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魔術師狩りのエルアリア ~魔術が使えない少女は剣で憧れを目指す~  作者: 雪柳ケイ
1章

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18/32

17.学院初日 2

  校門前を走って離れたあと、私とセラは校舎の入口で足を止めていた。


  理由は、目の前の大きな掲示板だ。

  どうやら学院内の校則や生徒へのお知らせが張り出される大事な掲示板らしい。


  そして、そこに新入生の名前とクラスが表記されており、教室までの案内が書いてあった。


  今年は新入生が多いらしく、クラスが二つに分けてられてるとのこと。

  セラと同じクラスだといいけど......。


  そう思いながらも自分とセラの名前を探していると、隣のセラが指を指す。


 「あっ! ありました! 私とエル様同じクラスですよ!」


  そう言ってぴょんと嬉しそうに跳ねるセラ。

  私はそんなセラに笑みを浮かべ、一緒に喜んから教室へと向かった——。

 



  教室に着くと、中は既に多くの同級生(クラスメイト)で賑わっていた。

  貴族出身も一般家庭出身も関係なく、お互いに自己紹介したり、友人と談笑したり、一人で本を読んだりと、それぞれ自由な時間を過ごしている。


  身分の違いだとかはあまり感じられない。

  やっぱりさっきの三人組みたいな子達の方が少数派なんだろう。



  教室は階段状になっており、席は基本自由。

  私とセラはほんの少しだけ緊張しながらも教室の中に入り、窓際に並んで座った。


  しかし、とりあえず席に着いたはいいものの黒板に書かれた、担任が来る時間までまだ余裕がある。


  それまで何をして待とうかと考えながら、慣れない教室の雰囲気にソワソワしていると、セラが会話を切り出してくれた。


 「エル様、お昼のご予定は?」


 「アル兄様と学院の食堂で食べる約束してるよ。 セラも一緒にどう?」


 「ぜひぜひ! お兄様にも挨拶したいです!」


  兄様もセラには好印象を抱いているようで、定期的にセラの様子や手紙の内容を尋ねてきたりしていた。


 「あ、お兄様で思い出したんですけど!エル様、妹さんか弟さんが増えるんですよね」


 「うん、産まれるまであと半年もないくらいだって。 お母様もようやく部屋から出てこれるようになったみたい」


  この前様子を見に行った時なんか、土魔術を捏ねくり回してたし。


 「そう言えば、噂じゃ王妃様も妊娠なされたそうですよ!」


 「え、ほんと?」


  初耳情報だ。

  暗殺だとかの政治争いを警戒してまだ公表はしていないのだろうか。

  しかし噂というのは、どうしても漏れて広がるもの。 実際、こうして我々の耳に入ってしまっている。


 「近頃王妃様が公の場に出てきてないって話ですし、かなり信憑性はあると思います」


  確かに最近はお父様も屋敷を開けることが無くなって、王宮に出入りすることが増えてるみたいだし、ホラ話って訳じゃ無さそう。


  お父様の場合、お母様の為に王都を離れないようにしているのもあるだろうけどね。


 「それにしても、セラってもしかして結構噂好き?」


 「えっ? いやっ、この前メイド達が話してるのを偶然耳にしただけですよ」


  と、雑談をしていると見覚えのある人物が教室に入って来るのが見えた。



  そして、直後に相手も私達に気がついたらしく早足でこちらに迫ってくる。


 「おい、お前! さっきはよくも僕に全部押付けて逃げやがったな!」


 「うわっ......」


  小麦色の髪に薄緑の瞳。

  少しほつれのある制服に学院支給の斜めがけのバッグをぶら下げた、眼鏡の男の子。

  そう、先程のメガネ君だ。


 「うわってなんだ! うわって!」


  よりにも寄って同じクラスだったとは、運がいいのか悪いのか。


 「せめて名前くらい名乗ってからどっか行けよ、あの後先生に説明するの大変だったんだぞ!」


 「あぁ、ごめん。 エルアリア・アドニスです。 エルでもエルアリアでも、どうぞお好きに呼んで」


 「えっ......?! えっと、フィス・フェンネルだ」


  まさかすんなり自己紹介されると思ってなかったのか、フィスは一瞬面食らったような表情を浮かべて名乗りを返してくれた。


 「フィスね、よろしく。 それで、他になにか用?」


 「はっ......? いや、その。 一応お礼とか、言おうと......思って」


  フィスは私から視線を逸らすと、顔を俯かせて胸の辺りで親指をクルクルとさせ始める。


 「あぁ、気にしないでいいよ。 結局フィスに全部押し付けてあの場を離れたわけだし」


 「いや、でも......助けてもらったのは事実だし......。 あぁもう! とりあえず感謝は伝えたからな!」

 

