異世界バスツアー10「ループ世界」
「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」
明るい雰囲気の車内。
笑顔のバスガイドが、満席の乗客に向けてマイクで喋っている。
いろいろあって存在ごと消滅したツアー会社だったが、模範囚だったので仮釈放された旧経営陣が新しい会社を立ち上げた。
心を入れ替えた旧経営陣による渾身の新企画が始まる。
たまにガタゴトとゆれるバスの中で、乗客たちは楽しそうにおしゃべりしたり、窓の外を指さしたりしていた。
その様子を見ていたバスガイドが笑顔でマイクを口元に持ってくる。
「これより当バスは、時間ループ異世界に参りまして、過去に戻ってやり直しを皆様に体験していただく予定です」
騒がしかった車内が静かになった。
前の方に座っている乗客が、申し込んだ時のパンフレットを取り出して、内容と違うのではないかと質問した。
バスガイドはそれを見てにっこりと答える。
「はい、当初はポストアポカリプスシーズンと題しまして、滅びに瀕した異世界を訪問して、滅亡を体験する予定でしたがその世界が滅んじゃいまして」
乗客たちは唖然としている。
「そこで急遽代わりの企画として、ループ異世界ということになりましたので皆様にはやり直し異世界を楽しんでいただきたく存じます」
このあいだ退院したばかりの常連の乗客が、なんか悪い予感がするのう、と呟いた。
バスガイドは瞳孔がやや開き気味の笑顔でマイクに喋る。
「それではループ世界に突入します! 皆様心の準備はできましたか?」
できてない、やっぱやめて、という乗客たちの声を置き去りにしてバスはトンネルに入っていった。
周囲が真っ暗になって乗客たちも黙り込んでしばらくした後、トンネルを抜けたバスは光に包まれる。
「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」
明るい雰囲気の車内。
笑顔のバスガイドが、満席の乗客に向けてマイクで喋っている。




