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魔術師狩りのエルアリア ~魔術が使えない少女は剣で憧れを目指す~  作者: 雪柳ケイ
1章

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22.魔術師を相手にする

  暖かな日差しの降り注ぐ昼休み。

  なぜだか私は、まだお昼を食べてないと言うのに、木剣を手にアメリアと剣術場に立っていた。


  ことの発端は数十分前、アメリアに勝負を挑まれたところから始まる——。




 「——あ、え? はい? なぜ?」


  アメリアの言葉に理解が追いつかず、最初に私の口から零れ出た言葉はそれだった。


 「敵討ちですわ!」


  敵討ち......? 私、アメリアの友人を殺しでもしたのだろうか?


  っていやいや、そんな訳ない。

  あるはずない。

  この厄介令嬢さんは何を言っておられるのでしょう。


 「敵討ちって、誰の?」


 「そんなの、幼馴染のリオウのに決まってるじゃない!」


  なるほど。 そこの二人、幼馴染だったのか。

  と納得したところで、アメリアの背後から、そのリオウが慌てて走ってくるのが見えた。


 「ちょっ......アメリアっ! はぁ......待てって!」


  全力で走ってきたのか、呼吸の乱れたリオウがアメリアの肩を掴む。


 「リオウ、止めても無駄よ」


 「お前......俺を理由に、エルアリアと戦いたい......だけだろ?」


 「そうだけどなに? 貴方は黙って私の理由になってればいいの! 私はこの女が気に食わないから叩きのめしたいの!」


  最後、思いっきり本音が漏れてるけど、突っ込んだら藪蛇だろうな。

  と私は余計なことを言いそうになった口を頑張って閉じる。



  それにしてもどうやら、アメリアは私と戦いたかっただけらしい。


  これは私の偏見だが、アメリアが剣術を得意にしているとは思えない。

  しかし、私に勝負を挑んでくるくらいには私を負かすほどの自信があって挑んできてるはず。


  剣じゃないとしたら、多分魔術だろう。


 「どうするの? エルアリア」


  だとしたら、これはチャンスだ......。


  魔術師を相手に経験を積める。

  パーティーでの両親への発言の借りもあるしね。


 「いいよ、やろう」


 「えっ?! エル様やるんですか!?」


  それまで隣で黙っていたセラが驚きの声を上げた。


 「ごめんセラ。 お昼先食べてて良いから」


 「つ、ついて行きます! けど......」


  どこか心配そうなセラを他所に、私は列を抜けて廊下へと歩く。


 「アメリア、剣術場でいい? 」


  中庭でもいいけど、あの辺はお昼時には人が多くなる。

  戦ってる最中に巻き添えが出てはいけない。


 「いいですわよ」


  という事で、私達は剣術場へ移動した......。




  私とアメリアは制服から授業用の動きやすい服へと着替えて、剣術場の真ん中に立った。


 「これ、先生に怒られない?」


 「誰も使ってないし、大丈夫なはずよ......多分」


  お互い、今になって教師に怒られる心配が湧いてくる。


 「ほ、ほら! 早くやりますわよ!」


  そんな心配を振り切って、アメリアが私を睨んだ。


 「う、うん」


  若干の心配を残しつつ、私も木剣を構える。


 「それじゃあ、準備はいいですか?」


  開始の合図はセラに任せられた。

  私は無言で頷いてセラに準備できてると視線を送った。


 「そ、それじゃあ......。 はじめ!!」


  静寂を切り裂いて開始の合図が剣術場に響く。




  ——そんなセラの掛け声と共に、私は前のめりに勢いよく走り出した。


  お母様と戦った時よりは間合いも近いし魔術への対処にも師匠との稽古で慣れている。

  ある程度、勝機は......。


  なんて悠長に考えれる余裕なんてなかった——。



 「岩尖(グリ・レウム)!!」


  アメリアが右腕を思いっきり振り上げたと同時に、鋭く尖った岩が地面を割いて突き出し、頬を掠めた。


  私はそれに驚いて顔を逸らし、体勢を崩して転んでしまう。

  アメリアは、そこに容赦なく次の魔術を放ってくる。


 「火花(ヒエ・ルエラ)!」


  炎と岩の中級まで使えるなんて。

  実力を侮っていた。

  使えてせいぜい初級までかと。


 「あつっ!」


  私の周りでバチバチと炎が弾け、火花がジュッと音を鳴らして頬を焼く。


 「エル様!」


 「お、ちょちょちょ! 危ないって」


  セラが私を助けに走り出そうとしたところを、リオウが止めているのが目に入った。


  それでいい。

  セラを巻き込む訳には行かない。


 「これで終わり? 貴方も魔術を使ったらいかが?」


  出来たらやってる、なんて言い返す余裕もない。


  とにかくこの状況を抜け出さないと。


  立ち上がろうとする度に的確に顔や胸などの近くで炎を炸裂させてビビらせてくる。

  その度に動きを止めてたんじゃいつまで経っても状況は良くならない。


  だったら......。



 ——無理にでも火花を無視するッ!