  さっきまでの勢いはどこへやら。

  いきなりしおらしくなったフィスはそう言い残してそそくさと前の列へ歩いていってしまった。


  そして、今のやり取りを横で見ていたセラがイタズラな笑みを浮かべて口を開く。


 「思いのほかシャイなんですね、あの方」


 「プライドは高そうだけどね」


  なんてセラと一緒にクスクスと笑っていると居ると、カーンと言う鐘の音が学院中に四度響いた。



  そして、その反響が収まるのと同時に、教室に背が低くて、髪の毛が蒼黒色でボサボサの女性が入ってくる。


  同い年か上級生に見えるくらいの背丈だが。 制服ではなく私服なのと、どことなく大人な雰囲気を纏っている。

  先生だろうか。


 「はい、全員席に着いてちょうだい」


  教室中のクラスメイト達がその人の掛け声を聞いて、足早にそれぞれの荷物の置かれた席に移動を始める。



  そうして、全員が席に着いたのを確認すると、皆の前に立った女性は口を開いた。


 「それじゃ、まずは自己紹介から......」


  教卓に数枚の書類などを置いたその人は、そう言って背伸びをしながら黒板に名前を書き始める。


 「私の名前はシアニス・セントウレア。 このクラスの担任を任されました。 初等部は六年生まであるけど、三年生まではクラスが変わることが無いので、三年間よろしく」


  手についたチョークの粉を払いながら、先生はこちらを振り返った。


  彼女の瞳の下には濃いクマがあり、眠そうな目をしているので視線が合うと睨まれてると勘違いしそうになる。


  まぁ先程の背伸びする可愛らしい姿と、あの身長のせいで威圧感はそれほど感じられないけれど......。



 「そんじゃ、早速だけど明日からどんな授業をするかの説明から始めましょうか」


  そう言って、先生は教卓の書類を手に取ってそれを読み始める。

  それから次の鐘が鳴るまで、淡々とこの学院の仕組みについて説明をされた——。




  ——カーンという鐘の音が四度鳴り、授業の終わりを告げる。


  「あぅ、もう一時限目終わりか。 なら退屈な説明もここまでにして、五分の休憩を挟んで自己紹介タイムにでもしましょう」


  そう言うと、先生は手に持っていた書類を教卓に置いて教室の扉へと歩いてゆく。


 「それじゃ、また五分後。 鐘が鳴ったら戻ってくるから、それまでご自由に」


  先生は眠そうに欠伸をしながらそう告げると、教室を出ていってしまった。



  そうして、次第に騒々しくなる教室で私は先生の説明してくれた内容を振り返る。


  初等部には一年生から六年生まであり、三年生までは基本的な読み書きと算術、それから魔術と剣術の基礎的な授業のみ。

  そして進級には年に四回ある各科目の試験に二回以上合格しないといけないらしい。


  読み書きと剣術はまだ良い、けれど算術は少し苦手だ。

  あと一番の問題は魔術の試験がどうなるか......。


  兄様曰く試験は実践形式で、習った魔術を教師に使って見せるらしい。



 「そう言えばエル様、魔術の試験はどうするんですか? 授業はまだしも、試験は避けては通れないんじゃ」


  と、丁度セラも同じことを考えていたらしく、心配そうな表情で話しかけてくる。


 「うーん。一応、入学前に学院側には説明をしてるから、何かしら対応してくれると思うけど......」


  先生側からなんの言及もされなかったので少し不安が残る。

  後で先生に直接尋ねるしかないか。


 「ま、私は私で何とかするよ! セラの方こそ、大丈夫? 不安な科目とかあるんじゃない?」


 「ううっ。 読み書きと魔術は得意なんですけど、剣術と算術は自信ないです......」


  と、不安そうに答えるセラ。

  直後、いつの間にか横に立っていたフィスが自慢するような笑みを浮かべて会話に参加してしてきた。


 「ふんっ、僕は剣術以外なら自信あるけどな! なんなら勉強教えてやってもいいぞ!」


 「おわ! びっくりした、いつの間に?」


  私はそれに驚いて声を出してしまう。


 「教えてもらわなくて結構ですけどね」


  セラはフィスにどこか冷たい態度を示す。

  ジーク殿下の時も似たような感じだったけど、それよりも明確だ。

  兄様やアスク殿下に対しては普通だったと思うんだけど。

  一体フィスとジーク殿下は何が違うんだ......。



 「僕はエルに言ったんだ、お前に対してじゃない」


 「私の名前はセリシア・エーデルレオンです! お前って呼ばないでください!」


 「あーそうかい、それは申し訳なかったね」


 「なんですか、その言い方! それに、エル様を呼び捨てにしないでください!」


 「いやだね。呼び捨てにするかどうかは僕が決める! それに、エルも自由に呼んで構わないってさっき言ってただろ!」


  そう言い合う二人を眺めながら、楽しい学院生活になりそうだなんて心の中で呟いた。

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