異世界バスツアー102「戦いましょう!」
✩*: . ✩これまでのあらすじ✩. :*✩
世界樹を崇める団体のトップがやってきて失神。
目を覚ましたトップは臨時本部でパイプ椅子に座り、ここに来た理由を語り始める。
異邦の神という存在がいること。
それが大地の奥深くで眠っていること。
世界樹は異邦の神と戦うために作られた兵器であること。
傷ついた世界樹は回復のため根を地下深くに伸ばすこと。
その根が異邦の神に接触すると覚醒してしまう可能性があること。
だからこれ以上世界樹を傷つけるのをやめてほしい、と頼む団体のトップ。
魔王と設計担当は、とりあえず工事の中止を決定するが、なんか地震とかが起こるのであった。
✩*: . ✩これからのあらすじ✩. :*✩
異邦の神の復活の予兆をコンプリート。
世界樹周辺の地面を突き破り、次々と空へ向かう赤銅色の大蛇のようなものたち。
それを見て「ンゴォー!」とか言って失神する聖樹教会の教主リリアナ。
魔王は総員退避を指示したあと、幹部連中とともに残る。
魔界を揺るがす戦いが始まる。
✩。:•.¸.;".✩• 本編 •✩.";.¸.•˚。✩
「サーザ、避難状況は!」
「はっ、魔王様と幹部の皆様以外の避難、完了しております」
「よし、次は術式構築を手伝え」
「御意!」
魔王の足元から線のような影が地面を走っていく。
見上げた魔王に目に映るのは、世界樹の枝から少し離れた空に浮かぶ、赤銅色の大蛇が絡まり球体のようになった異形の存在。
「あれが……」
「失神しておる場合ではない!」
「うわびっくりした」
突然起き上がったリリアナに魔王はびっくりした。
「なぜじゃ、なぜいきなり復活した!」
「……えーと、種入りのうんこで深い穴を掘ったから?」
「何を言っておるのじゃ!」
「そうだよね」
魔王は説明を諦めた。
リリアナは立ち上がり、側に駆け寄って来た緑色のローブの人に指示を飛ばす。
「そんなことより、世界樹の起動準備じゃ! 急げ!」
緑色のローブの人が世界樹へ走っていく。
空に浮かぶ異邦の神は、その触手のひとつを振り回した。
世界樹の枝と葉がごっそりと消えていく。
「おい、抵抗とかしないのか!」
「あの世界樹は待機中じゃ! 起動しておらんのに無理じゃ!」
魔王の言葉にリリアナは焦燥を隠そうともしない。
異邦の神の触手がゆっくりと持ち上がる。
持ち上がった触手に大きな何かがぶつかって跳ね上げた。
「ドラちゃんがいきなり飛んでった!」
クランツが駆け寄ってくる。
魔王とリリアナが見上げる先には、空中で異邦の神に対峙するエルダードラゴン。
襲い来る触手を尻尾で弾き、火炎の息吹を異邦の神に浴びせていた。
しかし段々とドラゴンの動きが鈍り始める。
「いかん! 奴は毒の空気を出しておる! 近寄ってはダメじゃ!」
触手に跳ね飛ばされたドラゴンが、途中で態勢を立て直す。
その眼は異邦の神をとらえたまま。
その様子を見ていたクランツの黒髪の下にある両目が開かれる。
「魔力振動……! 竜言語魔法だ! みんな、耳をふさいで!」
「久しぶりにキレたなあいつ!」
魔王は右手を上げる。
「分かたれた世界よ、全ての繋がりを断て!」
魔王の詠唱と同時にエルダードラゴンの口が大きく開き、目に見えない巨大な振動が放たれる。
衝撃波が地面を揺らし、世界樹が大きく揺れた。
土埃が舞う中、魔王が咳き込んでいる。
「ごほっ、げほっ、我の『分断』が一発で壊れたか。相変わらず規格外だが……」
エルダードラゴンは地面に落下して地響きを立てた。
異邦の神はあちこち欠けた状態で、触手を下に垂らしている。
「致命傷には程遠い、か」
「リリアナ教主! 準備完了しました!」
緑色のローブを着た人がリリアナの元に駆け寄ってくる。
「よし。わが声に応えよ、太古の****、われは大いなる*****の代理人。ここに雫を、始まりの一滴を!」
リリアナのかざした手から光る雫が地面に落ちる。
光る雫は軌跡となって地面を走り、世界樹に繋がった。
柔らかい光が世界樹を覆う。
「起動完了じゃ。防壁展開!」
ドラゴンが倒れている場所の近くに根のようなものが地面から突き出した。
その根を中心に青く透き通った壁が広がっていく。
魔王は影に向かって指示を出す。
「サーザ、ゴーレムとスケルトンであいつを回収しろ」
「御意」
黒い蛇のようなものは影に消えた。
複数のゴーレムとスケルトンがドラゴンの元に向かう。
突然、蒼い壁が砕け散った。
ゴーレムとスケルトンの体が崩れていく。
荒ぶる異邦の神が触手を振り回している。
「おい、どうなってる」
「む、無理じゃ。わしらの大陸なら150本の世界樹で抑えられたかもしれんが、1本では無理じゃ……」
リリアナの目が絶望に染まりつつある。
異邦の神の下にある大地が黒く濁り始めた。
伸びた触手が魔王の元へうなりをあげて近づく。
「来るな!」
重い衝撃とともに触手が弾かれる。
「我の『拒絶』でも長くはもちそうにないか……」
魔王は背後を見た。
両親、新経営陣、旧経営陣がいる。
「……おまえらは元の世界へ戻れ。邪魔だ」
両親、新経営陣、旧経営陣が驚いた顔をしている。
「これは魔界の問題だ。おまえらには関係ない。帰れ」
新経営陣が旧経営陣を見る。
うなずいた4人の旧経営陣はゆっくりと歩き出した。
「我々は仲間じゃないか。水臭いなあ」
「そういう問題ではない、死にたくなかったら……」
魔王が旧経営陣のひとりを見て固まった。
クランツは両目を開いたまま目を離さない。
「魔力……? いや違う……これは」
4人は魔王を追い越し、『拒絶』の外へ踏み出した。
うなりを上げる触手が襲い掛かる。
切断された触手が地面に転がった。
1人の手には背丈ほどの大剣が握られている。
「本来はこんなことはしてはいけないのだけれど」
ちぎれとんだ触手が地面に跳ねる。
1人の握られた拳からは煙があがっている。
「野良の神が相手ならやむなしといえるでしょう」
潰された触手はもう動かない。
1人は大槌を担いでいる。
「なにより仲間を見捨てるのはダメダメよ」
触手にぶっ叩かれまくっている1人は鼻血を吹きながら笑っている。
「我ら、異世界を渡り歩く渡界神、仲間のために助太刀、あんっ❤」
口血も吹きながら笑っているのであった。




