騎士の来訪2
新キャラが登場します。
「いやあ、貴重な時間を頂き、ありがとうございます。バルト伯爵。」
広い応接室に通されると、ベルナルドは笑顔でハキハキと言った。金色の短髪が似合っている。
「とんでもない。ランディーニ殿こそ、お忙しいでしょう」
マティアスは、笑顔でそう言ったが、内心では早く帰れと願っていた。ちなみに、マティアスは今、牙を目立たないようにする薬を飲んでいる。
「ところで、今日はどういったご用で?」
マティアスが切り出すと、ベルナルドはスッと目を細めて、テーブルに肘を付いた。
「……実は、行方不明になっている者がおりましてね」
「行方不明?」
「はい。ダリオ・アッカルドという貴族で、昨日から姿が見えないそうです。……何かご存じありませんか?」
「いえ、心当たりはありませんね。……何故私に聞くんですか?」
「……昨日、この屋敷からものすごい音がしたと言う話を聞いたのですが」
通りすがりの者に聞かれていたか。ガラス窓をすぐ直しておいて良かった。
「気のせいではないですか?この屋敷では、特に変わった事は無かったですよ」
「……そうですか」
ベルナルドは、マティアスをじっと見ながら、話を続けた。
「そうそう、もう一人、私の友人も行方不明になっているのですが……ガブリエラ・サヴィーニ、ご存じありませんか?」
「……いえ、知りませんね」
マティアスは、笑顔を保ったまま答えた。
◆ ◆ ◆
しばらくして、ガブリエラのいる部屋のドアがノックされた。
「ガブリエラ嬢、もう出てきて大丈夫ですよ」
リディオに言われ、ガブリエラは応接室に移動した。応接室では、マティアスが疲れた表情をしていた。
「あの……大丈夫ですか……?」
「大丈夫じゃない。俺はもう寝る。……お前、屋敷の外に出るなよ。まだ新聞で報道されていないが、お前が聖女様を暗殺しようとしたっていう話、もう貴族の間で広まりつつあるらしいぞ」
「そうなんですか?今日の夕食は、リディオさんではなく私が作ろうと思っていたのですが……食料の買い出しには行けそうにないですね」
「おや、そうでしたか。では、今日の夕食はガブリエラ嬢にお願いしましょう。買い出しは私が行きますよ」
リディオが笑顔で言った。
「呑気だな、お前ら……」
マティアスはそう言うと、ハッとなって窓の外を見た。カーテンをしているのではっきり見えないが、人の気配がする。話を聞かれた。
「誰だ!!」
そう言って即座に窓を開けると、そこにいたのは―先程帰ったはずのベルナルドだった。
よろしければ、ブックマークやいいね等の評価をお願い致します。