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バスツアー会社の異世界破綻記  作者:
異世界にバスで旅行しよう!編
65/106

異世界バスツアー65「海の世界」

✩*: . ✩これまでのあらすじ✩. :*✩

 ちょっとおかしくなっていた新経営陣はなんとか正気に戻った。

 そして相変わらずバスは夜になると淡い光をまとい、闇の中に幻想を浮かび上がらせている。

 これを利用したナイトツアーをやれば、ナウなヤングにバカうけするのではないか、そう思った新経営陣は退院してきたばかりの旧経営陣に意見を求めてみた。

 ゾンビっぽい顔色をした旧経営陣は、腹案がある、と言って不敵に笑う。

 その腹案に従ってナイトツアーをしたら、馬に乗って鎧を着た人たちの戦争に巻き込まれるのであった。


✩*: . ✩これからのあらすじ✩. :*✩

 ナイト(night)ナイト(knight)をかけたダジャレツアーは、カスハラに正当性を与えて終わった。

 腹案があるとか言って自信満々だった旧経営陣は馬にはねられて再入院。

 そして相変わらずぼんやり光ってるバス。

 とりあえず、これまでの惨状を振り返り、奇をてらわない王道的な企画でお客様のご機嫌をうかがってみる方針で検討を始めた。

 開始10分で行き詰ったので、遊びに来ていた魔王のご両親に意見を聞いてみる。


「イカ釣りなんてどうです」


 状況を開始せよ。



✩。:•.¸.;".✩• 本編 •✩.";.¸.•˚。✩

「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」


 笑顔のバスガイドが、ほぼ満席の乗客に向けてマイクで喋っている。

 乗客たちは楽しそうにおしゃべりしたり、窓の外を流れる風景を楽しんだりしていた。


「これより当バスはイカ釣りに参ります」


 バスガイドの言葉に、ポケットがいっぱいついた服を着ている乗客たちが歓声を上げた。

 2列目にいる日に焼けたおじさんが「それで今日はアンダーオーシアってところに釣りに行くってあったけど、どういうところなの?」とフランクに尋ねる。


「はい、海の世界アンダーオーシアは陸の存在しない、海洋だけの世界です」


 車内が凪の海のように静かになった。

 2列目のおじさんは「えーと、船に乗り換えるのカナ?」とおじさん構文を口から出力している。


「いえ、このバスのままです」


 車内の雰囲気が津波の前兆のように引いていった。

 2列目のおじさんは「え? 沈むの?」と素を出している。


「そこはご安心ください。魔王様のご協力で水上歩行の魔法をかけていただきましたので、沈むことはありません」


 2列目のそうなんだおじさん「そ、そうなんだ」

 常連の乗客が「なんか悪い予感がするのう」と呟いた。


「それでは皆様、アンダーオーシアに参ります!」


 得体のしれない不安を抱えたバスは暗いトンネルに入っていき、蒼く淡い光が見える出口から飛び出した。

 窓の外に広がるのはどこまでも広がる大洋。

 空には大きな月のようなものが浮かんで、世界を冷たく照らしている。

 柔らかい光を放つバスは波をかき分けながら海面を進む。


「皆様右手をご覧ください! 今日の本命であるイカです!」


 バスガイドの言葉に右を見た乗客たちの目に飛び込んできたのは、20メートルはありそうなイカが海面から飛び出しているところだった。

 そのあと暗い海面を叩きつけるように着水したイカ。

 水しぶきと波がバスにふりかかり、木の葉のようにゆらんゆらん。


 ゆらんゆらんしながら呆然としている乗客たち。

 常連の乗客は「はいはい、クラーケンクラーケン。じゃあ帰ろっか」と言いながらスマホでクレームを入れている。

 正気にもどった乗客たちが早急に帰るよう要求。

 イカ釣りツアーは一杯も釣らずに中止となるのであった。

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