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ブルーローズ〜奇跡、夢叶う

ここ、天空城アストラル。

今まさに私たちは最終決戦として魔王ゴールドと対峙をしていた。


石化して私は1度元の世界の同じ自分軸の自分として封印されていたが、友達の吉田のサポートもあってこの世界で復活をすることが出来た。


「全く……しつこいな、アイリス。」

「あんたもよ、いちいちやり方がいつも陰湿なのよ。」

「口が減らないな……失せろ。」


ゴールドは強大な火球を放つが、これを光の斬撃が一気に切り裂いた。


「口が減らないのは、あんたたぜゴールドさんよ。

なんかあんたと喋ってくると無性に腹が立ってくるぜ。」


エレノアが私の前に立つ。

相変わらず頼もしい後ろ姿をしている。

灼熱の炎のような赤い髪をしていて、それでいて長く美しい太刀を携えている。


「……貴様もこの世界に迷い込んでいたのか。」

「らしいな、でも今の俺は吉田としての記憶もねえ、剣聖エレノアでしかないんだ。」


ゴールドは闇の魔力で剣を作り出し、切りかかる。

それをエレノアが弾き返し振り払う。

私もそれに次ぐように魔法での援護をしていく。


状況は拮抗するのみだった。


「……アイリス、聞こえるか。」


エレノアの声が聞こえる。

これは、耳ではなく脳に響くような超音波に近いコミュニケーションだった。

恐らく魔力を介した会話であろう。

私も真似て魔力に意思を乗せる。


「聞こえるわ、どう?倒せそう?」

「正直、俺一人だと厳しい……今のところ攻防は互角だけど長期戦に持ち込まれると完全に不利でしかない。」

「同感ね、私も魔力解放は使ってるからある程度長く戦えるけど相手はゴールド……正直時飛ばしも聞かないから手の付けようがないわ。」


「仲間を解放できるか?」


そう、今私たちの仲間は石化されている。

解放とはそれを指す。


「ちょっと時間はかかるかも……。」

「戦力が厳しいのなら、こちらは数で勝負だ。

俺らなら1+1でも3でも4でも力をあげることが出来るはずだ、頼めるか。」

「了解!」


私はまずはヴァルトハルトに向けて走る。

魔力を介してヴァルトハルトの意思を手繰り寄せる。

暗い世界が見えた。


「ヴァルトハルト、ヴァルトハルトー!」

私は暗い世界で声を荒らげる。

するとその先にヴァルトハルトが体育座りで目を閉じている。


「その声……アイリスか?」

「ヴァルトハルト、ここから出よう!」

「もう、無理かもしれない。私はゴールドにたくさんの拷問を意志の世界で受けてきたんだ……わからなくなった。」

「大丈夫よ、私たちがいる!それに気付かせてくれたのはいつもあなただったわ!行こう!」

「行って……いいのか?」


ヴァルトハルトの声は弱々しかった。

なんて酷いことをしたのだろう。


「行こう!例え足元が沼でもそれも進むべき道なのだから!」


私は、ヴァルトハルトの手を引き暗闇を駆け抜ける。

気がついたらヴァルトハルトの石化は吹き飛んでいた。

「……ありがとう、アイリス。」

目の前には真っ直ぐ見つめるヴァルトハルトが微笑んでいた。


次にはネヴァロス……、そしてティナも同じように助ける。


気がついたらみんながゴールドに切りかかっていた。

「ほう、我が呪いを吹き飛ばすとは……しかしいくら増えたとて、この俺に勝つことは出来ない!」


エレノアが切り、ヴァルトハルトが突き、ネヴァロスが蹴り上げ、ティナが舞う。

そして、私は魔力の弾丸をぶちまけた。


しかし、それでもゴールドに決定打はなかった。

どんだけ体力があるのだろうと恐れ戦く。


