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ブルーローズ〜叶わぬ願い

私たちはアストラルの天空城を進んだ。


五大魔の最後の一人のザルヴァードと死闘を繰り広げ、無事に乗り越えることが出来たのだ。


今は最後の門を超え、遂にゴールドと戦うことになる。


「それにしても…ここまで来るとほとんど魔物が居ないんだな。魔王さんは自分の実力に自信を持っているのか、それとも人望がないのかどっちなんだろうな。」


エレノアが不意にそう呟く。

どんな時でも緊張感を和らげる彼の言動に私たちは救われるものがあった。


「多分、両方だと思うわ。彼は部下にも嫌われていたもの。」

「あ、そっか…、あんた魔王の元カノだって言ってたな。」

「やめてよ、やな事思い出すから。」

「わりいわりい、悪気は無いんだ。」


エレノアはノンデリなだけで悪意はない人間だ。

(ヴァルトハルトに対しては例外だけれど。)


「…ねえ、なんか恐ろしいほど不気味じゃない?それにしたって敵がいなすぎるわ。」

「なにかあるかもしれないから警戒は怠らない方がいいかもね。」


今の所、真っ直ぐ大理石のみちがつづいていた。

そして壁には中世の西洋のような神をあがめる肖像画が何枚も並んでいて、美術館のようだった。


そして、さらに上へと進む。


「…まって。」


突如ネヴァロスがみんなの足を止めた。


「次の部屋から、嫌な気配を感じるんだ。

やつはいるかもしれない…準備はいい?」


みんなで頷くと一斉に扉を開け、臨戦態勢でみんなは構えた。


すると、部屋には玉座があり壁には干支の石像が置いてあった。

やはり部屋も白を基調としたデザインとなっている。


そして、玉座にやつはいた。

「アイリスよ、よく揃いも揃って現れたな。」

「ゴールド…。」


玉座の前に立ち上がり背は3メートルほどの高さとなっていた。装飾の施されたローブを纏い、体には暗いオーラがまとっている。

私は…体が震えていた。


「どうした?体が震えてるぞ?こわいのか?」


どうしても足がすくんでしまう。

殴られた事、怒鳴られた事、人間否定をされて死にたくなった事、何もかもが思い出してしまって憎しみよりも恐怖感が勝っていた。


「はははは!滑稽だな、こんなに沢山仲間を巻き込んでいながら肝心なところで日和ってるだなんて…仲間もさぞ迷惑だろう。」


そう、こんな感じで言葉巧みに私を追い詰めるのだ。

でもわたしは支配されていたから思考はすぐに変えられていた。

仲間に対しての罪悪感が体を蝕んで、戦意大きく消失させる。

「どうだ?この戦いをやめて、もう一度俺の女になるのなら仲間を殺すことは辞めてやる。命乞いのチャンスだぞ。」


もう私にはやつを倒すということは考えられないでいた。

「アイリス…。」


不意に後ろにいるエレノアから声をかけられる。


「ごめんなさい、こんな時に私…。」

「アイリス!こっち向けよ。」


ふと、強めに言われ後ろを振り向く。

すると、そこにはエレノアの指があり、おでこにデコピンされて私はのけ反ってしまった。


「いったーーー!ちょ、なにすんのよ!馬鹿なの?空気読めないの?」


どうしてこんな大事な時にイタズラするのか理解に苦しんでたらエレノアは親指を立て、仲間をくいっと揺らして指さした。


「バカか!てめぇこんなペテン師の言葉に惑わされやがって!ここに集まったやつらは少なからずお前を信じて沢山の困難を乗り越えたヤツらだ!