 「あら、まだやる気?」


  したり顔で指先をヒョイヒョイと動かして魔術を操作するアメリア。

  それを見て、次に火花が起こる場所が予想できる。

  予想が出来れば程度心の準備も出来るというもの。


  加えて、その予想を裏付けるように、魔力の揺らぎのような物がなんとなく肌で感じ取れる......。


 

  バチッ! バチッ!

  と顔や胸の前で炎が散る。

  その度に、胸がキュッとなって肩が震え、火傷が痛む。


  しかし、私は動きを止めない。

  そうして、木剣を頼りに立ち上がった。


 「あら、なかなか根性あるのね」


  アメリアはガッカリしたように腕を下ろすと、また勢いよく振り上げる。


 「岩尖(グリ・レウム)!!!」


  先程と同じ、岩の棘。


  しかし、それはもう見た。


 「せあっ!」


  私は掛け声と共に、突き出てくる岩に木剣を振り上げて砕いた。


  岩魔術は、その強度を術者の練度によって変える。

  熟練した初級魔術で、不慣れな上級魔術を打ち破ることは十分に有り得るのだ。


  いくら中級が使えるとはいえ、この一年本気で鍛えた私の一撃は、それらに勝るとも劣らないはずっ!


 「なっ?!」


  まさか岩の棘を砕かれると思ってなかったアメリアは驚いて動きを止めた。

  私はその隙を見逃さず、すかさず間合いに踏み込む。


 「ぐ、石礫(グロウム)!」


  慌てたアメリアは私の目の前に石の礫を幾つも作り出す。


  足止のつもりだろうが、ここまで近づければ問題にはならない。


 「シッ!」


  軽く息を吐きながら、素早く剣を振る。


  既にアメリア本人に剣の届く間合い。

  どこに石礫が作り出されるのか、肌で何となく感じ取れるようになった私は、石礫が完全に形をなす前に全て斬り払った。


 「速すぎっ?!」


  そうして、私の動きに目を見開いたアメリアに対して、容赦なく突きを放つ。


 「クッ......ハ!!」


  アメリアは空気を吐き出して、ほんの少し後ろに吹き飛び、地面を転がった。



 「アメリア!」


  それを見て、リオウが駆け寄ってくる。


 「リ......オウ」


  お腹を抱えて地面に横たわるアメリアは、目尻に涙を浮かべていた。


  そんな二人を眺めて息を整えていると、セラも私の方へ駆け寄ってきてくれた。


 「エル様、平気ですか!?」


 「え? あぁうん」


  そう返事した瞬間、頬や腕、胸の辺りにヒリヒリとした痛みが走った。


 「いや、ちょっと。ううん、かなり火傷したかも」


  しかも服なんかはところどころ穴が空いたりもしている。


 「医務室行きましょう!」


  火傷だらけの私を見てセラは慌てた様子を見せる。


 「うん。リオウ、そっちは大丈夫?」


  正直、ちょっとやりすぎてないか不安ではある。

  けれど、パーティーでの発言と私をこんなに火傷だらけにしたので......。

  まぁ、自業自得かな。


  でも、流石にお腹に全力の突きはやりすぎだっただろうか。


 「だ、大丈夫よ。 アンタなんかに気に掛けられたくないですわ」


  どうやら杞憂だったらしい。

  アメリアはプルプルと震える腕を支えにもう片方の手でお腹を抱えながら起き上がってそう言うと、私を鋭く睨んだ。


 「らしい。 すまんね、ウチのわがままお嬢様が」


  そう言ったリオウはアメリアの横にしゃがみこみ、私達に苦笑いを浮かべた。


 「俺らは後から医務室いくから、そちらさんは先に行っててくれよ」


 「わかりました。 行きましょうエル様! お昼休みも終わっちゃいます」


  そう言うセラに手を引かれて、私は剣術場を後にした。

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