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髪フェチくん①

土曜日の18時、美穂は『やまぎわ』との約束通り、駅西口の階段下に来ていた。髪型も約束通り、腰までの長さのサラサラヘアを、コートの上から垂らした状態で。前日、念入りにトリートメントした美穂の黒髪は、ベージュ色のスプリングコートの上で、いつも以上に映えていた。


美穂「そろそろ、来るはずだけど・・・」


 美穂がスマホの時計を見ていると、後ろから聞き覚えのある声がした。会社の後輩の山下だった。


山下「岡田さん、何しているんですか?」


美穂「や、山下くん!?奇遇だね。こんな休日に会うなんて・・・」


 不意に声を掛けられたことに加え、髪フェチ男性と待ち合わせしているという後ろめたさもあり、美穂の声は上ずっていた。


山下「僕は、ここで人と待ち合わせをしているんですよ。岡田さんも待ち合わせですか?」


美穂「ま、まぁ、そんなところかな~。」


山下「それは良かったです。アスカさん。」


不意にヅイッターの名前で呼ばれた為、美穂は動揺して、言葉に詰まってしまった。

(えっ!!じゃあ・・・山下くんが『やまぎわ』なの?)

山下は言葉を続けた。


山下「まあ、とりあえず、そこのカフェに入りましょうか。」


 山下に促され、美穂は駅前のカフェに入った。店員に席に通されて、まずはコーヒーを2つ注文した。コートを脱ぎながら、色々と思い出していた。山下が誰も居なくなったオフィスで美穂の抜け毛を拾っていたこと。いつも強烈な山下の視線を髪に感じていたこと・・・。乱れた髪を手櫛で整えている内に、美穂は次第に落ち着きを取り戻していた。

(やっぱり山下君は髪フェチなのね。しかも私の髪に好意を持っている・・・。ふふふ・・・)


軽く髪をかき上げた後、余裕のある笑みを浮かべながら、こんどは美穂が口を開いた。


「じゃあ、教えてもらおうかしら。今日、私を呼び出した要件を。ね、髪フェチくん♡」



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