自信を持て、何度人を助けた!それがお前の歩んできた道じゃねえのか!」


私はハッとした。

そうだ…、わたしはこれまでみんなを巻き込んで沢山の街や人々を救って感謝をされてきた。

それに間違いは無いはずだった。

それに比べればこいつとの2年間なんてたったの一瞬だったはずだ。


みんなも笑顔で頷いている。

そう、迷惑そうだなんてとても思ってる顔じゃなかった。


「エレノア…みんなありがとう。私最高の仲間を持った、もう迷わないわ。」

「ちっ、もう言葉じゃ支配できないか。」


私たちは体制を整え、ゴールドとの戦いを開始する。

私は時飛ばしをして、ティナとのキラージャグリングとタイミングを合わせ、氷の矢の弾幕をしかける。


時は動き出し、相手に直撃をする。


「あたった!」


しかし、相手はほとんどダメージを食らう様子はなかった。

でも動きを止めない。


「息を合わせろ!鎧野郎!」

「しくじるなよ、ビーツ野郎!」


ヴァルトハルトとエレノアは息を合わせ斬撃をクロスさせ、相手に必殺の一撃を与える。

これならあのザルヴァードも致命傷の攻撃だから流石にダメージが当たるはず…!

しかし、この攻撃を受けてもピンピンしていた。


「アイリス、僕と攻撃を合わせよう。」


ネヴァロスは竜化すると、一気に炎のブレスをためる。私は氷魔法を最大化して同時に放出をすると、炎の臨界点と氷の絶対零度があわさり、相手を分子レベルで消失される…はずだった。


「うそ…でしょ。」

「なるほど、ノーザリスの時よりも遥かに強くなってきてはいるみたいだな。だが、この私には通用しない。」


ゴールドは全くの無傷…ほとんどダメージをおっていなかった。

そんな…あらゆる手段で攻撃したのにほとんどダメージを受けていない。

どうしてなのよ。


そういえば、あいつは黒いオーラをまとっている。

まさか…。


「私は闇だ。闇はいかなるものも無効化してしまう。

そして、闇を力として込めるとここまで強くなる。」


やつは闇の力を放出し、闇の弾幕をしかけるととてつもない威力で私たちを蝕んで行った。


「いてぇ!なんだこりゃ。」

「私…ワイルドセンスを使ったのにダメージが…。」


「…なんだ、口だけでほとんど大したことは無いな。」


相手はつまらなさそうだった。

せめて、あの闇の衣だけでも何とか出来れば…。


私は全ての魔力を放出し、極大魔法を相手にぶつけた。

後先も考えない…全てを吹き飛ばす魔法。


「大したものだ。これだけの魔力を使えるようになるとは…!」


相手も極大の闇魔法で応戦をする…、お互いの魔法はぶつかり合い真ん中の位置で相殺される。


「ぐううう…吹き飛べええ…。」

「残念だな、この程度では俺には勝てない。ふんっ!」


私の魔法が切れ、目の前にはエネルギーの巨大なビームが私を目掛けて打たれる…しまった。


「はあっ!」


ヴァルトハルトが仁王立ちをしてビームを全て受ける。

確か、女神の加護を使ってビームを無効化しているはずだが鎧が徐々に崩れ始めてきた!


「ヴァルトハルトー!」

「まさか…全ての攻撃を無効化する私の力をここまで追い詰めるとは…。」


状況は不利そのものて私たちは地面に膝を着いていた…。

勝ち目が無さすぎる。


「もう終わりか、ただ殺すのも面白くないな。そうだ。」


ゴールドは指パッチンをするとネヴァロスが石化をしてしまった。


「な!?嘘…!」

「きゃあああー!」


また、指パッチンをするとティナが石化をしてしまう。

嘘…そんな終わり方って。


「ただ殺すのも癪だから…石として永遠に生きてもらう。動けない煩わしさを感じてもらいながらな…ははは!」


また、指パッチンをすると、次はヴァルトハルトが石化をしてしまい、私たちはあとはエレノアを残していた。


「アイリス!これを!」


突如として、エレノアが何かを投げて、私はキャッチをした…これは、首飾り?


