異世界バスツアー3「VRRPG世界」
「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」
所々空席のあるバスの前方で、笑顔のバスガイドがマイクに喋っている。
やっぱり倒産した先代ツアー会社。しかしその執念はただ終わることをよしとしなかった。名前はもちろん変えて三度目の正直、不死鳥のように蘇った不屈の次代ツアー会社の新企画が始動していた。
「これより当バスは多種多様な異世界に向かいまして、様々な体験を皆様に経験していただきたいと思っております」
時々ガタゴトと振動するバス。
乗客は楽しそうにおしゃべりしたり、窓の外を眺めている。
「それでは、これよりVRRPG異世界に参ります。皆様にはあらかじめVRゴーグルを配布しておりますので、お手元のパンフレットで操作方法をご確認ください」
乗客たちはゴソゴソと配られた袋の中をまさぐった後、白い厚紙でできたメガネっぽいフレームに赤と青のセロファンを貼ったVRゴーグルを取り出した。
乗客たちの半分は絶句。
もう半分は何これ? という顔でVRゴーグルを様々な角度から眺めている。
「当社の予算で提供できる最先端のVRゴーグルです」
乗客の一部が抗議の声を上げようとした時、バスがトンネルに入り周囲から光が消えた。
抗議の声は切っ掛けを失いしぼんでいく。
そしてバスはトンネルを抜けた。
「皆様、VRRPG異世界に到着いたしました。VRゴーグルを装着して、飛び出す3Dをお楽しみください」
窓の外では青と赤がフラッシュしている。
一部の乗客が気分の悪さを訴えだした。
「気持ちが悪くなったお客様は、席の前のエチケット袋をご利用ください」
乗客がエチケット袋を取り出すと、赤色と青色のセット。
気分悪いところに袋も飛び出してきたので、無駄に乗客の怒りを買った。
乗客たちは強く帰宅を主張する。
「おげえぇぇぇぇ!」
その声を受けとったバスガイドは、返事の代わりに飛び出すエチケット袋で今日の朝食と再会を果たしていた。
なすすべなくその様子を見ていた乗客のほぼ全員がもらいゲロ。
運転手もダメージを受けて、酔っぱらったような蛇行運転でなんとか帰還。
いつものように、ツアー会社は監督官庁からツッコミくらって潰れた。