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一月後、伯父の次男でルビアの従兄弟にあたるダドリーが村に来た。
ダドリーは二十七歳で、日頃から体を動かしていないのはそのひょろっとした体型からも推測できた。
ダドリーはこの家と畑は自分のものだと思っていたが、そのくせ畑仕事をすることはなく、家事は祖母に任せ、薪割りさえも面倒がった。しばしば村に近い街に行っては昼間から酒場で酒を飲んでいて、伯父が持て余してこの村に送り込んだのは容易に想像がついた。
村の者の噂から、ダドリーは事業に失敗し、嫁に逃げられ、毎日飲んだくれているのを親に見咎められてここに来たらしいことはわかったが、その厄介払いはルビアに不幸をもたらした。
まだ十代半ばで「見える者」である従妹のルビアがいれば畑は何とかなる。
「見える者」をこき使い、利益を求める古い考えをダドリーはルビアに押し付けた。
畑の世話はルビア一人に任せ、施肥や水やりもしない。時にルビアが他の畑に手伝いに行くと、村から出る配当だけでなくその畑の主に高い手間賃を要求した。村の決まりにない金の要求に当然相手は支払いを拒否し、ルビアは手伝いに来なくていいと言われた。
相互の手伝いが成り立たなくなり、他の「見える者」はルビアの家の畑には足を向けなくなった。
「見える者」同士で話をしながら草抜きをするのはルビアは嫌いではなかった。しかしそんな機会はなくなり、自分の家の畑だけを一人で管理する生活。学校に行くのさえダドリーに嫌みを言われ、ルビアは次第に孤立していくのを感じていた。
七割でいい。完璧にするとそれが当たり前だと思われる。
ルビアは祖父がいた頃は自分の家の畑は特に丁寧に作業をしてきたが、ふと祖父の言葉を思い出し、その年は多めに赤い花を残すようにした。
種の収穫時に他の畑より赤い花が混じっているのを見て、ダドリーは怒り、ルビアを突き飛ばした。
「こんな手抜きの仕事をしやがって!」
「『見える』お手伝いが来られなくなったのは自分のせいでしょ」
自分のせいだと言われ、うすうす自分でも自覚があったダドリーだったが、それ故に逆上し、ルビアに拳を向け、倒れたところを踏みつけた。祖母が止めても気が済むまで怒りをルビアにぶつけ、ルビアが気を失ってぐったりと動かなくなったのを見て、
「おまえが悪いんだからな」
と自分の罪から逃れるだけの捨て台詞を残し、逃げるように自分の部屋に閉じこもった。
医者が来て、しばらく安静にするように言われた。幸い命に関わる怪我はなかったが、熱と痛みで数日寝こみ、その間、畑の赤い花を摘む人がいないまま花びらは散り、できた種は赤と青両方の花が混じり込んでいた。
遠くで畑の様子を見ていた村人達は、あの家は長くはもたないだろうと噂し合った。
薬草の商人もまた買い取る前に畑の花を見ていて、ルビアの家の薬草は例年の六割の値段しかつかなかった。ルビアの家の薬草には黄色の紐がくくりつけられていた。品質が劣ると見込まれる薬草につけられる色だ。恐らく市場でも大した値段はつかないだろう。
それでも何もしなくても金が入るのだ。ダドリーは満足していた。