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バスツアー会社の異世界破綻記  作者:
テーマパークを作ろう!編
85/106

異世界バスツアー85「どんな建物にするか考えましょう!」

✩*: . ✩これまでのあらすじ✩. :*✩

 魔王城跡を占拠して作業の邪魔になっていた幽霊は、地元の古老の活躍により撃退された。

 さっそくゴーレムとスケルトンによる基礎工事が再開。

 疲れを知らないゴーレムとスケルトンに24時間働かせていたら、ゴーレムマスターと死霊術士が過労で倒れるのであった。


✩*: . ✩これからのあらすじ✩. :*✩

 労働環境に重大な欠陥が判明したので改善することになり、5日働いたのちに2日休むというルーティーンが採用された。

 過労で倒れるものがいなくなり、効率は劇的に向上した。

 その様子を見ていた魔王は、新経営陣に「それで、どんな建物にするんだ?」と尋ねる。

 新経営陣は「えっ?」と答えた。

 魔王は「えっ?」と応じるのであった。



✩。:•.¸.;".✩• 本編 •✩.";.¸.•˚。✩

 見切り発車を極めつつある新経営陣は、何のプランもないまま基礎工事をぼーっと眺めていたことが判明した。

 慌てた魔王は「魔王城シーランド」の構想を尋ねたが、「なんかいい感じ」以上のことを聞き出すことができなかった。

 憤慨した魔王は、もうこうなったら我がやる! と言い出して現場監督から魔王城観光地化プロジェクトのリーダーに就任、プロジェクトはリスタートするのであった。


「それで、どうしよう!」


 幼児の姿をした魔王の声が、魔王城跡地のそばに設置された臨時本部(ボロ小屋)の中に響き渡る。

 再出発したプロジェクトの第一回会議が粛々と開かれていた。

 新経営陣は「なんかいい感じで」と真剣な顔で言っている。ご両親は「がんばれ~」と励まし、エルダードラゴンは魔力で投影された映像の向こうで黙々と穴を掘っている。旧経営陣は「今日も取り調べ❤」というメッセージのあと連絡が途絶えた。


「話にならん! サーザ!」

「お側に……」


 適切な現状判断の元、メンバーに見切りをつけた魔王は影の中にいる側近を呼び出した。


「なんかいい感じの考えはないか!」

「ええ……」


 魔王の影から現れた黒ずくめの存在は、無茶ぶりをうけて引いている。

 しかし、今こそ忠誠心を見せる時、と考えた黒くて細い存在は考え考え声を出した。


「その、クランツ様にお話しを聞いてみては……」

「は? クランツ? あのバカに?」

「いや、あの、クランツ様は色々なものをお作りになりますし、かなり前ですが、大きな建物を建てていましたので……」


 影の言葉にしばらく考え込んでいた魔王は、「この際、藁にでも頼ってみるか……」と呟くのであった。



 魔王城跡地から平原と山を一つ越えたところにある森の中。

 着地したグリフォンから降りた魔王は、気乗りのしなさそうな表情で森を眺める。

 地面に映る影から、黒い蛇のような細長くて黒いものが伸びてきた。


「魔王様、どうかされましたか」

「……いや、さっさと用事を終わらせよう」


 魔王はとことこと森の中へ歩いていく。

 しばらく進むと、木々が途絶えたような開けた場所にたどり着いた。

 でかい砂の山が眼前にそびえている。


「……ここ、だよな。アイツの家」

「は、そのはず、でございます」


 魔王たちが大変に違和感のある光景を唖然としながら眺めていると、砂の山の中から何かが這い出してきた。


「ペッペッ、何回食べてもマズいな」


 唾を吐いて体についた砂をはらっているのは、黒い髪が目を隠している不審な人物。

 黒い翼についた砂もパタパタと落としている。

 魔王の何やってんだコイツ的な視線に気づいた有翼人は魔王を見た。


「んん……? 何だこのチビは」

「相変わらず失礼な奴だなお前は」

「ん? んん? お前スタンか。ずいぶん痩せたな」

「魔王と呼べ。転生したんだよ」

「転生! お前死んだのか! 葬式には呼べって言っただろ」

「誰が呼ぶかボケ!」


 レベルのやや低い応酬に、魔王の影から生えている蛇はおろおろしながら仲裁に挑む。


「あの、お二人ともどうか落ち着いて」

「お、ヒモじゃん、久しぶり」

「誰がヒモか!」

「お前が落ち着け」


 ひとしきり騒いだあと、ようやく3人は落ち着いて話を始めた。


「それで何しに来たん?」


 黒髪に隠れた目からは興味津々の気配がうかがえる。

 魔王は長いため息の後、口を開いた。


「お前、城の設計とかできる?」

「城? 楽勝だよ。ちょっと前にも作ったし」

「えっ、本当か。見せてくれ」

「ほらあれ」


 そう言ってクランツは砂の山を指さした。

 魔王は砂の山を眺めたあと、クランツを見て、また砂の山を見た。


「何言ってんのお前」

「いやいや、ちょっと前までは城だったんだよ。砂を一粒一粒積み上げて作った城だったんだけど、この間なんか灰色のでかい玉がぶつかってさあ」

「お、おう」


 心当たりのある魔王はあいまいにごまかすことにした。

 咳払いを何回かしたあと、クランツに顔を向ける。


「実は、魔王城を建て直すことになってな……力を貸してほしい」

「いいよ」

「……軽いな」

「俺とお前の仲じゃーん」


 クランツの口の端は吊り上がり、どこか悪魔の笑みを思わせる。

 魔王は「なんか悪い予感がするなあ」と思った。



 一方その頃、旧経営陣は魔界から持ち込んだ金塊を税関に没収された後、追徴課税をくらうのであった。

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