すること」


  ほかの魔術......。

  私が今知ってるのは炎、水、土の初級魔術だけ。

  かなり少ないけれど、パッと思いつくだけでも何個か厄介な使い道が浮かぶ。


  例えば炎の魔術、灯火(ヒエラ)

  それ単体では、手のひらサイズの炎を出したり飛ばしたりするだけの魔術だけど。

  ゼフィと組み合わせれば、直接魔力を送らずとも、その炎を大きくできる。


  果たして、微風(ゼフィ)自体の魔力消費と灯火(ヒエラ)の炎を大きくする時に消費する魔力、どっちが多いのか私には分からないけど、組み合わせやすいって言うのはこういう事なんだろう。


  工夫のしかた次第では、魔術の使えない私じゃ想像のつかない使い方ができる。

 


「それじゃ、ここからは実践といきましょう。エル、木剣を持って庭に出て」


  私が魔術の組み合わせについて色々と考えを巡らせている間に、お母様はいきなり部屋を出ていこうとする。


「お母様、実践って?」


  今までとは流れが違う。


「そりゃあ勿論、実践は《《実戦》》よ」


  前までは魔術の詠唱と効果を見せてもらうだけで終わりだったのに......。


  それにお母様は木剣を持って、と口にした。 まさか、私と模擬戦でもやるつもり?


「エルは、剣だけで英雄様になるつもりなんでしょ? だったら母親として少し現実ってやつを見せてあげようと思ったの。 剣術の師匠なんてつけたりして、ダリルは少しエルに甘すぎる」


  真面目な表情でそう言ったお母様に、私とコゼットはただ驚いて呆然とするしか無かった。

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