何があっても2
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次の瞬間、部屋のドアが勢いよく開き、銃声がした。銃弾は、ラウルの左腕を貫通する。
「無事か、ガブリエラ!!」
そう言うマティアスの手には、拳銃が握られていた。後ろには、リディオもいる。
「マティアス様、リディオさん!!」
「……よくここがわかったね」
ラウルが、左腕を押さえながら言った。
「ガブリエラを返してもらう」
マティアスはそう言うと、ガブリエラの方に駆け寄った。
「そういうわけにはいかないな」
ラウルは、側にある棚に置いてあった拳銃を手に取ると、右手で引き金を引いた。銃弾がマティアスの頬を掠める。マティアスも再びラウルに向けて発砲したが、ラウルはしゃがんで銃弾を避けた。
そしてラウルは、素早くマティアスの脚を引っかける。マティアスが仰向けに倒れ、その拍子に拳銃が手から離れる。ラウルはマティアスの上に馬乗りになると、マティアスの腕に噛みついた。
「マティアス様!」
ガブリエラは思わず叫んだ。
ラウルは、何故か笑みを浮かべてマティアスから離れた。数秒してマティアスはゆっくりと立ち上がったが、様子がおかしい。
目が血走っており、呼吸も荒いようだ。そして、ガブリエラの方を向くと、ガブリエラに近付き――乱暴に床に押さえ付けた。掴まれたガブリエラの肩に痛みが走る。
「マティアス様、どうしたんですか!?」
ガブリエラが困惑して言葉を発する。
「僕は特殊な体質みたいでね、僕の唾液がヴァンパイアの身体に入ると、そのヴァンパイアの血を欲する本能が高まるんだよ。つまり、マティアスは今、君の血を吸い尽くして殺そうとしているわけだ」
「え……」
マティアスは、ガブリエラの首筋に口を近付けており、今にも牙を突き立てそうだ。
「……ハハッ、愛する人に殺されるなんて、最高じゃない!」
リディオに床に組み伏せられていたアンジェリカが笑う。
「……リディオ、拳銃を……俺に……寄こせ……!」
苦しげながら、マティアスが言葉を発した。
「嫌な予感がしますが……わかりました」
リディオは、自身が持っていた拳銃を的確にマティアスの側に投げた。
マティアスはその拳銃を右手で握りしめると、自身の腹部に当て、引き金を引いた。
「マティアス様!!」
ガブリエラが叫ぶ。マティアスの腹部から、ドクドクと血が流れていた。
「もう……唾液の毒が……全身に回っている……。死ぬギリギリの所まで血を抜いて……毒を出すしかない……」
理性が残っている内に早急に血を抜かなければならない。撃つ部位を腹部にしたのは、大きな賭けでもあった。
「……まあ計画とは違うけど、これだけ出血していれば助かる可能性は低いし、このままマティアスが死ぬのを眺めるのもいいか。マティアスが死んだ後、アンジェリカのお望み通りガブリエラを殺せばいいし」
ラウルが笑顔で言った。
「……何があっても……ガブリエラは……俺が守る……」
既に意識が朦朧としているマティアスが呟く。
「どうやって守るつもり?僕にはまだ拳銃があるんだよ。そこの白髪の男を殺す事だって出来るし、もう僕達を止める事はできな……」
ラウルが言いかけた時、また部屋のドアが勢い良く開かれた。
「ラウル・スカットーラだな。八名の殺害容疑で逮捕する!」
ベルナルドが言葉を発した。ベルナルドに続き、騎士団の男達もゾロソロと部屋に入って来る。
「やっと……令状が……取れたか……」
マティアスはそう呟くと、ガブリエラの身体の上に倒れ込んだ。
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