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バスツアー会社の異世界破綻記  作者:
異世界にバスで旅行しよう!編
76/106

異世界バスツアー76「ダイヤの惑星」

✩*: . ✩これまでのあらすじ✩. :*✩

 ネットワークビジネスにお金をつぎ込んで会社ぴんち。

 危急存亡のとき、ということで緊急会議が招集される。

 会議ではそうそうたるメンバーが一堂に会したが、誰一人として危機感を抱いていないという危機的状況。

 なんとなく金が要るということを理解した旧経営陣が、任せろと言って飛び出していった。

 金がいっぱいあるぞ! と旧経営陣が連絡してきたので、金のつかみ取りツアー開始。

 問題が発覚したのでツアー中止。

 金の像になってた旧経営陣の救助のついでに、金塊をいくつか持って帰ってもらうのであった。


✩*: . ✩これからのあらすじ✩. :*✩

 金に触れると金になる世界から救助された金の像の旧経営陣。

 適切な処置により復活したが、金塊を「とったどー!」と言いながら触れて再び金の像。

 扱いづらく危険なので、金塊は元の世界に廃棄した。

 会社の危機は何も解決しないまま、時間だけは経過していく。

 魔王のご両親が、宝石がいっぱいあるといいんじゃない? ということを言ったら、再び復活した旧経営陣がまた走り出した。

 任せておけと言いながら。



✩。:•.¸.;".✩• 本編 •✩.";.¸.•˚。✩

「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」


 笑顔のバスガイドが、ほぼ満席の乗客に向けてマイクで喋っている。

 全員似たような格好の乗客たちは何もしゃべらず、窓の外の風景も一顧だにしない。


「これより当バスはダイヤモンドつかみ取りツアーに参ります」


 バスガイドの言葉に、社内の空気が張り詰める。

 最前列に座っている、白髪交じりの髪をオールバックにした男性が片手を上げた。

 周辺の乗客たちが立ち上がり、黒い背広の胸元から拳銃を取り出してバスガイドに向ける。


「わ」


 バスガイドは両手を上げた。

 最前列で黒のスリーピースに身を包んだ男性は、上げていた片手を下ろし、バスガイドの方に視線を送る。


「お嬢さん……金は見逃せたんだけどね。ダイヤはそういう訳にもいかなくてね」

「は、はあ……ダイヤ関係の方ですか?」


 最前列でゆったりと座っている男性は、足を組んで右手であごの下をさすっている。


「ダイヤの価格が下がるのはちょっと困る関係の方さ」

「はあ……」

「そういう訳でね、我々の知らない大量のダイヤに存在してもらっては困るんだ」


 男性の表情が剣呑なものに変わる。


「そのダイヤの採掘所は我々の管理下とする。ああ、これは交渉ではないから気をつけてくれ」

「……本社と協議をしたいのですが、よろしいでしょうか」

「それはかまわない。可能なら平和的に終わりたいからね」


 バスガイドは無線機に向かって何かを話している。

 いくつかのやり取りの後、バスガイドは男性に向き直る。


「会社としては全然OKとのことです。そもそも所有権も無いそうなので」


 男性の眉間に少しだけしわが寄る。


「所有権が無い……? その採掘所はどこにあるんだ?」

「木星中心部です」

「なんて?」


 男性の頭上に「?」が表示された。


「木星のコア部分です」

「なんで?」

「はい、ダイヤモンドは高温高圧の条件下で生成されるというのはご存じかとおもいますが、木星の中心部はその条件にぴったりでして」


 男性の背後にいた黒いスーツの男が耳打ちする。


「あの、執行官、こいつ大丈夫なのでしょうか」

「それは俺も思うが……潜入させたエージェントによると、金塊や金の像を入手しているのは確かだから、何らかの手段を持っているのは間違いないはず……」

「ハッタリ、という可能性は」

「あるかもな」


 男性はバスガイドに向き直った。


「とりあえず、そこに案内してもらおうか」

「わかりました。それでは特殊スーツをお配りするので、皆様着用をお願いします」


 そう言ってバスガイドは潜水服に似たスーツを配りだした。

 男性はそれを広げてみる。


「これは?」

「はい、木星の環境に適応するために、魔王様のご協力をいただきまして、何十もの防護結界を張り巡らせた特殊スーツです」

「なんて?」


 男性の頭上に「?」が表示された。


「えーと、着てないと死ぬスーツです」

「…………」


 背後の男が耳打ちする。


「あの、執行官、どうしますか」

「よくわからんが、なんか悪い予感がするから着ておこう」


 乗客たちはぶつくさ言いながら全員特殊スーツを着込んだ。


「それでは木星中心部に向かいます。魔王様によると、スーツの耐久は30秒が限界とのことですので、手早くつかみ取りをお願いします」


 乗客全員よくわかってないまま、バスはトンネルに入っていった。

 1分くらいで帰って来た。

 ズタボロのバスはトンネルを出た瞬間にタイヤが外れて転がって停止。


 よろよろと降りてきたのは、ボロ布になった黒のスリーピース(?)を着た、白髪交じりのざんばら髪の男性。死線を超えてきたその表情は険しい。

 その後についてきたのは、やっぱりボロボロの配下たち。


「執行官……すごかったッスね」

「そうだな……ダイヤモンドの雨なんて初めて見たよ。死ぬかと思ったな」

「そうッスね……それで、これ、どうしましょうか」

「いや、無理だろ……これ」


 ダイヤ関係の人たちは入院したあと地元に帰っていくのであった。

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