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魔術師狩りのエルアリア ~魔術が使えない少女は剣で憧れを目指す~  作者: 雪柳ケイ
1章

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27.王都観光 後編

  師匠に連れられて着いたのは、王都の西にあるもう一つの時計塔だった。


 「——綺麗ですね! エル様!」


 「うん、こんなに高いとこ登ったの初めて」


  魔術学院の時計塔とは違って、こちらは上まで登ることができ、王都全体を一望できた。


  気持ちのいい夕方の春風が頬を掠め、髪の毛をなびかせる。


 「どう? 俺のお気に入り。 昔、親友と王都に出てきた日に見つけた隠れ絶景スポットだよ。 ......ここ数年は来てなかったけどね」


  師匠はそう言って手すりにもたれて王都の街並みを眺める。


  私とセラも並んで手すりに寄りかかると、正面に地平線へ沈む夕日が見えた。

  茜色の空が少しずつダークブルーに染まって、一等星が続々と輝きを放ち始める。


  そんな光景を見てしみじみとしていると、隣でセラが呟いた。


 「私......エル様に出会えて幸せです」


  満足そうにそう微笑んだセラに、私は照れ臭なって笑みが漏れる。


 「い、いきなりどうしたの?」


 「今日一日、ずっと一緒に居て、思ってたんですけど、今その気持ちが限界突破して溢れました」


  セラも照れくさそうに笑いながらそう言う。


 「私もセラに会えて幸せだよ? あの日パーティーで助けた時からずっと思ってる」


  趣味も趣向も微妙に違うけれど、私の大事な大事な初めての友達だ。

  セラのおかげで毎日が楽しい。

  隣に居てくれるだけで安心できるし、その可愛さに勇気づけられて癒されている。


 「嬉しいです。 本当に......」


  だけど、そう言ったセラの顔からはスっと笑みが消えて、影が指したような気がした。

  まるで何かに怯えてるかのような、怖がってるような.......。



 「私、エル様に隠してることがあります」


  そうして、ほんの少しの沈黙の後、セラは決心した表情を浮かべて私を見た。


 「な、なに?」


  私は出来るだけ普段通りを装って聞き返したが、実際胸の内では何を告白されるのかビクビクしてしまう。


 「あ、いや別に......そんな大した事じゃないんです」


  そんな私の様子を感じ取ったのか、セラも落ち着きの無い様子で視線を泳がせる。


 「その......嘘だと思ったり、変だと思うかもしれないんですけど.......。 出来ればエル様には信じて欲しいので話します」


 「うん」


  と言った次の瞬間、セラは目をつぶって勇気を振り絞るように言葉を紡いだ。




 「——私、精霊が見えるんです!!」




  風が吹く。

  春の終わり、黄昏時の風は冷たくて。 指先が酷くかじかんだ。


 

 「せ、精霊?」


  思わず私は聞き返してしまう。

  精霊とはあの精霊だろうか?


  魔王が生まれるよりもはるか昔。

  まだ、神様が地上にいた頃。

  人と神の間に立つ存在と言われていた隣人。


 「はい、精霊です......」


  どうやら聞き間違えではないらしい。


 「み、見えるって、どんな風に?」


 「基本、人にくっついてるのが見えます。 周りを飛んでたり、髪の毛の中に潜ってたり、後ろを着いて歩いてたり、背中にまとわりついてたり、様々ですけどたまに話したりもできます」


  精霊が見えて、話もできる。

  今の時代、普通はありえない。



  ——かつて、神は世界を作った際にその地に生きる生命を導き守るための精霊という種族も作り出した。


  精霊は、人や動物それぞれに宿りその命を終える時まで隣に存在し、隣人が朽ちたその瞬間に新しい命の元へ旅立つのだそうだ。


  かつては、そんな隣人も人の前によく姿を見せ言葉を交わしたと言われているが。

  魔王が姿を表したとされる四百年前には既に、精霊を感じたりましてや見ることができる人は居ないに等しかったらしい。


 

  だが、私の目の前に今、精霊を見れると語る少女がいる。


 「ほ、ほんと?」

 

  私はにわかに信じ難い話にセラに疑いの目を向けてしまう。

  がしかし、直ぐにその言葉と行動を恥じた。


 「ほ、本当なんです! 本当に......見えるんです」


  私が信じていないと悟ったセラは、ものすごく落ち込んで顔を俯かせてしまう。


  あのセラがこんな無意味な嘘をつくとは思えない。

  それに、この話を口にする前の躊躇いや不安の表情が嘘には見えなかった。


  きっと、今まで何度も口にしては周りから信じて貰えなかったのだろう。

  だから、私にも話すことを躊躇ったのだ。


  これだけ仲が良くなったけど、結局信じてもらえないんじゃないか。

  もしかしたら変な子だと思われてもう友達じゃいられなくなるんじゃないか。


  きっとそんな不安に駆られて居たんだろう。

  私が同じ立場だったらそんな風に思ってしまう。


  それに私も、魔障の事は結局パーティーの日には話せず、半年経って手紙で打ち明けたくらいだ。


  その時だって、言葉を選びに選んで何度も書き直したし、封筒に仕舞う瞬間も私の事を嫌いにならないかとすごく不安だったのだ。


  なのに、私は......。



 「——ごめん、セラ」


  そう言って私は慌ててセラの手を握って抱き寄せた。


 「信じるよ。もし今まで百回嘘だって言われたのなら、これからは私が千回だって信じてるって伝えてあげる。 それでも千回嘘だって言われたなら、私は一万回でも何万回でも、同じ言葉を口にするから。 だからごめん。 どうか、疑ってしまった私を許して」


