異世界バスツアー5「剣と魔法の世界」
「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」
座席がほぼ埋まったバスの前方で、笑顔のバスガイドがマイクに喋っている。
無認可で運営したあげく、経営陣が取っ捕まって倒産した先代ツアー会社。執行猶予がついてさすがに反省した経営陣は、心を入れ替えたつもり申請を監督官庁に提出、認可降りたつもり新企画を始動させた。
オーソドックスな剣と魔法の異世界ツアー。
会社の命運はそれに託された。
「これより当バスは剣と魔法の異世界に向かいまして、様々な体験を皆様に経験していただきたいと思っております」
時々ガタゴトと振動するバス。
乗客は楽しそうにおしゃべりしたり、窓の外を眺めている。
「それでは、これより剣と魔法の異世界に参ります。皆様にはAK-47を配布しますので、付属のパンフレットで操作方法ご確認ください」
笑顔のバスガイドが、乗客一人一人になんか大きめの銃とA4の紙を一枚配った。
イリーガルな重量感に呆然とする乗客たち。
「当地で観光する際は、皆様自衛をお願いいたします」
その言葉に、一部の乗客が抗議の声を上げようとしたが、マイク越しのバスガイドの音声に遮られた。
「いよいよ剣と魔法の異世界です! 皆様お楽しみください!」
バスはトンネルに突入して、周囲から光が消えた。
そしてトンネルを抜けて、バスは光に包まれる。50のダメージ。
バスは炎に包まれた。51のダメージ。
氷の矢が降り注ぐ。48のダメージ。
「現在、剣と魔法の異世界は、剣と魔法が戦争中です」
乗客たちが周りを見ると、火とか雷とかが荒れ狂っている。
なんか金属っぽい嫌な音がしたので、乗客たちが前方を見ると剣の集団がバスに向かって突進してくるのが見えた。
バスは切りつけられた。17のダメージ。
バスは切りつけられた。15のダメージ。
かいしんのいちげき。145のダメージ。
「これはいけません。さあ皆様! 応戦してください!」
乗客たちは強く抗議して、早急な帰宅を要請。
竜巻が発生した。バスは178のダメージ。
「えっ、この先のラストダンジョン近くの村で小休憩の予定なのですが」
乗客たちはさらに強く抗議して、ツアーの中止を要請。
剣は踊るように切りつけてきた。7回あたり201のダメージ。
その後もいろいろあったが、ほうほうのていでバスは現実世界に帰還した。
バスが会社に戻ると同時に、監督官庁から認可について不許可と通達があり、銃刀法違反と合わせて経営陣は塀の向こうにジョブチェンジした。




