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魔術師狩りのエルアリア ~魔術が使えない少女は剣で憧れを目指す~  作者: 雪柳ケイ
1章

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13/32

12.第一王子殿下

25/12/22 ちょっとした加筆と誤字修正をしました。

 「あそこまで動けるとは、正直思ってなかった」


 殿下は私の喉元に向けた木剣をゆっくりと下ろしながら、ニヤリと笑って言った。


「私も、まさか殿下が賢王流を使えるなんて予想してませんでした」


 そう、私の剣を弾き飛ばしたあの動き。

 あれは賢王流が得意とするカウンター技だ。

 以前、師匠との稽古中に使われたことがある。

 だけど私が横薙ぎを放った瞬間、殿下の構えは聖王流だったはず......。


 あの一瞬で私の剣筋を読んで即座にカウンターに切り替えた、ということか。

 その反応速度とセンスは、流石に英雄王の子孫と言える。


 ......悔しい。

 私もそれなりにやれる自信はあったんだけどな。

 けど今回の勝負で実力も技術も経験も、何もかも足りないと深く実感させられた。


「——エル様、お疲れ様です! かっこよかったですよ!」


 自分の拳に視線を落としながら、負けた悔しさを噛み締めて居ると、いつの間にか真横に来ていたセラが、木剣を私に差し出してくれた。


「ありがとう、セラ。 負けちゃった」


 私はそう言って、自嘲気味に笑いながら木剣を受け取る。


「でも剣を振るエル様、凄くかっこよかったです!」


 セラの励ましのおかげで、ほんの少し落ち込んだ気持ちが晴れ、笑みが零れた。


「——あ、ジーク殿下! こんな所に!」


 それと同時にメイドらしき女性が怒った様子で歩いてくる。


「まずいっ、リアだ。 それじゃ、俺は先に失礼するよ。二人もそろそろパーティーに戻った方が良いだろう。 エル、今度はドレスじゃない時に手合わせしよう」


 そう言った殿下の顔には、焦りつつも満足そうな表情が浮かんでいた。


  それを見た私は、ジーク殿下も剣が好きで剣に憧れている、私と同じ子供なのだと感じた。

  王族だからと、勝手に堅苦しいイメージを持っていたけれど、案外私達とそんなに変わらないのかもしれない。


「はい。次は負けません」


 騎士団長との約束に加えて、第二王子と手合わせができるなんて......。

 今日は本当に来てよかった。


 なんて思いつつ殿下と軽く握手を交わして私とセラは走り去る殿下を見送った——。




「——エル、どこ行ってたの?」


 セラと一緒にパーティー会場へ戻ると、アル兄様が入口の前で腕を組んで立っていた。


 そう言えば、兄様にはちょっと息を吸うだけって伝えて出てきたんだった。


「ちょっと中庭まで」


 まぁ、嘘は言ってない。 嘘は。

 ただ、ジーク殿下とのことを言ってないだけで......。


 ここでジーク殿下の事とか、セラを助けた時のゴタゴタを話すと、また要らぬ心配を掛けるだろうし。

 一旦伏せておいて後日折を見て話そう。


「ふーん」


 兄様はそんな私の考えを何処か見抜いたような表情で返事をしながら、セラに視線を向けた。


「で? そちらのお嬢さんは?」


「あっ! セリシア・エーデルレオンと申します!」


 セラはそう言って礼儀良くお辞儀をした。

 気のせいかもしれないが、先程のジーク殿下への挨拶より丁寧だ......。


「丁寧にどうも。アルカード・アドニス、エリーの兄です。 よろしく、セリシア嬢」


 どうやら、兄様は私に初めて友達が出来たのが嬉しいらしい。

 普段は表情変化が乏しい兄様がこれまた珍しく笑って見える。


「エル様のお兄様......。 でしたら是非、エル様と同じように私の事はセラもしくはセリシアと呼び捨てにしてください」


 ジーク殿下にはセリシア嬢呼びで通してたのに、私と兄様には随分フランクだな......。

 まぁ、可愛いからいいんだけど。


「じゃあ、セリシアちゃんって呼ぼうかな」


「ぜひぜひ!」


 兄様が他人をちゃん付け......。

 私も今度セラちゃんって呼んでみようかな。


  なんて思っていると、兄様の背後から見覚えのある人物が姿を現した——。




「——やぁ! 何やら楽しそうだね、アル!」


 そう言って廊下に出てきたのは、この国の第一王子、アスク・ヴァーミリオンだった。


 明るい赤髪のポニーテールに、ジーク殿下と同じ黄金の瞳。

 パッと見の性格はジーク殿下とは全くの正反対で、落ち着いた雰囲気を纏っている。


「妹に初めての友達が出来たから、それを喜んでるだけだよ。 何か用?」


 兄様は唐突に姿を見せたアスク殿下に嫌そうな表情を浮かべて、返事をした。


