失礼な新人
「この度、海外営業部に配属になりました足立理沙といいます。前職でも、貿易関連の仕事をしていたので多少経験はありますが、わからないことが多く、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうかよろしくお願いします。」
美穂と山下が所属している海外営業部に、中途採用の女性社員が配属された。名前は足立理沙。25歳。小柄で華奢な体格、顔も可愛らしい。長さはわからないが髪は長いらしく、キャスケットに入れて纏めている。彼女が仕事を覚えるまでの間、美穂が教育を担当することになった。
美穂「足立さん。あなたの教育担当の岡田美穂です。よろしくね。わからないことがあったら、なんでも聞いてね。」
足立「岡田さん、よろしくお願いします。ところで、ここの女性社員は、髪を下ろしている人が多いみたいですが、髪型の規則とかってあるんですか?」
美穂「髪型?うーん、この職場は髪型に関しての規則は緩いわね。例えば、ほら私も結構な長さのロングだけど、縛っていないでしょう?」
美穂は、自慢のストレートロングを揺らして見せた。サラサラと綺麗な髪が揺れる。
足立「そうなんですか。では、私も明日から髪を下ろしてきますね。長時間まとめ髪していると、頭が痛くなるので助かります。」
美穂「そうするといいよ。じゃあ、まずはロッカーの場所とか備品類の場所とかを説明するね。」
美穂は理沙を連れて、社内ツアーをした。色々と業務内容を説明をするだけで、一日が終了した。そして次の日、美穂が出社すると、女子ロッカーに腰までの黒髪ストレートロングの若い女性が博美と恵美と談笑していた。
足立「おはようございます。岡田さん。」
博美「美穂、おはよう。」
恵美「岡田さん、おはようございます。今、理沙ちゃんの髪について話していたんですよ。下ろすとこんなに長くて、綺麗なんだねーって。」
美穂は理沙の髪に目を奪われた。昨日はキャスケットの中に入っていた為、目立たなかったが、まさか腰までの長さがあったことに驚いた。加えて、髪質の良さ。ツヤツヤサラサラのストレートロング。人の髪の美しさに厳しい美穂でも、これは綺麗な髪だと思った。
美穂「おはよう。足立さんの髪、本当に綺麗ね・・・」
足立「ありがとうございます。髪には少しだけ自信があるんです。岡田さんの髪も長くて綺麗ですね。そのストレートは、縮毛矯正掛けてるんですか?」
美穂は、自慢の髪が縮毛矯正と言われたことに一瞬動揺した。少し顔が引きつりながらも、すぐに返事をした。
美穂「えっ・・・、いや、縮毛矯正は掛けてないよ。」
足立「あ、そうなんですね。岡田さんくらいの年齢の人でストレートロングの方は、縮毛矯正を掛けている方が多いのかと思っていました。」
博美「ちなみに私は、縮毛矯正掛けてるよ。もうじきヘアドネーションする予定だけどね。」
足立「えーっ、綺麗なロングなのに、もったいないですね。」
(心にもないことを言っちゃって。博美の髪が綺麗な訳ない。それよりも私の髪を縮毛矯正と間違えるなんて失礼過ぎる。私は天然ストレートなのに!なんなのこの子!)
自慢の髪を貶されたような気がして、美穂は仕事中も心中は穏やかではなかった。仕事中、サラサラ揺れる理沙の髪が鼻についた。理沙の席で指導している為、時折、理沙の長い髪が美穂の手に触れた。その時の手触りが柔らかくてシルクのように滑々なのが、美穂をさらにイライラさせた。美穂は無性に山下に会いたくなった。山下に自分の髪を褒めてもらい、自信を取り戻したかったのかもしれない。
(今夜は、山下君と会おう。)




