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―遥かなる物語―
2191年12月24日
「ねえねえっ、ママぁ!パパぁ!いちごのけーきがいーいー!」
「わかってるわよ、さ、パパいきましょ」
「パパぁ?」
「あなた?どうかしたの?」
俺は息が止まりそうなくらい驚いた。
妻や娘の声など、もう聞こえない。
彼女がいた。
通りの向こう、クリスマスツリーを見上げる後ろ姿は、紛れも無く彼女のものだった。
ファーのついた真っ白なコートに身を包み、ふわふわの帽子を被っている。
「リリー…」
思わずつぶやく。
「ぱぱっ!いくよおー!!」
娘が俺の腕を引っ張った。俺がそちらに振り返った内に彼女の姿は消えていた。
妻は怪訝そうな顔で俺を見る。
「あなた…どうしたの?」
「…いや、何でもない。さぁ、苺がたくさんのったケーキを買いに行かないとな!」
「うん!」
娘の笑顔を見て、妻も、
「いきましょうかっ…」
でも無理矢理笑顔を作ったのがバレバレだった。