「大丈夫だ、お前なら何とかできる!頼ん…。」


エレノアがニッコリと微笑んだ瞬間…石化をしてしまった。

私は悲鳴をあげようとした瞬間…体が石化をして、意識は遠のいてしまった。


私たちは全滅してしまったのだ。


☆☆


「…かさん!」


ん…、なんだろう。誰か呼んでいる。

男の人の声だ。


「あやかさん!あやかさん!起きてください!」

「ああもう!なによ!」


私は目覚めの悪い声で体を動かす。

場所は知らない天井で、私の友人の吉田が肩をポンポンと叩いていた。


「…ここは?」

「何言ってるんですか、ここは館山のホテルですよ。」

「…なんか、すごく長い夢を見ていた気がする。」


私は…何をしていたんだろう。

確か…海の岬でぼうっとしていて…。


そういえば、私は辛くなった時に吉田によく電話をかけては相談をしてもらった。

きっと私を心配して長野県から車を飛ばして来てくれていたのだろう。


「あんた…また花持ってきたのね。」


吉田は私と遊んでくれる日は必ず花を差し出すのだ。

本当に変わった性格の男である。

掴みどころがなく、何を考えているのか分からない。


そういえば以前は、ひまわりをくれたんだっけ…。

思い出すと頭がズキズキする。


「これはブルーローズ…、花言葉は不可能だったり、叶わない夢…幻想などと言われています。」


「そうなのね、どうしてそんな名前なの?」


吉田はすこし戸惑うと…こめかみに指を着いてしどろもどろにはなす。


「えっと…たしか…、薔薇って青い色素が出来ないんですよ。だから伝説上でしか存在してないからそういった花言葉になるんですよね。」


「でも今目の前にあるじゃない。」

「そう、この花言葉は変わったんですよ。

人の手で不可能を可能にしたんです。この世にこの花が咲いてから新しい花言葉になった。」

「奇跡…夢叶うと。」


またこめかみがズキズキと痛くなった。

大事なものを忘れてる気がする。

そう、とても壮大で…楽しかったものを。


「それはそうと…そろそろチェックアウトです。あやかさんの地元で恐縮ですが、少し観光をして行きませんか?」


吉田は時計を指を指すと時刻は9時半より前の時間だった。

私は急いでシャワーを浴びて、メイクをして…髪をせっとする。

どうしてかこんな当たり前の経験が懐かしく感じる。


私は吉田に誘われ、車に乗った。

黒いマツダのCX5だった。

普通の車よりも静かなエンジンをならしている。

皮でできた椅子がとても座り心地が良かった。


しかし、私は二日酔いなのか頭痛がずっと酷かった。


「ねえ、どこに行くの?」

「そうですね…地獄のぞき…なんてどうでしょう。」

「地獄のぞき?」


初めて聞いた、千葉に住んでたはずなのに全く知らなかった。


「鋸山ってところなのですが、ここは石を拓いて建築素材にされてたとこなんですよ。そして、そこに地獄のぞきはあります。」


しばらくすると、私は水が欲しくなったので吉田にコンビニに寄るようにお願いをした。

吉田は快く承諾をすると、セブンイレブンに停めてくれ、私は店内に入る。

すると、私の足は止まった。


「これ…。」


私は店内に並ぶ1つの商品に目が止まった。

クッキークランチというものである。

吉田もそれを見る私を不思議そうに見ていた。


「普通の人からすると特別でもないコンビニのホットスナックだけど…わたしはこれが小さい頃好きだったの。」

「そうなんですか?」

「ええ、私はずっと探してたの。でも見つかることは無かった。金澤に沢山旅行に行かされて鳥取も大阪も沖縄も行ったの!…でも見つかることは無かった。こんなに近くにあったのね。」