なにか無いか……なにか……。

今までの戦いを思い出す。

このように攻撃が当たってもほとんど効かない敵には……

「強力な一撃で吹き飛ばす。」


それしか無かった。

そう、前のヴァルドリウスという魔竜を倒した時にわたしはみんなから力をかりた魔力砲を胸に叩きつけたのだ。


ちょっとやそっとではない……全てを吹き飛ばす力が必要なのだ。

私一人では到底撃つことは難しい。


「みんな聞いて、私はやつに魔力砲を撃つ。」


みんなは納得をするがそれと同時に不安の顔を見せる。


「それは分かりますが……あれはみんなの力を借りて時間をかけて撃つもの……どうしますか?」

「世界中にテレパシーをながして、世界中から魔力を借りるわ。」

「世界中!?あんたやっぱりクレイジーで最高だわ!でもどうやって食い止めるの?あの魔王を。」


そう、力に関しては世界から力を借りるとする……しかし次に時間をどう担保するかが課題となる。


しかし、それに関しても勝算はある。

「ヴァルトハルトとエレノアで食い止めて欲しい。

ヴァルトハルトの絶対防御とエレノアのアルティメットソードでやればある程度の戦いになるはず。」


そう、ヴァルトハルトは防御に関してはほとんど攻撃を通さない。スキルを駆使すれば無敵なのだ。

そして、剣聖へと覚醒したエレノア。

彼の剣技は魔力砲を除くと最高の攻撃となる。

それ以上の適任は居ないはずだ。


「僕らはどうすればいい?」


ネヴァロスとティナに関しては手持ち無沙汰かと思うが彼らにもきちんと役割がある。


「ネヴァロスは魔力を集める補助をしてもらって、ティナには全体に舞でサポートしてほしいわ。絶対に……ゴールドを倒しましょ。」


「「「「おう!」」」」


「どうやら……小賢しいことを考えているみたいだが何度やっても通用しないぞ。」


しかし、状況としては先程よりは好転していた。

やつは闇の衣はエレノアが切り裂いたため、圧倒的な実力差は埋まっていた。


エレノアが何度も斬りかかり、やつにもダメージが通る。

ゴールドは反撃すると、前にヴァルトハルトが盾で防いで無効化をする。


私も魔力を1点に集中をさせる。

魔力砲は撃つまでに約10分ほどかかる。

果たして……間に合うか。


今のところ状況は若干優勢ではあるものの、それは時間の問題だった。


「はあ!」

「うわあああ!」


ゴールドが連撃をすると、スキルが急遽解除されヴァルトハルトがダメージを負う。


「大丈夫か!鎧野郎!」

「大丈夫だ!それより自分の心配をしろ!」

「おいおい……よそ見してるなんて気楽でいいなぁ。」


エレノアの後ろにゴールドが立ち回りアームハンマーでエレノアを吹き飛ばす。

やばい、第一戦線が破られそう!


いけないいけない、集中をしなきゃ……やつをたおすにはまだ全然貯めなきゃ行けない。


「ははは、お前たち合体してた方が良かったんじゃないか?もうおしまいか。」

「よそ見してるのはあなたの方よ。」


ナイフのキラージャグリングが相手を翻弄し、さらに後ろから必殺の斬撃をティナが打ち付ける!


相手は応戦をすると、回復を済ませたヴァルトハルトが何とかティナを守った。


「いいわ、いいかんじよ!ティナ!」

「サンキュー、踊り子さん。面目無い。」

「気にしないで、来るわよ。」


「いい加減にしろ!この虫けら共!」


ダメージの蓄積でイライラしたゴールドはさらにスピードを上げ3人と戦う。なんとか連携を保って戦うが3人の体力もみるみる失っていって体はボロボロだった。


「もう少し……あとちょっとで溜まるのに……!」


わたしは魔力を込める事しか出来ないのがもどかしかった。みるみる仲間が弱っていくのが見殺しみたいじゃない!


