異世界バスツアー87「お城のコンセプトを決めよう!」
✩*: . ✩これまでのあらすじ✩. :*✩
翼の生えた変な人が仲間になった。
✩*: . ✩これからのあらすじ✩. :*✩
翼の生えた変な人プロデュースによる新生魔王城建設が始まる。
✩。:•.¸.;".✩• 本編 •✩.";.¸.•˚。✩
「ということでさぁ、天まで届く塔にして、みんなで上から落ちようよ」
「却下」
いつもの臨時本部(ボロ小屋)で新生魔王城のコンセプトを固める会議が行われていたが、あるべき魔王城の姿についてコンセンサスが取れずにいた。
ため息をついた魔王が呆れたような声を出す。
「だから、遊戯目的だって言ってるだろ」
「というかさぁ、そもそも遊戯ってナニ?」
「……む」
クランツの質問に、魔王は返答につまってしまう。
誰も何も言わなくて沈んだような雰囲気になってしまったボロ小屋。
しかしそこへ、普段から空気をあまり読まない新経営陣が立ち上がる。
新経営陣は「これまでエンターテイメントで商売してきた我々が解説しましょう!」と力強く主張した。
いや、あんまりできてねーじゃん、という魔王の呟きはどこかに流れていった。
とりあえずその日は、別室でクランツに対する新経営陣によるエンタメレクチャーが行われた。
✩。:•.¸.;".✩次の日✩.";.¸.•˚。✩
「魔王城を人型に変形させてぇ! 邪神と戦うってのはどうだ!」
「却下」
いつもの臨時本部(ボロ小屋)で新生魔王城のコンセプトを固める会議が行われていたが、あるべき魔王城の姿が巨大ロボになりつつあった。
魔王は呆れたような声を出す。
「変形は無理だろ」
「いや、可能だって! 昨日そういう絵を見たし!」
「絵……?」
魔王が新経営陣に話を聞いてみると、レクチャーの一環で某ロボットアニメを見たという。
「アニメじゃねーか!」
「ピンチになったら魔王城2と魔王城3とで究極合体だ!」
「増やしてんじゃねーよ!」
会議が紛糾しているその時、臨時本部(ボロ小屋)の窓を外から叩く音がした。
中にいる人たちが窓を見ると、窓の外にエルダードラゴンの顔が見える。
ついに源泉を掘り当てたドラゴンは、お役御免になって魔界に帰ってきていた。
「おっ、ドラちゃんじゃーん。久しぶり!」
クランツは臨時本部から出てドラゴンとハイタッチした。
「どしたん、こんなところに。え? ドラちゃんも一味なの?」
ドラゴンは身振り手振りを合わせてクランツにいろいろと話している。
「え、ドラちゃん向こうのことに詳しいの? 教えて教えて!」
エルダードラゴンはなんだか誇らしげに胸を張っている。
お前そんなに詳しくないだろ……と魔王は呟いたが、その声は基礎工事の音に紛れてどこかに流れ去るのであった。
✩。:•.¸.;".✩次の日✩.";.¸.•˚。✩
「まず魔王城を3分ゆでます」
「なんて?」
いつもの臨時本部(ボロ小屋)で新生魔王城のコンセプトを固める会議が行われていたが、あるべき魔王城は下ごしらえとして湯通しされそうになっていた。
魔王は呆れたような声を出す。
「何言ってんのおまえ」
「いや、向こうだとさあ、人間をお湯でゆでる施設が人気だっていうじゃん」
「……もしかして温泉のことか? 温泉はそういうところでは……いやそういうところなのか……?」
魔王が考え込んでいる最中にも、クランツは黒い羽をパタパタさせながらマイペースなプレゼンを続けている。
「ゆでた後はそのまま加熱して蒸気で蒸します」
「……サウナのつもりかもしれんが、それ調理だから」
「蒸した後は冷凍して整えます」
「ととのうってそういうことじゃねーから!」
「整えたのがこちらになります」
そう言ってクランツは、四角い形をした何かが乗っている小皿を机の上に置いた。
魔王は頭上に疑問符をいくつも浮かべている。
「……何これ?」
「向こうに温泉饅頭ってあるらしいじゃん。だから温泉魔王城」
「……どういうこと?」
「どういうことって……おみやげ?」
「じゃあ今までしてたのは城の話じゃなくておみやげの話ってこと? ばかじゃねーの!」
興奮する魔王をまあまあとなだめながら、クランツは小皿を魔王の方に差し出した。
「さっそくだけど、試食して感想聞かせてよ」
「試食……? 大丈夫なのか?」
「ばっちりだよ、ゴーレム君もおいしいって言ってたし!」
「おげえええ!」
うっかり口に入れてしまった魔王は、口内に広がる土の味と香りに嘔吐するのであった。




