博美の髪質
月曜日、美穂がオフィスの女子ロッカーでコートを脱いでいると、後ろから博美が声を掛けてきた。
博美「美穂、おはよう~」
美穂「おはよー、博美。今日も寒いね。」
(良かった。いつもと同じ反応、掲示板のあの人が博美とか、私の考えすぎだよね・・・。あー心配して、損した。)
内心、少しホッとしながら、いつもの癖で博美の頭頂部に目をやった。その瞬間、博美が顔を上げた為、美穂は博美と目が合ってしまった。
博美「えっ、何?何か私の頭に付いてる?髪がはねてるとか?」
美穂「あ・・・髪にゴミが付いてる。払ってあげるね!」
美穂は一瞬動揺を隠せなかったが、とっさに思いついた言葉を口にし、博美の頭頂部を掌で軽く払った。博美の生え際の天パの感触を確かめながら。
美穂「もう取れたから、大丈夫だよ!さあ、遅刻しちゃうから、早く席に行こうよ。」
博美「ありがとう。じゃあ、またね。」
二人は女子ロッカーを出て、夫々、自分の席についた。美穂は、PCが立ち上がるまでの間、博美の天然パーマの部分の手触りを思い出していた。
(博美の本当の髪質って、本当にゴワゴワね。天然パーマの手触りって、こんなに酷いの?知らなかったわ。それに比べて・・・)
美穂はおもむろに自分の髪を一束掴み、感触を確かめた。滑々して、柔らかいが、一本一本張りがある。サラサラという擬音が聞こえてくる気がするほど、しなやかだ。
(雲泥の差ね。ふふふ。博美には悪いけど、あんな髪質に生まれなくて本当に良かったわ。)
美穂は、顔がニヤニヤしそうになるのを堪えながら、PCが立ち上がると、メールのチェックを始めた。未読メールが100件以上ある。美穂は、軽く伸びをした後、髪を全て椅子の背もたれに流し、メールを淡々と処理していった。