焦る私の肩を、ネヴァロスはポンっと腕を置いた。


「ネヴァロス?」

「大丈夫、焦る必要は無いよ。大事なのはきちんと自分の役割をこなすこと、余計な事をして失敗する方が迷惑をかけるもんだよ。」


ネヴァロスは相変わらず少年のような笑顔でそう言った。

わたしは冷静になる。


「ありがとう、絶対決めるわよ。」


私とネヴァロスはさらに魔力を1点に集中させて巨大な魔力砲を完成させた。


「な!?なんだあの魔力……!」


やっとゴールドはこちらの作戦に気づき、その作戦が決定打になることを瞬時に理解した。

焦りを見せてこちらに襲いかかってくる。


しかし


「とぅおりゃああああ!」


エレノアがやつの胴にアルティメットソードを仕掛けると、相手はダメージを受けて動きを止める。


「やれえええええええ!!!」

「いっけええええええ!」


エレノアの掛け声とともに私は魔力砲をぶちまける。


「こんなもの……こんなものおおおお!」


光の閃光がやつを吹き飛ばし眩い光が私たちを包んでいった。


☆☆


アストラルの城が跡形もなくなくなっている。

魔力砲で一気に更地になっていった。


「……あー!めっちゃつかれた!」


体から一気に魔力を放出したせいで私は地面に倒れ込む、みんなも一気に地面に倒れ込んだ。


「やった……のよね?」


ヴァルドリウスはこれで跡形もなく消え去ったのだ。

倒してないわけが無い。


「恐らくな、だがまだ油断は禁物だ……相手はあのゴールドだからな。」


エレノアだけが笑ってなかった。

そう、何か嫌な予感がするのだ。

なにかまだ残ってるような、なにか不気味な予感が。

それは、的中したのだ。


「はは……はははは。」


瓦礫の中からゴールドが腕を吹き飛ばされて笑っていた。


私たちはボロボロながら臨戦態勢にはいる。

気持ちはまだ負けてないのだ。


「見事だったよ……舐めてかかったからだな。

どうやら俺も全てを賭けないと殺せないらしい。」


やつの表情は青筋が浮かんでおり、怒りの表情そのものだった。

突如背筋がゾッとする。


「私も全てを捨てよう。」


やつは力を貯めると闇の渦が彼を包み込み、中から20メートルの幾つも腕のある異形の怪物へと姿を変えていった。

これはやつの心そのものを体現したような傲慢で破壊的な姿をしている。

もはや奴にはコミュニケーションが取れそうな様子も一切なかった。


私はただ呆然としていた。

やつの恐ろしい姿に、恐れ戦くことしかできなかった。

その瞬間……突如、魔獣が紫の光をはなったかとおもったらエレノアが飛び込んできた。


エレノアは吹き飛ばされる。


「エレノアーーーー!」


また、死なせてしまった。

彼には助けられてばかりだ……。


「アイリス……、よかった。お前さんが無事でよ……。もう、戦えないみたいだ。」


エレノアは右腕が無くなっていた。

意識も朦朧としていてとても無惨な姿にされていた。


「まずは1人目だな……ははは。」


魔獣から声が聞こえる。

「ゴールド……、意識があるのね。なんてことするのよ。」

「はは……おまえのせいだぞ。お前が弱いから、仲間を守ることが出来ない。いつだってそうだ……お前は弱い。」


魔獣は次に光出したら次はヴァルトハルトとティナに向けて光線を撃つ。


「きゃあああ!」

「うわあああ!」


2人は反応しきれず吹き飛ばされた。

2人とも立てないくらいうずくまっていた。


「お前は俺からなにかを守ることは出来ない。これからも俺に奪われ続けるんだよ。俺はゴールドの名は捨て、これからは大魔王ゴルディアースと名乗ろう。新しい誕生を祝うがいい。」


