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バスツアー会社の異世界破綻記  作者:
異世界にバスで旅行しよう!編
74/106

異世界バスツアー74「ネットワーク世界」

✩*: . ✩これまでのあらすじ✩. :*✩

 慎重でもない、考え無しでもない道を模索した新経営陣がたどり着いたのは、両極端から距離をおいた『そこそこ』の道であった。

 いい感じにそこそこの企画を考えていた新経営陣のもとに、深く物事を考えたりする習慣のない旧経営陣が退院してきた。

 新経営陣の話を聞いた旧経営陣は「そこそこ? まかせておけ!」という感じで飛び出していく。

 しばらくして帰って来た旧経営陣が見つけた、そこそこの世界に客を連れて行くツアーを開催したら、到着寸前にそこが地獄の底の底だということがバレて中止になるのであった。


✩*: . ✩これからのあらすじ✩. :*✩

 ギリギリいけるんじゃないかと思っていたツアーが、余裕のアウトだったことで自分たちの感覚が一般から乖離しているのではないかと疑念をもった新経営陣。

 客商売としてこれは少しばかり致命的なのではないか、そんな懸念をもった新経営陣は旧経営陣に相談してみる。

 しかし旧経営陣には一般的な感覚がわからぬ。旧経営陣は、会社の元役員たちである。旅行を企画し、刑務所で遊んで暮して来た。

 そこで、古い知り合いのいとこの妹の先輩の兄の弟の後輩の兄のいとこに相談してみたら、ビジネスパーソン向けのセミナーを紹介されてしまう。

 テーマは「次世代の世界標準はネットワークビジネス!」

 とりあえず、そこで売ってた覇権確実という触れ込みのワードプロセッサ(ネット対応)を、ひとつ50万で3個ほど購入してみた。

 新経営陣は「これが次世代ネットワーク……!」とダイヤルアップで繋がった世界に感動するのであった。



✩。:•.¸.;".✩• 本編 •✩.";.¸.•˚。✩

「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」


 笑顔のバスガイドが、ほぼ満席の乗客に向けてマイクで喋っている。

 乗客たちは楽しそうにおしゃべりしたり、窓の外を流れる風景を楽しんだりしていた。


「これより当バスはネットワーク世界に参ります」


 バスガイドの言葉に、乗客たちは「おおー」と期待に満ちた声を上げた。

 金色のショートボブの乗客が「広告にはインターネットとは関係ないってあったけど、どういうネットなの?」とどこか怪訝な表情をしながら尋ねる。


「はい、今回の行き先は生物のネットワーク、具体的に言いますと“蜘蛛”のネットワークがある世界です」


 ショートボブの乗客は「蜘蛛、ねえ。まあ嫌いじゃないし」と薄く笑った。

 白髪交じりの短髪の乗客が「蜘蛛ですか……ちょっと苦手なんですよね」と不安そうな顔をしている。


「そこはご安心ください。この旅行が終わるころには、その苦手意識は消え去って、逆に感謝するようになるかもしれません」


 短髪の乗客は「は、はあ……」と気圧されたような声を出している。

 常連の乗客が「なんか悪い予感がするのう」と呟いた。

 ぼさぼさの茶髪によれよれのトレーナーを着た乗客が「蜘蛛、結構好きなんスよ。そこの蜘蛛の巣って乗れたりします?」と楽しそうに尋ねる。


「申し訳ありません。蜘蛛の巣に乗るイベントはございません。その代わり、蜘蛛の糸を使ったロープクライミングを楽しんでいただく予定です」


 茶髪の乗客は「そっスか。それはそれで楽しみッス」と笑った。

 常連の乗客が「猛烈に悪い予感がしてきたのう」と呟いている。

 冷たい目をした乗客が「その競技で有名な人はいますか」と抑揚のない声で尋ねた。


「はい、カンダタ選手ですね」


 乗客のみんなの顔に「?」が浮かんだあと、数名が何かに気づいた。

 常連の乗客は「はいはい蜘蛛の糸蜘蛛の糸。また地獄じゃねーか!」と叫びながらクレームを連打。

 冷たい目をした乗客が「客に何か恨みでもあるのですか」と冷たく尋ねている。


「いえ、幹部がネットワークビジネスにハマってまして。今回のテーマがネットワークなんです」


 常連の乗客はスマホに向かって「だからね、ネットワーク大喜利で客を地獄に連れて行くなっていってんの! それとなんで毎回地獄なの。あんたの会社、地獄にあるの? まあもうすぐ地獄行きだと思うけど」と攻撃力高めに攻めている。


 その後、群がるような乗客たちの抗議でツアー中止。


 一方その頃、新経営陣はネットワークビジネスに会社の資金を投入して地獄に行くのであった。

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