後輩の恵美ちゃん①
山下と美穂との交際は順調だった。山下は職場の先輩でもあり、15歳年長の美穂を紳士的に扱った。その為、プライドが高く、交際が長続きしない美穂との相性はバッチリだった。何よりも、山下は美穂の髪をとにかく褒めた。自慢のロングヘアを褒められることで、美穂の自尊心は満たされていた。
美穂「この髪さえあれば、彼の心は離れることはないわね。ふふふ、ホント髪フェチさまさまね。」
美穂は完全に油断していた。元々の夜型の生活に加え、晩酌の量も増えた。年齢的に基礎代謝が落ちてきていることもあり、山下と付き合い始めて半年がたつ頃には、体重が3キロほど増えていた。普段、体重計に乗らない美穂も、体の変化には気づき始めていた。
美穂「あれ?ブーツのファスナーが上まで上がらない。おかしいな・・・足がむくんでいるのかな?」
ロングブーツと10分ほど格闘した後に、美穂は諦めて、スニーカーに履き替えた。会社に出社するため、急いで玄関を出て、車に乗り込んだ。
美穂「そういえば、このスカートもキツイわね。少し太ったのかも・・・」
美穂は何げなくバックミラーを覗き込んだ。こころなしか、顔もふっくらした様な気がする。美穂は髪に手をやった。絹のようなサラサラの手触り。手櫛をしても、いっさい引っかかることはない。そこには、いつもと変わらない美髪があった。
美穂「まあ、多少太っても関係ないかな。私にはこの髪があるから。山下くんがゾッコンのサラサラロングヘアがね(笑)。」
考え事をしているうちに、美穂は会社に到着した。女子ロッカーに入ると、すでに着替えが終わった恵美がいた。
美穂「恵美ちゃん、おはよう。今日は早いね。」
恵美「あ、岡田さん、おはようございます。ちょっと最近仕事が溜まっていて・・・それじゃあ、お先に失礼します。」
そう言いながら、恵美は女子ロッカーのドアノブを掴んだ。すると、一瞬立ち止まり、何かを思い出したかのように、美穂の方へ振り返った。
恵美「岡田さんって、最近、よく山下さんと話していますよね。仲が良いんですか?」
美穂は少し動揺した。山下との関係は、社内では秘密にしているからだ。出来るだけ自然に振舞いながら、美穂は答えた。
美穂「うん。仲いいよ。彼とは共通の友人が居るから、その人と一緒に飲んだりするからね。」
恵美「そうなんですね。いいな。私も山下さんと仲良くなりたいなー。今度、一緒に山下さんも誘って、飲みませんか?」
美穂「いいよ。山下くんに聞いておくね。」
恵美「ありがとうございます。では、よろしくお願いしますね。」
恵美は、美穂にお礼を言うと、女子ロッカーを後にした。美穂は、恵美の意外な反応に少し驚いていた。
(恵美ちゃんはもしかして、山下くんに気があるのかな?恵美ちゃんは25歳。もし恵美ちゃんが告白したら、山下くんは若い恵美ちゃんに靡くかも・・・)
そんなことを考えているうちに、着替えが完了した。美穂は女子ロッカーから、自分の席に向かう道中に、わざわざ恵美の席の後ろを通った。恵美の髪を観察するために。恵美の髪は栗色に染めたセミロングヘア。若いため髪質自体は悪くはないが、染髪を繰り返している為、痛みが目立った。所々、切れ毛があるように見える。枝毛も多そうだ。
(恵美ちゃんの髪は、10点満点中せいぜい5点といったところね。一方で私の髪は10点満点だから、髪質は私の圧勝ね。この程度の髪ならば、山下くんが恵美ちゃんに靡くことはなさそうね(笑))
美穂は余裕のある表情になり、わざとらしく髪を手で背中に払いながら、自分の席へ向かった。恵美に対しての優越感を感じながら。席につくと、美穂は上機嫌で、仕事を淡々とこなしていった。
(早く家に帰ってビールが飲みたい。今日のビールは格別に美味しそうだ。ふふふ。)




