異世界バスツアー59「今日はハロウィン」
✩*: . ✩これまでのあらすじ✩. :*✩
三回にわたって行われたドラゴン温泉ツアー。
成功か失敗かでいえば、とんでもない失敗続きでエルダードラゴンは落ち込んで実家に帰ってしまう。
その後ろ姿を見た新旧経営陣は「彼も我々の仲間だ」とか寝言を言い出して、本人の承諾なしに会社の役員にしてしまう。
落ち込んだ仲間を励ますために、ツアーを企画して実行するが、励ます対象が大雨で実家ごと土砂崩れで流されていたのでみんな避難するのであった。
✩*: . ✩これからのあらすじ✩. :*✩
成功か失敗かで言えば、普通あり得ないレベルの大失敗だったドラゴン励ますツアー。
魔王配下の精鋭で構成された救出部隊は、河口近くまで流されていたエルダードラゴンの救出に成功。
ドラゴンは平地でしばらく静養することになった。
新経営陣は「彼の戻る場所を守らないとな」とか言って、会社の発展のために新企画を考える会議を開始。
会議室で魔王のご両親に意見を聞いたら「今日はハロウィンですよ!」と藁人形に火をつけながらコメントされるのであった。
✩。:•.¸.;".✩• 本編 •✩.";.¸.•˚。✩
「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」
笑顔のバスガイドが、ほぼ満席の乗客に向けてマイクで喋っている。
乗客たちは楽しそうにおしゃべりしたり、窓の外を流れる風景を楽しんだりしていた。
「これより当バスはハロウィン仕様の魔界に参ります」
バスガイドの言葉に、様々な仮装をした乗客たちは「ウエーイ」とか言っている。
ゾンビっぽい格好をした2列目の乗客は「どんなイベントがあるんスか?」と楽しそうに尋ねた。
「はい、魔王様のご助力で、こちらの世界のハロウィンを出来るだけ再現していただきまして、様々なイベントを予定しております」
2列目の乗客は「そうッスか、たのしみっスね」と素直な感想を口にしている。
常連の乗客は「またなんも具体的なことを言っとらん……」と呟いた。
小悪魔っぽい格好をした4列目の乗客が「写真撮っても大丈夫ですかー?」とスマホを掲げながら質問している。
「はい、写真はどんどん撮っていただいて構いません」
4列目の乗客は「わあー、やった」とスマホの表面に指を滑らせながら喜んでいる。
常連の乗客が「なんか悪い予感がするのう」と呟いた。
「それではハロウィン魔界に参ります!」
ハロウィンへの期待で盛り上がるバスはトンネルへと踏み入り、音のない暗闇を抜けて魔界に抜ける。
そこは夜の広場だった。
中央に大きな焚火があり、周辺にはカブをくりぬいた中にろうそくが飾ってあるものがそこかしこに配置されている。
停車したバスの中で、バスガイドの声が響き渡る。
「それではイベント開始です! 皆様、撮影もどうぞ!」
バスガイドの言葉と同時に、バスの周りに小鬼や大鬼、幽霊みたいなのが集まって、木の枝や薪を次々と積み上げている。
普通の格好をしている最前列の乗客が「どんなイベントなんですか」と冷たく質問した。
「はい。えーと、資料によりますとテーマは死と再生で、まずは生贄の儀式を……生贄の儀式!?」
常連の乗客がスマホを片手に「中止ぃ!」と叫んだ。
木の枝とか薪の上から油をまかれていたバスはツアー中止を決定。
幽霊っぽいのが上から火種をまいてバス大炎上。
火だるまのバスはタイヤから砂煙を巻き上げながら緊急発進。
乗客たちは悲鳴を上げながらも写真や動画を撮り続けるという気合の入りよう。
少し焦げたバスはなんとか生贄0で帰ってくることができた。
あと、その様子をSNSにあげられたのでネット上でも大炎上。
広い範囲から幅広く怒られた結果、会社は倒産するのであった。




