異世界バスツアー31「狼煙」
✩*: . ✩これまでのあらすじ✩. :*✩
新会社にもしもの場合があった時に備えて開発されたオートマリー1号2号は沈黙した。
まさに緊急事態と言える状況に、最終的な奥の手として秘匿されていたオートマリー3号が起動する。
冷静にして冷酷な判断力と、あらゆる困難を乗り越えて人類存続という目的を達成するための実行力をそなえた最終兵器。
起動したオートマリー3号はあらゆる情報を分析して、最善と思われる行動を選んだ。
新会社の解体である。
✩*: . ✩これからのあらすじ✩. :*✩
いろいろとゴタゴタがあったのちに退院してきた新経営陣と魔王、脱獄した旧経営陣が見たものは、綺麗に手続きされてなくなっちゃった新会社だった。
それはそれでいつものことなので、新経営陣はいつものようにサクッと新会社を立ち上げようとする。
しかし、その時に新経営陣の胸に去来したのは、過去の会社が何をやっても最終的に潰れてしまう光景。
きちんと対策を立てなければ、また同じことになる――そのことに思いが至った新経営陣は、有識者に助言を仰ぐことにした。
ふさわしい人物を探していたところ、知り合いの友達のメル友から紹介された知人の配信によくスパチャしてる友達からブロックされてるコンサルタントを旧経営陣から紹介された。
そのコンサルタントは新経営陣の前で狼煙の元となる狼のうんこを手に熱弁する。
「インターネットはもう古い! これからは狼煙ネットワークです!」
「世界初の光通信!」
「無機質な画面ではなく、アナログな風景の温かみ!」
「厳選された狼のうんこを使用!」
「狼煙ネットワークを広げて、インターネットを駆逐しましょう!」
「今始めれば先行者利益は皆さんのもの!」
とりあえず新経営陣はひとつ20万の狼のうんこを50個購入するのであった。
✩。:•.¸.;".✩• 本編 •✩.";.¸.•˚。✩
「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」
笑顔のバスガイドが、ほぼ満席の乗客に向けてマイクで喋っている。
乗客たちは楽しそうにおしゃべりしたり、窓の外を流れる風景を楽しんだりしていた。
「これより当バスは獣人の世界に参りますが……その前に!」
にこやかな笑顔のバスガイドが、何かを押し出すような力強い声でマイクに向かって話している。
「皆様にとってもお得なチャンスをご紹介させていただこうと思います!」
乗客たちの顔に「?」が浮かんだ。
常連の乗客が「なんか悪い予感がするのう」と呟いている。
そういう乗客たちの疑問を置き去りにして、バスは公民館のような建物の前で停車した。
「さあ皆様、建物の中にお入りください!」
よくわからないまま乗客たちは建物の中に入る。
中にはパイプ椅子が並んでいて、前の方に折りたたみテーブルが置いてあった。
よくわからないまま、乗客たちは椅子に座っていく。
テーブルの向こうにバスガイドともう一人、なんか髪がぼさぼさに伸びた人形っぽい人が並んで立っていた。
「それでは狼煙ネットワーク説明会を開催させていただきます! こちらはアシスタントの元社長です!」
「私、元社長さん。今から後ろ暗いことをするの」
少しざわついた乗客を置き去りにして、バスガイドは声を張り上げる。
「今回ご紹介するのはこの、狼煙ネットワークの要である狼のうんこです!」
オートマリー1号が手になんか黒っぽいものを持っている。
「皆様には会員になっていただいてこれを購入したあと、新しい会員を勧誘して購入させた場合、10%のマージンを」
常連の乗客が「マルチ商法じゃねーか! 通報通報!」と言いながら携帯電話の表面をタップ&タップ。
複数の乗客がリアルタイムで会社と監督官庁と消費者生活センターに通報した結果、ツアーは強制中止。会社には業務停止処分が下った。
一方その頃、新経営陣はうんこをいっぱい抱えたまま、連絡の取れなくなったコンサルタントを探して右往左往するのであった。