「じゃあ…あやかさんにとっての小さいブルーローズが咲きましたね。」


私は一瞬キョトンとすると、確かにその通りだと思いワハハと笑い出してしまった。


私はクッキークランチを購入し、また車へと乗り込む。

しばらく海を眺めていて気がつけば、私たちは山へとたどり着いていた。

その後、ロープウェイに乗り出したあと、頂上に辿り着いた。


そのあとは…岩肌がゴツゴツした山道になっていて私は息切れしてバテていた。


「はあはあ…。」

「大丈夫ですかー?」

「なんでそんなにバテてないのよ。」

「僕は筋トレと水泳が趣味ですからね。」


私はとぼとぼ歩いているのだが吉田は足が軽いように動いていた。

どんだけ体力あるのよこいつ…。


「こうしてみると小さな冒険をしているみたいですね。」


吉田がほほえんだ。

だが、その子供のような笑顔が誰かに似ていた。

瞬間、また激しくズキズキとした痛みが頭を蝕む。

とても大事なことを…確かにクッキークランチは小さな夢ではあったのだが…もっと大事な夢があったはずなのだ。


気がついたら…石の断崖絶壁にたどり着いていた。

岩が象の鼻のように下を向いている。

そのすぐ上まで柵がありすすめるのがわかった。


私は岩を登り、その断崖絶壁に行くと地獄が見てるかのような恐ろしい光景が広がっていた。


なにか…もう少しでなにかを思い出せそう。


「あやかさん…それ。」


吉田が指を指すと、私のポケットが明るく光っていた。なんだっけ、この首飾り…。


この首飾りと呼応するように渦は大きくなった。

冒険…、夢…、首飾り…全てのピースが頭の中で合わさると、一気に私の頭は晴れ渡るようにすっきりとしていった。


「あやかさん…?」

「ありがとう、吉田。あんたのおかげで大事なことを忘れていたよ。」


私は柵に身を乗り出し、1度吉田に顔を向ける。


「ちょ、あやかさん!あぶないですよ!!」

「吉田…これから私はまだ残した忘れ物を取りに行ってくるの。わたしのブルーローズは…大事な仲間と旅をすることだから。」


すると、吉田は嬉しそうに……でも少し切なそうな顔でゆっくりと頷いた。


「全く……いつもいつも衝動的で困ったお方です。でも何かやりたいことが出来たのですね。今度は曲げちゃダメですよ。」

「いつも迷惑かけてごめんね、でもあなたがいるから今があるの。」

「気にしないでください!それでは行ってらっしゃい。」


私は目を閉じ渦に向け体を徐々にに倒す。

重力に逆らわず、ゆっくりと地面に落ちていくのを感じた。

頭が徐々に下になっていき、落下するのを感じる。


渦に入った時に石が最大限ひかると…私の意識は遠のいてしまった。



☆☆

ボロボロと何かが崩れ落ちると共に私は意識を取り戻す。

目の前には石になった仲間たちと魔王ゴールドが目の前にいる。

良かった!元に戻れた。


どうやら封印と共に元の世界に追い出されたのだが戻ることが出来た。

しかし、二度とあの世界に戻ることは無いのだろう。


「あ?」


ゴールドは、頭に青筋を立てるとこれまでにない怒りを感じる表情を浮かべていた。


「お待たせ。そろそろ決着を付けましょ。この叶わぬ願いを終わらせに来ました。」

「お前はいつもいつもそうだ。俺の思いどおりになるかと思ったらなにかしらで俺をイラつかせる。」

「あー、もうそういうの本っ当に聞き飽きた!」


私は凍てつく波動を放出すると……仲間たちが石化を解かれ、中から仲間達が目覚める。


「あれ?私たちは一体……。」

「よく分からないけど、助かったみたいだわ。」


みんなはこの状況を呑み込めずにいた。

たった1人を除いて。


「いつもお前は天才だよ。俺は信じてたぜ、アイリスよ。さて、形勢逆転だな〜魔王さんよ。」

「ふはは、雑魚が何びき集まったところで……この俺に勝つことは出来ない。」

「そうかな?」


エレノアが突如刀を眩い光で包み込むと、ゴールドに一太刀を入れた。

すると、光はゴールドを包み込むと闇の衣ごと引き裂いてしまった。


「なん……だと……?無敵の闇の衣を……!」

「不思議な夢をみていた。違う世界でアイリスと旅をするっていう夢だ。それを見てから調子が良くてよぉ……何故か俺だけで剣聖の力を使えるようになったんだ。」

「ばかな……この場に置いても成長したのか?なんてデタラメなんだ!」


「アイリス……まだ戦えるか?」

「もちろんよ、エレノア。」

「さて……それじゃあ決戦も決戦……超最終決戦と行こうじゃねえか。」


私とエレノアは互いに背を向けゴールドに勢いよく突っ込んで行った。

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