  そう言うと、セラは涙を流しながら肩を震わせ、私の胸に顔をうずめた。


 「私、初めてエル様に出会ったあの日の子達に話したんです。 そしたら、嘘つきだって......。 気持ちが悪いって」


  言葉を震わせながらゆっくりと口を開くセラ。


  あの時、虐められていた時の原因はこれだったのか。


 「私、寂しがり屋だから。 友達のままが良かったから。 一人はイヤで、いじめられても我慢して......」


  セラは一言を絞り出す度、大粒の涙を零す。


 「エル様が、手を差し伸べてくれた時、嬉しかったけど、怖かった。 また、同じなのかもって、だから、ずっと.....」


  いつもは敬語のセラも、この時ばかりはそれを忘れて語ってくれた。

  理由は悲しいけれど、私は少し嬉しいとも思ってしまう。


 「私も同じだよ。 魔障の事、気味悪がられると思ってパーティーの日に話さなかった。 セラと一緒だよ、怖かったの」



  ——それは私が父の剣技を目撃して希望を見出す、少し前の話だ。


  私が魔障の呪いで魔術を使えないと分かった直後、使用人達は私を避けるようになった。

  それまで普通に接していたのに、私が少し触れただけで悲鳴をあげて距離をとる。


  その時初めて、自分の呪いは他人からしたら気持ちが悪くて怖いものなんだと自覚させられた。


  あの瞬間の恐怖に染まった使用人の顔は、今でも脳裏に焼き付いている。


  だから私も自分が魔障を持っていることは初対面の人に話さなくなった。

  気味悪がられたくないから、嫌われるのが怖いから......。



 「私達一緒だね」


  大声を上げながら泣くセラの頭を、私は無意識のうちに優しく撫でていた。


  使用人達に気味悪がられても、コゼットだけはこうして、泣いていた私の頭を撫でてくれた。優しく抱きしめてくれた。


  あの時、嬉しかったから。

  とても落ち着いたから。

  無意識に同じことをしたんだろう。




  ——それから、夕日が完全に地平線に沈んだ頃。


  ようやく泣き止んだセラは私から離れた。


 「......すみません。 もう暗くなっちゃいましたね」


  鼻を啜りながら、そう言うセラの目元は真っ赤に腫れている。


 「そうだね。 師匠と一緒に家まで送るよ」


  そう言ったのと同時にフィーさんと師匠の存在を思い出して、咄嗟に振り返る。

  が、いつの間にか二人は居なくなっており、時計塔の上には私達だけが残っていた。


  どうやら、気を利かせて先に下へ降りたらしい。

  恥ずかしいところを見られなくて良かったと私は思いつつ、セラと一緒に時計塔を降りた。



 「お待たせしました。 帰りましょう」


  時計塔を出ると、予想通り二人が待っていた。


 「うん。もう真っ暗だしね」


  師匠はそう言って寄りかかっていた壁から離れるとそそくさと歩き出す。


 「......そうですね。 早く帰りましょう」


  フィーさんもセラの買った本を手に持って一番後ろを歩く。

  そうして、私達は帰路へとついたのだった。




 「——そう言えばさ、精霊ってどんなのがいるの?」


  帰り道、ふと気になったのでセラに尋ねてみた。


 「見た目ですか? 人によって色々ですよ。 例えばフィーは灰色の猫が肩に乗ってますし、お師匠さんは狼が二匹足元を一緒に歩いてますし、ジーク殿下はちっさな犬でした。 あとは......レギオンって方が鎧を纏った大きな影でしたね、あの精霊は怖いのであまり近くで見たくないタイプです」


  もしや、セラが人によって態度を大きく変えるのって精霊で人を判断してるからなのだろうか。

  怖い精霊の人には怯えて、可愛かったり小さな精霊の場合は気軽に接したり、キチンとした精霊の人には礼儀正しくするんだろうな。


  なら、私の場合はどうなんだろ。


 「セラ、私の精霊は?」


 「えっ!? エル様ですか?」


  と、セラは私の質問にギョッと肩を跳ねさせた。


 「えーと......お師匠さんと同じ狼ですけど、まだ小さいですね!」


  師匠と同じ。

  もしかして剣士は狼の精霊が着きやすかったりするのだろうか?


 「ねぇ、他は?」

 

 「他の人はですね——」



  こうして、セラの家まで他の人の精霊のことを話し、楽しい王都観光の休日は幕を下ろした。

どうも、プロローグ以来のあとがきです。

まず、ここまで読んでくださって、本ッッッ当にありがとうございます。

改稿多いし、文章も拙いというのに、ここまで読んでくれた方には頭が上がりません。


エルの物語は皆さんに楽しんでもらえてるのでしょうか?

僕の文章は読みにくくないでしょうか?

もしよろしければ感想など、もらえると凄く嬉しいです。

ここまで感想とか評価がないと言うのは、流石に自信を無くしてきちゃうので......。

賛否をください。あ、讃美じゃないですよ、ちゃんと賛否です。

好評も批評も、ちゃんと成長に繋げたいのでね。


さて、最近は夜とかすごい寒いんでね、皆さん風邪とか引かないよう気をつけてくださいね。

僕も病弱な方なのですごく気をつけます。

それでは、また続きを読みに来てくれると嬉しいです。

以上、雪柳でした。

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