異世界バスツアー82「土地の再開発をしましょう!」
✩*: . ✩これまでのあらすじ✩. :*✩
魔王城周辺の土地から発見された契約書の解読しようとしたら、邪神の封印が解けちゃってさあ大変。
魔界の大地が揺れ始めて不穏な雰囲気になったので、新経営陣は魔王城観光地化プロジェクト会社「魔王城シーランド」の幹部に緊急招集をかける。
しかし、旧経営陣とエルダードラゴンはすでに動きを封じられていた。
残る幹部は魔王のご両親のみ。
ご両親は新経営陣の頼みをうけて、魔王を連れて魔界へとやってきた。
魔王は配下に指示をして、邪神との戦いに備える。
そして現れた邪神は、灰色の球体という姿をしていた。
邪神は、ぶつかって崩れた魔王城の壁の一部をくわえて「遅刻遅刻ぅー!」と言いながらどこかにある角に向かって走っていくのであった。
✩*: . ✩これからのあらすじ✩. :*✩
どこかの次元にある学校に向かって走り出した邪神。
そのあとに残されたのは、半壊しちゃった魔王城。
魔王城観光地化プロジェクトは思わぬ困難に見舞われることになった。
まずは瓦礫多めの魔王城をどうするか。
更地にするか、普通に修復するか、思い切って大規模リフォームしてしまうか。
さっそく魔王城シーランドの幹部会議が開かれた。
新経営陣、旧経営陣(護送中に脱走)、魔王のご両親(魔王は崩れた魔王城前で放心中)、エルダードラゴン(源泉予定地前からリモート)が意見を戦わせる。
「それでは会議を始めます」
「車運転してたら検問があってさあ」
「このお茶おいしい。どこで売ってるの?」
(モニターの向こうで一生懸命穴を掘っている)
会議の方針としては、一旦更地にすることが決定するのであった。
✩。:•.¸.;".✩• 本編 •✩.";.¸.•˚。✩
半壊した魔王城前に人々が集まっている。
魔王城きれいさっぱりイベントが開催されようとしていた。
実行犯として、有休をとって駆け付けたエルダードラゴンが、これまでのストレスを解消しようと張り切って炎を吐く準備をしている。
幼児の姿をした魔王は魔王城の城門前で、崩れかけた城を見上げている。
「このまま醜い姿をさらすよりは、きれいさっぱり無くなった方がいいだろう」
魔王は魔王城の城門前に、魔界の花で作られた花束をそっと地面に置いた。
「今まで世話になった……さらばだ」
それだけ言うと、静かに魔王城から離れていく。
歩く先にいるのは、やる気満々のエルダードラゴン。
「世話をかける……やってくれ」
長年の友人であるエルダードラゴンに短くそれだけ告げて、魔王は城に背を向けたまま離れていく。
エルダードラゴンは顔を両手で叩いて気合を入れて、大きく息を吸い込んだ。
膨大な魔力をこめた炎が口の端から漏れだしている。
エルダードラゴンの口が大きく開き、圧倒的な炎の奔流が流れ出した。
炎は大気を貫き、魔王城に到達すると全てを消滅させながら通り過ぎていく。
後に残るのは、えぐられた大地。
その魔王城跡の地面に突如光の模様が現れた。
魔王城が建っていた範囲をなぞるように円形の光の線が走っていく。
それを見たエルダードラゴンが両手を口元にあてておろおろしていた。
魔王が振り向くと、光の線は地面に複雑な模様を描いている。
「複式連立大規模魔法陣……? また“神”だと……! サーザ!」
「……はっ」
魔王の影の中から声がする。
「親衛隊を呼べ! すぐにだ!」
「御意!」
何かは影の中に沈んでいった。
魔王城跡の魔法陣はさらに輝きを増していく。
そして天に向かって伸びる光は棒のように大地に直立して、柱の形をとった。
光が消えると黒色の柱が大地に屹立している。
上部に瞳がひとつ開き、振動をはじめた。
「こいつは、邪神の時の……! 古老を呼べ!」
魔王の言葉に、魔王城消滅をかぶりつきで見学していた地元の古老が進み出た。
「おい、奴の言葉はわかるか!」
「おお、魔王様。確かにあれは古くから伝わるゆらゆら言葉でございますれば、翻訳も可能でございます」
「ならば頼む!」
「お任せを」
黒い柱が振動して、古老がブルブル震えた。
「おお、過ちを犯した者よ、悔い改めよ、悔い改めよ」
黒い柱は振動して、古老がプルプル震えた。
「お前たちが壊したのは、金の城ですか? それとも銀の城ですか?」
「なんか聞いたことあるなあ!」
「魔王様、どうお答えになりますか」
「いやもうこれどうすればいいんだろうね! というか我の城は金でも銀でもないわ!」
「わかりました」
古老がピクンピクンと跳ねた。黒い柱が振動した。
「正直者のお前らには金の城をあげましょう、だそうです」
「いらんわ!」
魔王の言葉と同時に、黒い柱は地面に埋まるように消えて、そのあと金の魔王城が突然出現。
次の瞬間、自重で金の城は潰れてよくわからない塊になってしまうのであった。