「僕はこのパーティーの主役だよ? なんだいその邪魔くさそうな顔はぁ」


 若干無礼な兄様の返事にも、腹を立てることなく軽い口調で会話を続ける二人。


「主役ならこんな端っこに居ないで他のとこ行きなよ」


「えー、酷いなぁ。 僕ら親友だろ~?」


 兄様の冷たい対応に、アスク殿下は抱きついて頬をスリスリしようとした。


「うざいうざい、王族なら王族らしくしてろ」


「え~、今はやだぁ~」


 それを無理やり剥がして、突き離す兄様。 しかし、アスク殿下は負けじと抱きつこうとしている。


 横で見ていた私とセラは、その様子に唖然としてしまう。

 二人が仲がいいのは知っていたけど、まさかここまでとは。


 パーティー会場に到着した後、挨拶をした時はもっとキッチリしてて兄様にこんなダル絡みはしてなかったのに。

 あの時は、王妃様も居たし我慢してたのかな......。

 それに、兄様が誰かにこんな雑な対応してるところも初めて見た。


 なんて思っていると、隣で困惑の表情を浮かべていたセラがとうとう口を開く。


「あ、あの。 お二人共にすごく仲がよろしいんですね」


 その言葉に、兄様はすごく嫌そうな表情を浮かべたが、それとは裏腹に殿下は満面の笑みを零した。


「まぁね!」


「まぁね、じゃなくて離れろ」


「兄様、流石に王族にその対応はないんじゃない?」


 私も流石に兄様の言い様に周りの目が気になったので止めに入ってみる。


「うぐっ。 エルまで......」


 どうやら私が殿下の味方をしたのが相当ショックだったらしく、兄様は肩を落としてしまった。

 そして、それに便乗するかのように兄様に抱きつく殿下。


「そうだそうだ! 優しくしろ! エルちゃんの言う通りだ!」


「え、エルちゃん......?!」


 唐突な殿下のエルちゃん呼びに心臓が跳ね上がる。


「おい......。 流石に調子に乗りすぎだ」


 いきなり私を軽々しく呼んだ殿下にイラついたのか、兄様はそう言って小さくため息を吐いてから、殿下のおでこを軽く爪で弾いた。


「あイタァ!」


 殿下はそう情けない悲鳴をあげると、兄様から離れた......。



「——ンンッ! 見苦しいところ見せたね、失礼」


 その数秒後、殿下は咳払いをすると顔つきが変わる。


「エルアリア嬢、先程は不躾な呼び方をしてしまって悪かったね」


 先程までの様子とは打って変わって、私の知っているキッチリとしたアスク殿下に戻っていた。


「あ、いえ。 気にしないでください」


 まぁ......。 正直、ちゃん呼びも悪くなかった。


「そうだ、ジークには会えたかな? さっき、エルアリア嬢の事を話したんだけど」


「あ、はい」


 そう言えば、私の話をアスク殿下から聞いたとか言ってたっけな。

 お陰で手合わせが出来たし、感謝しなければ。


「は? なに、エルのこと話したの?」


 横にいた兄様が聞き捨てならんと言った様子で前に出た。


「いやほら、前からよく妹が英雄に憧れて剣術頑張ってるって聞いてたからさ、ジークと話が合うかもなって思って話したんだけど......。 マズかった?」


 なるほど、それでジーク殿下は私に興味を持って話しかけてきたのか。

 漸く合点がいった。


「マズくはないけど......。 まぁ、あまりトラブルには巻き込むなよ」


 兄様はどこか怖い顔でアスク殿下を睨みつけた。


「......そうだな、悪い。 アイツに友達が出来ればって思ったんだけど、相手を間違えたかもな」


 そう言って、深刻な表情を浮かべるアスク殿下。


 兄様は私とジーク殿下を会わせたくなかったのだろうか?

 アスク殿下もそれに理解を示している様子だけど......。



 個人的には知り合えて良かったと思っている。

 今後も機会があれば是非手合わせしてもらいたいくらいだ。


「エル様とジーク殿下、仲良さそうでしたよ?」


 そんな私の気持ちを代弁するかのようにセラがそう口を開くと、アスク殿下の表情が明るくなる。


「そうか、なら良かった......。 さて、僕はこの辺で失礼するよ。 三人で話してるところに割り込んじゃったみたいだしね。 あとは楽しくやってくれ」


 アスク殿下はそう言うと、そそくさとこの場を離れて言ってしまった。


「はぁ......ようやく嵐が去った。 そんじゃ、僕も向こう行くから、何かあったら声掛けて」


 去り行く殿下の背中を見て、ため息を吐いた兄様はそう言ってまた会場の窓際に戻って行った。


 そうして、残された私とセラは、たった今起きた出来事をクスクスと笑って、それからパーティーの終わりまで二人で雑談をして過ごした。

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