異世界バスツアー4「追放世界」
「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」
座席が半分くらい埋まったバスの前方で、笑顔のバスガイドがマイクに喋っている。
毎度おなじみ倒産した先代ツアー会社。新会社はさすがに監督官庁に目をつけられたので認可が下りなかった。そこで発想を転換して、無許可のモグリでいいじゃん! という将来に禍根を残す判断のもと、次代ツアー会社の新企画が始動していた。
「これより当バスは多種多様な異世界に向かいまして、様々な体験を皆様に経験していただきたいと思っております」
時々ガタゴトと振動するバス。
乗客は楽しそうにおしゃべりしたり、窓の外を眺めている。
「それでは、これより追放された異世界に参ります。皆様にはあらかじめ冤罪や誤解を配布しておりますので、お手元のカードで内容をご確認ください」
どういうことなのか、疑問顔の乗客たちが配られた袋をまさぐっていると、何か文字が書かれているカードが出てきた。
ある乗客のカードには「役に立たないスキルだと思われていた隠密スキルが最強だった」とあり、また別の乗客のカードには「回復役で敵を倒す役に立たないと思われていたが、実はフィジカル最強」、他の乗客のカードには「パーティリーダーの思い込みから犯罪を犯したと吹聴された」などの内容が書かれていた。
乗客たちがあらかた確認したのを視認したバスガイドが、笑顔でマイクに向かって口を開く。
「皆様、カードをご確認いただけたでしょうか。それでは私がどうして追放されたんだい? とお聞きしますので、聞かれた方は追放された主人公の気持ちでお答えください。はいそちらの方」
いきなり指名された乗客はビクッとした。
「どうして追放されたんだい?」
指名された乗客はしどろもどろになりながらカードの内容を読んだ。
「はい追放」
乗客の座っている座席が射出され、天井突き破って飛んで行く。
呆然とする乗客たちの視線の先で、パラシュートが開くのが見えた。
「では次にそちらの方」
唖然とする乗客たちの一人が指名され、ビクッとした。
「どうして追放されたんだい?」
青ざめた乗客は、頑張って情感をこめて読んでいたが、所々かんでしまった。
「はい追放」
やっぱり射出されて大空へ。
そういうデス大喜利を繰り返していたら誰もいなくなってツアー中止。
会社はガサ入れくらって関係者全員ブタ箱に放り込まれた。