博美のいたずら
翌朝、会社の女子ロッカーにて。恵美は着替えながら、博美に昨日見たことを話した。
恵美「昨日、岡田さんが駅前のレディースアデランズから出てくるところを見たんですよ。岡田さんって、髪の悩みとか全く無さそうだから、凄く意外で・・・。何であんな所にいたんですかね?」
博美「へー・・・美穂がレディースアデランズね。まあ、あの子も43歳だから、年齢的にも髪の悩みの1つくらいあるんじゃないの?プライドが高い子だから、私たちの前では、そういう素振りは見せないと思うけど。」
恵美「そうなんですかね?岡田さん、いつもあのスーパーロングの髪を下ろして、綺麗な髪をアピールしてるじゃないですか。あれ、髪に自信がないと出来ないと思うんです。だから、きっと、髪の悩みなんて無いと思ってました。」
恵美だけではなく、博美も当然気づいていた。美穂が自分の髪を自慢に思っていて、これ見よがしに綺麗な髪をアピールしていることを。そして、時折、美穂の視線が博美の髪に注がれていることにも博美は気づいてた。天パの髪にコンプレックスを持っている博美は、美穂のあからさまな綺麗な髪アピールには、少しモヤモヤした感情を抱いていた。
博美は一瞬考えた後、軽く笑みを浮かべながら、恵美にこう返答した。
博美「恵美ちゃん。美穂に、ちょっといたずらしようか?」
恵美「いたずら?何をするんですか?」
博美「だからね・・・ごにょごにょ・・・。どう?このいたずらした時の美穂の反応を見て見たくない?」
恵美「あー、面白そうですね!やりましょう。」
博美「じゃあ、決まりね!」
恵美と博美の会話が終わったちょうどその時、美穂が女子ロッカーに入ってきた。美穂は、昨晩の二日酔いがまだ抜けていなかった。「髪年齢38歳」と言われたことがショックで、昨夜は深酒をしてしまったからだ。
(あんな髪年齢診断なんてデタラメよ。私の髪年齢が38歳なんて、あり得ないんだから。思い出したら、ムカついてきたわ・・・。あー、頭痛いし・・・気持ち悪いし・・・最悪だわ。)
美穂は、恵美と博美の存在に気づき、顔を笑顔にして、挨拶した。
美穂「恵美ちゃん、博美。おはよう。」
恵美「岡田さん、おはようございます。あれっ・・・・、今、うなじのところに白髪が1本見えました。ちょっと髪を見てもいいですか?抜いてあげますね。」
美穂「えっ!しっ、白髪、嘘!じゃ、じゃあ、抜いてもらえる?」
美穂は酷く動揺しながら、うなじを恵美に見せた。今まで、白髪を一本たりとも見つけたことがなかったからだ。
恵美「うなじとか、自分では気づかないですもんね。えーと、たしかこの辺に・・・。あれ、おかしいな。すみません。白髪、見失っちゃいました。」
恵美が美穂の髪を見ている間に、博美は美穂の背後に回った。博美は、美穂のコートから何かを摘み採った。
博美「美穂、コートに抜け毛が付いてたよ。ほら。」
博美は美穂に長い抜け毛を手渡した。美穂は、受け取った抜け毛を見て、驚愕した。受け取った抜け毛は、いつもの美穂の髪の手触りとは程遠く、パサパサしていた。それに、根本が少しウネウネしているのも気になった。
(これが、私の髪?こんなにパサパサウネウネの毛が、私の髪に入っているの?これじゃ、まるで、博美の髪質と変わらないじゃない!白髪だって、今まで一本もなかったのに!一体、どうなっちゃったの?私の髪は本当に老化しているのかも・・・)
美穂「あ、ありがとう・・・。じゃあ、私、もう席に行くね。」
美穂は顔を引きつらせながら、コートと荷物をロッカーに押し込み、足早に席に向かった。恵美と博美を女子ロッカーに残して。
恵美「なかなか、面白い反応でしたね。岡田さん、めっちゃ動揺してましたね(笑)」
博美「ふふふ、面白かったね。想像通りの反応だったわ。」
この白髪も抜け毛も博美が考えたいたずらだったのだ。白髪があるというのは恵美の嘘。抜け毛についても、美穂の抜け毛ではなかった。同じロングヘアの博美の抜け毛を、美穂のコートから採った振りをして、美穂の抜け毛として手渡したのだ。
恵美と博美も、美穂を追うようにして、女子ロッカーを後にした。