すると、ゴルディアースはエレノアの腹を踏みつけた。

エレノアの腹から下がメキメキと音を立てる。


「だが……そのためにもこいつらは邪魔だ……。」

「うわあああああ!!!」

「やめて!やめてよ!」


エレノアは悲鳴をあげる、今にも死にそうなほどだった。

「大丈夫……だ……、おまえなら……。」


徐々にエレノアの焦点が無くなりつつあった。

死体もボロボロになるともう蘇生することさえ出来なくなる……。

残虐行為は繰り返された。


その後も無数の光線が仲間たちを襲いかかりほとんど立ち上がるものはいなかった。


「ははは、愉快だな……お前はその程度だよ。」


私は……許せなかった。

やつも許せなかったけど、仲間を助けることの出来ない自分に。

魔力も尽きてしまった。攻撃手段もなかった。

でも、何故か諦めることは出来なかった。

そう、私はまだ人の形を保っていたから。


「私も……全てを捨てるわ。あなたと同じように……あなたを決着できるのは私しかいないもの。」


私の頭から輪っかが現れる。

そして、4つの羽が私を包み込み、私のドレスはさらに青みを増して足元には無数の青い薔薇が咲いていた。


「ここにはたくさんの声が聞こえる。神様だった人、天使だった人たちの声が聞こえる。」

「お前……もう人には戻れないぞ。」

「いい、私は決着をつけるわ。」


私はやつに手を当てると、一気に吹き飛んで言った。


「ばかな!なんて力だ!」


ゴルディアースは瓦礫の下にうずくまっている。

私はエレノアの傷を一気に癒していく。


「アイリス……どうしたんだその姿。」

「私にも分からない……でもきっと大丈夫。」


私は傷ついた仲間にもエネルギーを与えると徐々に傷が癒えていった。


「アイリス……その姿は教典のケルビムに似てますね。」

「ケルビム?」

「そう、神を守る智天使のことを指します。ミカエルやガブリエルなどの地位の高い天使たちと同じ姿をしています。」


そうか……私は天地雷鳴士から天使になったのね。

だから体が軽いんだわ。


「これからどうなるか……分からないけど、私の願いは1つよ。みんなを守る……それだけ。」


私の最後の願いは……奇跡は、みんなを失わないことだった。

そのためなら……なんにでもなる。


「ふざけるなあああ!」


ゴルディアースは光の壁を私に押し付けるが……わたしがそれを向こうかしてしまう。

そして、一瞬私の手は光出し、やつを切り裂いてしまった。


「なんてパワーなの!?あの化け物を一瞬で……。」

「あれが……天使の力。」


私は、ある歌を思い出していた。

昔入院していた時……、全てを否定された時、わたしが孤独と感じた時に聞いた歌。

翼をください。

自由を求めて、空に思いを馳せるあの歌が私の脳裏を過っていた。


「ゴルディアース……いえ、金澤。今までありがとう。

私はあなたを決して許すことは出来なかった。

……でもね、わたしはひとつの結論にたどり着いたの。

あなたに壊されて、私には何も無いと思っていた。」


「やめろ……これ以上近づくな。」

「私はあなたを許します。だって気づいたんだもの、私はあなたの物差しでは測れないくらい素敵な人間なのだから。」


「やめろ、やめてくれ。」

「結局話し合わないまま終わりになった私たち……だからこそ決着をつけます。終わりにしましょ、今までありがとう。私はこれから幸せに生きるわ。」


7つの光の玉を手の上に浮かべて、それを握ると手から溢れんばかりの光が溢れ出す。

私はそれを構えた。


「さようなら、私の愛した人。」


私は涙とともに彼にそれを放つと……叫びをあげる前に光とともに包まれてしまった。


化け物は徐々に姿をちぢめ……見慣れた中年が力なくたっていた。


「済まなかった、あーちゃん。全てを捨てた俺は時期に灰になるだろう。俺は君を力で支配しないと失いそうで怖かった。それだけだったんだ。」


残酷かつ、憎むべき男からは……驚くほど意外な懺悔の言葉が出た。

私は、最後に彼を強く抱き締めた。


「しってるわよ。」

「あはは……そうだったな。」


男は灰になり、今度こそ居なくなった。


☆☆


私は瓦礫の道をエレノアと歩いていた。


「終わったな……全部。」

「そうね…、何もかもが終わったわよ。」

「もう、天使にはならないのか?」

「どうやら力は無くなったみたいよ。」

「そうか……。」


二人の間で沈黙がする。


そう、私は頭の中であることを思い出していた。

全てが終わったら告白の答えを出すと。

私は、悩んでいた。


「ねえ、エレノア。」

「あん?なんだ?」

「私、あなたが好きで大事よ。もっと昔から一緒にいたような……そんな大事な存在だと思ってる。」

「おい、それは振る前の前振りじゃねえか……。」


「あ、いやそうじゃなくて。」

「違うのか?」

「私……あなたが。」


その時だった。


「おーい!そろそろ行きますよー。」

「なんか、天空城が静かに崩れかけるの!やばいわ!」

「え、そうなの?」


確かにティナの言う通り……地面は今にも崩れかけていた。

「やばいわね!走るわよ、エレノア!」

「おおい、どうなんだ!応えはどうなるだ!」


私はちょっとあっかんべーをして船に走り出す。

それに対して声を荒らげ追いかけるエレノア。


もちろん、私の中で答えはきまっていた。

次の島に着くまではきちんと心にしまっておこう。


「みんな、いくわよ!急いで出航よー!」


船は白鯨に連れられて進んでいく。

私たちは虹と空の海原と太陽に照らされて、真っ直ぐ海へと進んで行った。


私がエレノアにどう話したのかは……また別のお話。


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