異世界バスツアー45「悪役令嬢世界その2」
✩*: . ✩これまでのあらすじ✩. :*✩
旧経営陣が獄中復帰して離脱。
負けない、投げ出さない、逃げ出さない新経営陣は諦めないことが大事、ということで駄目になりそうな会社を信じて次の企画を考えている。
これまでは失敗の方が多いので、ここは手堅い企画で地道に成功を重ねていこうということになった。
とりあえず魔王のご両親に最近の流行を聞いてみたら、俺Tueeeとかチートスキルとか返って来たので、そういう方向で企画を頑張るのであった。
✩*: . ✩これからのあらすじ✩. :*✩
お客様に俺Tueeeとかチートスキルとかを体験していただくツアーは、舞台に色々問題発生した挙句にサービス終了していたため大失敗に終わった。
原因について分析してみたところ、事前のリサーチが不足していたのではないかという結果が出てしまう。
そこで次回は、カジュアルに脱獄している旧経営陣に現地のチェックをお願いすることで対策とした。
そして肝心の次回ツアーについては、一度初心に帰ろうというコンセプトに立ち返ろうということになった。
「お客様に未知で鮮烈な体験を!」
その実現のため、魔王のご両親に最近の流行を聞いたら悪役令嬢とか言っている。
ということで、未知で鮮烈な悪役令嬢ツアーが開始されるのであった。
✩。:•.¸.;".✩• 本編 •✩.";.¸.•˚。✩
「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」
笑顔のバスガイドが、ほぼ満席の乗客に向けてマイクで喋っている。
乗客たちは楽しそうにおしゃべりしたり、窓の外を流れる風景を楽しんだりしていた。
「これより当バスは悪役令嬢世界に参ります」
乗客たちは「おおー」と期待を込めた声を上げる。
最前列の乗客は「どんな悪役令嬢なのですか?」と普通の質問をした。
「はい、第三王子と婚約している辺境伯の娘となっております」
最前列の乗客は、ほうほうという感じで頷いている。
2列目の乗客が「もしかして、婚約破棄ですか?」と少々不謹慎な質問をした。
「はい、事前の調査により婚約破棄のタイミングがわかりましたので、それにあわせて当地に到着する予定です」
2列目の乗客が興味津々という様子で目を輝かせている。
常連の乗客は「いい趣味ではないのう……」と渋い顔をした。
「それでは皆様、悪役令嬢世界に向かいます! 心の準備はよろしいですか!」
バスガイドの声と同時にバスはトンネルに入る。
乗客たちの期待と不安を乗せたバスはトンネルを抜けた。
ゆっくりと走るバスの前に広がるのは、緑色に波打つ草原だった。
空は青く澄みきっていて、太陽はほぼ真上から世界を明るく照らしている。
バスは大きな木が2本並んで立っている近くに停車した。
「皆様、ご覧ください。第三王子と悪役令嬢です」
バスガイドの言葉に、乗客たちがそれらを探すが影も形もない。
3列目の乗客が「あの、どこでしょうか……」と誰もが疑問に思ってる質問をした。
「はい、あちらの大きな木が第三王子で、隣の少し小ぶりな木が悪役令嬢です」
乗客たちはバスガイドの言葉を聞いた後、ゆっくりと2本の木に視線を移し、またバスガイドの方を見た。
最前列の乗客は「あの……木、なんですか?」と状況に理解を追いつかせようとしている。
「はい、この世界の知的生命体はいわゆる樹木でして」
乗客たちは呆然と、悪役令嬢(?)たちを眺めている。
太陽は少しずつ傾いていき、影が長く伸びていった。
空は茜色に染まろうとしている。
2列目の乗客が「今、何が起こっているのですか?」とそれはそう思うよね、という質問をした。
「はい、今第三王子が婚約破棄の“こ”のセリフを1年かけて言っているところです」
乗客たちが見守る中、第三王子の葉っぱは重なり離れてかすかな音を立てている。
3列目の乗客が「あの、いつ頃おわるのですか?」と決定的な質問をした。
「はい、300年後です」
ツアー中止。
長めのクレーム電話が会社に殺到するのであった。




