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魔術師狩りのエルアリア ~魔術が使えない少女は剣で憧れを目指す~  作者: 雪柳ケイ
1章

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21.厄介なご令嬢、再び

 「——そこまで!」


  剣術場に先生の声が響く。


 「ごほっ! ごほっ!」


 「はぁ......はぁ......」


  模擬戦は終わり。

  だけど、私も相手の男の子も立ち上がることが出来ずに、その場を動けないでいた。


  私は肩で息をしつつ、その場にへたり込む。

  未だに右腕は痺れたまま。

  ダラリと垂れ下がって、言うことを聞いてくれない。


  そんな中、セラとフィスがクラスメイト達を掻き分けて駆け寄って来てくれた。


 「エル様、大丈夫ですか?!」

 「エル、大丈夫か?!」


  私はそれに笑顔で返事をする。


 「平気。 ちょっと、疲れただけ」


  まさかここまで強いとは思わなかった。

  剣の速度だけで言えば、師匠よりも断然遅かったけど、一撃の重さは同等かそれ以上だ。

  受け止めただけでも、その衝撃で反撃を繰り出すまでに時間が掛かるなんて......。


  そう今の一戦を振り返っていると、吹き飛ばされた相手の子が鳩尾を抱えながら起き上がった。


 「ごほっ......あぁ、痛ってぇ」


  模擬戦とは言え、相手を吹き飛ばすほどの一撃を鳩尾に入れたのは、少々やり過ぎだったかな。


 「ごめん。私、無我夢中で」


  まぁ余裕を持てる相手じゃなかったし、やったこと自体は間違ってるとは思ってないけど、一応謝っておこう。

 

 「あぁ気にしなさんな。 俺の攻撃もモロに入ってたら、これくらい重かっただろうし」


  そう言って、相手の子は立ち上がる。


 「そんなことよりアンタ、名前は?」


 「エルアリア・アドニス。 貴方は?」


 「リオウ・グリアンド。 ナイスカウンターだったぜ、エルアリア」


  リオウはそう言うと、私の前まで来て右手を差し出した。

  私がその手を左手で掴むと、グイッと持ち上げて立つのを手伝ってくれる。


 「ありがとう。 そういえば貴方、千戦流だよね? 私、千戦流と戦ったの初めて」


  師匠が稽古で使うのは主に使うのは聖王流、たまに魔術の隙をついて攻撃が出来た時に賢王流を混ぜて来る程度。

  千戦流は未だに一度も戦ったことが無い。


 「あぁ、元傭兵の両親がアシヅ出身でさ。 それで俺も千戦流を教えられてんのよ」


  アシヅ。 この国の東に存在する島国の名前だ。

  十三英雄の一人、千戦万勝(せんせんばんしょう) アサヒ・カムロの出身地でもある。


  千戦流の名前はこのアサヒ・カムロから来てるらしい。


 「是非またお手合わせ願いたいな。 ヴァーミリオンって千戦流使いが少ないって師匠が言ってたし」


  このヴァーミリオン聖王国は位置的にアシヅとは余り縁がなく、剣士の殆どが聖王流か賢王流ばかり。 あとは我流となっている。


 「あ~、そうだなぁ。 今回みたいな機会があればな」


  リオウはそう言って苦笑いを浮かべた。

  なにか事情があるんだろうか、あまり乗り気じゃないらしい。


  私的には実力の近い友人が同じ教室に出来て嬉しいのだけれど、リオウは剣術にあまり興味がないように見える。 残念だ。



 「——お二人さん、いい模擬戦をありがとう!」


  と、リオウと話していると先生が話に入ってきた。

  そう言えばまだ授業中だったの忘れてた。


 「エルアリア、右手は大丈夫かい? もしまだ不調が残ってるようなら少し休んでていいよ。 そっちの......」


 「リオウです、リオウ・グランド」


 「リオウも痛みが続いてるようなら少し安静にしなさい」


  先生はそう言うと、他のクラスメイト達にも指示をして、授業を進行させた。


  どうやら、この後はペアになって軽く打ち合いをするらしい。


 リオウは『サボれるぜ、ラッキー!』とか言ってそそくさと端っこの方へ歩いて行ってしまったが、私の方は右手の痺れも既に引いていたので、引き続き参加することにした。



 「セラ、約束通り一緒にやろ」


 「はい! でも本当に休まなくて大丈夫なんですか?」


 「全然平気。ほら右手もこの通り!」


  心配するセラに私は右手を動かしてみせる。

  そんな様子を横で見ていたフィスが口を開く。


 「お前、エルと約束なんかしてたのかよ」


  フィスはほんの少し羨ましそうな視線をセラに向けて言った。


 「貴方は別の人と組んでくださいね!」


  一方セラは、爽やかな勝ち誇ったような笑顔をフィスに見せる。


 「エル! 次は僕と組めよな!」


  フィスはそう言って、腹を立てた様子で別の子とペアを組むために歩いていってしまった。


  それにしても、この一週間でフィスはかなり私に懐いたように思える。

  未だにツンツンした部分はあるものの、授業中や休み時間には毎回私のところに来てはセラと言い争いをしている。


  やっぱり初日にあの意地悪な三人から助けたから気に入られたのかな......。


  なんて、フィスの背中を見て考えていると、セラが木剣を構えたのが目に入った。


 「それじゃエル様、お願いします!」


 「あ、うん。 私は攻めないからセラの方から好きに打ち込んできて良いよ」


 「はい!」



  そうして、その後は鐘が四度なるまでセラの拙い攻撃を捌きながら過ごした——。




  ——初めての剣術の授業が終わり、更衣室で制服に着替えた私たちは、お昼ご飯を食べに食堂へ来ていた。


 「やっぱり、剣術は苦手です」


 「そう? 結構上手だったけど?」


 「いえ、私は魔術を頑張ります! 剣より緊張しませんし、怖くないので!」


  セラはどうやら間近で相手の敵意に晒されるのが怖いらしい。

  剣を振る時や攻撃を受ける時に目をつぶってしまう癖がある。


  性格的に、そもそも剣術というのが合ってないんだろう。

  本人の言う通り、魔術の方が向いているのかもしれない。

 

  なんて考えて、食堂の列に並んでいると、真後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。



 「——エルアリア・アドニス! 漸く見つけましたわ!!!」


  声を聞いただけで、振り返らずとも思い出せる。 あの真っ赤なドレスと金髪を。


  そう、声の主はアメリアだ。


 「あの人、この前の......アメリアさんでしたっけ?」


  驚いて先に振り返ったセラが小声で私に聞いてくる。

  なぜ怒ってるのかは知らないけれど、厄介事には間違いない。


  列に並ぶ全員の視線とざわめきに全く動じない様子のアメリアは、列に割り込むと私の前に立った。


 「はぁ、何か御用ですか?」


  私は嫌な予感にため息を吐きながら、要件を尋ねる。


  すると......。


 「エルアリア・アドニス! 私と、このアメリア・ヴァーネットと勝負しなさい!」


 「......あ、え? はい? なぜ?」


  指をさしながらそう言ったアメリアに私は理解が追いつかず、最初に零れ出た言葉はそれだった。

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