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バスツアー会社の異世界破綻記  作者:
テーマパークを作ろう!編
105/106

異世界バスツアー105「異世界に旅立とう!」

✩*: . ✩これまでのあらすじ✩. :*✩

 顕現した異邦の神の周囲を世界樹で囲み、環境改変を阻止しながら戦闘中。

 旧経営陣の参戦で押され始めた異邦の神は、防御を固めて攻撃の一部を無効化し始めた。

 攻めあぐねる旧経営陣のリーダーは、臨時の幹部会議を開催して意見を募る。

 魔王のご両親の「世界をぶつけたら?」という意見に、魔王は考え込んでしまうのであった。


✩*: . ✩これからのあらすじ✩. :*✩

 顔を上げた魔王は新経営陣に尋ねる。


「ブラックホールに繋げられるか?」



✩。:•.¸.;".✩• 本編 •✩.";.¸.•˚。✩

 魔王の言葉に、新経営陣は手元に何かを確認したあと「今すぐ選択できる候補の世界がいくつかあります。どれも事象の地平面の外側なら位置の指定も可能です」と答えた。

 それを聞いた魔王はさらに質問をする。


「その、異世界門をヤツが通れるくらいに大きく出来るか?」


 新経営陣は困ったような顔をしながら「うーん、難しいですね」と唸っている。

 その様子をじっと見ていたゼオンが、笑いながら親指を立てた。


「はっはっは、それなら僕たちがやろう。なに、異世界門の本家本元に任せておけ」


 それを見てちょっと不安そうな顔をした魔王は、かぶりをふると新経営陣に尋ねる。


「正直わからんことが多いのでアレだが、実行に関して問題になりそうなことはあるか」


 新経営陣はスマホをながめながら「周辺が潮汐力で破壊される恐れがあるようですが、対象を超巨大ブラックホールにすることで解決できるみたいです。あとは放射線と尋常じゃない勢いで吸い込まれることでしょうか」と言っている。

 魔王はひとつの疑問を口にした。


「……なんでスマホが使えるんだ?」


 新経営陣はスマホを見ながら「あ、家のルーターを持ってきてるんです。LANケーブルは異世界門を通してて」とか言っている。

 魔王は気にしないことにした。


「ということは、実行する時にはヤツの周辺から避難する必要があるな」

「僕らは平気だよ。こう見えても神だからね」


 魔王は一瞬微妙な顔をしたが、すぐに真面目な表情に切り替えた。


「そういうことなら頼む」

「ああ、任せてくれ。じゃあちょっと剣を探しに行ってくる」

「……ちょっと待て」


 走り去ろうとしたゼオンを魔王は引き留めた。


「何だい?」

「すごい嫌な予感がするので聞きたくないが、本当に聞きたくないが……何故剣を探す?」

「何故って僕らは武器で異世界門を開いてい」

「うおおおおい!!」


 魔王は叫んだ。


「どうしたんだい突然」

「どうしたんだじゃなくてどうするんだよ! これでいけるって思った我がバカみたいじゃないかああああ!」


 魔王が地面に転がって手足をバタバタさせているその時、空に一条の光跡がまっすぐに伸びていた。

 流れ星のようなそれは、急激に高度を落として異邦の神に命中した。

 無効化できなかった因果は、異邦の神の表面を焦がし、内部に衝撃を与える。

 地面に落下するのは、異邦の神と……黒く焦げている右拳。


「……は?」


 だだをこねていた魔王は、地響きで我に返る。

 続いて白熱化した大剣が白く輝く軌跡を残しながら飛んできて異邦の神に命中した。


「……は?」

「あれ? 僕の剣が戻って来た。やっぱり日頃の行いなんだよ」


 ゼオンは剣を回収するために走り出した。

 クランツは手をかざして異邦の神の方角を見ている。


「魔界は丸かったんだねえ」

「……は?」


 さらにいくつかの右拳と、柄がへの字に曲がった大槌が異邦の神に命中した。

 前方でララベルがなんか叫んでいる。


「ほらやっぱり戻って来た! ブーメランなんだから当たり前よね!」

「いや、これはブーメランとは……いやブーメラン、なのか?……いやでも……うーん……まあいいか!」


 魔王は諦めた。


「もういい! 作戦開始! あいつら以外は世界樹の防壁の外へ退避! はい伝令!」

「御意!」


 魔王の影に黒く細いものが解けるように沈む。

 魔王は隣のクランツを見上げる。


「我たちも離れるぞ!」

「向こうでいつの間にか復活したドラちゃんが殴りまくってるけど」

「連れてこいー!」

「はーい」


 クランツは現場に向かって飛んで行く。

 魔王は逆方向に走りながら空間に映像を映した。


「準備はどうだ?」


 映像の向こうの新経営陣は「設定は完了しました。あとは先代待ちです」と言っている。


「よし、退避状況は?」

「完了まで湖を風が吹き抜ける程度かと。あとはクランツ様とエル様が少し遅れております」

「あいつらなら大丈夫か」


 走る魔王の前に、聖樹教会の教主リリアナと側近が立っている。


「おまえらも防壁の外に出ろ!」

「いったい何事……いや、わ、わかった」


 魔王の勢いに飲まれたリリアナたちも走り出す。


「防壁を対異邦の神から普通の防御魔法のようにできるか」

「できると言えばできるが……それでは異邦の神が」

「それはもういい。全魔力を防御に回してくれ」

「……わかった」


 魔王は空間映像を切り替える。

 白い歯が輝くゼオンが映っていた。


「そっちはどうだ」

「完全に守りを固めちゃったね。地面で動かないよ」

「そいつは好都合。いけるか?」

「いつでも」


 走る魔王たちは世界樹の防壁の外に出る。


「退避状況!」

「全員退避を確認いたしました」

「防壁頼む!」

「あいわかった!」


 リリアナが薄く緑色に光る。

 世界樹の防壁が緑色に変わっていく。

 魔王は新経営陣の映る空間に叫んだ。


「ヤツを因果地平の彼方に送ってやれ!」

「座標よし、空間固定、彼方解放、此方解放……接続……成功。後は頼みます、先代」



 触手を自らに幾重にも巻き付かせた異邦の神が地面にめり込んでいる。

 その四方に立つのは旧経営陣。


「開いたね」

「相変わらずスマートだ」

「今から拡張するのよね。ワクワクするわねトルメン❤」

「はあっ❤、はあっ❤」


 ゼオンが大剣を地面に突き刺した。


「それでは僕らツアー会社にふさわしい仕事を始めよう」


 シルヴァーは拳を大地に打ち付ける。


「ややカスハラ気味だが、客ならばきちんと送り届けるとも」


 ララベルは大槌を地面に叩きつける。


「厳選された旅行先よお❤、きっと気に入ってもらえるわ」


 トルメンは地面に横たわってビクンビクンしている。


 異邦の神の下に黒い穴が現れる。

 穴は広がりその上のものを一瞬で飲み込んだ。

 次の瞬間、黒い穴から伸びてきた触手が旧経営陣を掴んだ。


「おっと、往生際が悪いね」


 四角く切り取られたような映像の向こうでは、魔王や新経営陣が何かを言っている。

 ゼオンは白い歯を見せて笑った。


「何、心配はいらない。我ら渡界の神。あまたの世界を渡る者……ちょっと行ってくる」


 旧経営陣は引きずり込まれて。

 穴は、閉じた。

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