表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/56

overdose

よろしければ、お読み下さい。

 夜会の日まで、あと三週間となった。作戦会議に参加したメンバーは、皆忙しい日々を過ごしている。

 そして、ロマーナは、クリストフとエミーリアの墓の前にいた。花を供えに来たのだ。

「……ありがとう、ロマーナ」

庭に出て来たマティアスが声を掛ける。

「恩人の墓参りをするのは当然の事よ」

そう言って、ロマーナはマティアスの方を振り返った。そして、じっとマティアスを見た後、眉根を寄せた。

「……あなた、また顔色が悪くなったんじゃない?」

「……そうか?」

「そうよ。……ねえ、あなた、牙を隠す薬、平均で一日何回飲んでる?」

「……二回」

「本当は?」

「……三回」

ロマーナは、呆れた表情になった。

「飲み過ぎよ。あの薬、通常は一日一錠、多くても一日二錠飲むものなのよ。……貧血の症状は、どれくらいの頻度で出ているの?」

「……最近は、毎日出てる」

「多いじゃない!」

「……仕方ないだろう。最近、断れないような仕事を色々頼まれて、人に会う機会が増えてるんだから。」

「……その仕事を引き受けてるのは、ガブリエラの為?」

マティアスは、無言で目を逸らした。

「あなたが無理してる事、ガブリエラは知ってるの?」

「知ってるわけないだろう。知ってたら、あいつはどんな手を使ってでも俺を止めてる」

「……そう。なら、私、ガブリエラに言ってあなたを止めてもらうわ」

「待ってくれ」

マティアスは、切実な顔で訴えた。

「ガブリエラの無実を証明する為には、必要な事なんだ。……せめて夜会の日までは、黙っていてくれないか」

しばらく沈黙が続いた後、ロマーナは溜息を吐いた。

「……わかった、言わないでおく。でも、なるべく自分の身体を大切にしてね」

「ああ、恩に着る」

そう言って、マティアスは屋敷に戻っていった。

 マティアスの背中を見ながら、ロマーナは小さく呟いた。

「……馬鹿な男」


 マティアスは書斎に戻ると、机に向かった。書類に目を通してすぐ、眩暈がした。今はまだ午後二時。夕食を取れば治まると思うが、それまでガブリエラに悟られずに済むだろうか。

 そんな事を考えていると、部屋のドアがノックされた。「入っていいぞ」と声を掛けると、ガブリエラが入って来た。その顔を見て、マティアスは目を見開いた。今にも泣きそうな表情をしている。

「……どうしたんだ?」

ガブリエラは、机の前まで歩み寄ると、言った。

「マティアス様、これからは、毎日私の血を吸って下さい」

「お前、急に何言って……」

マティアスは言いかけたが、ガブリエラの目を見て察した。

「……お前、さっきの話を聞いてたのか……」

ガブリエラは、頷いた後に言った。

「マティアス様が他人の為に無茶をする性格なのは、ここ二か月でよくわかりました。なので、もうマティアス様が無茶をするのは止めません。……でも、苦しかったら言って下さい。私に出来る事があったら、言って下さい」


 ガブリエラの目から、涙が零れていた。マティアスは立ち上がると、ガブリエラにハンカチを渡した。

「わかった。……わかったから、泣くな。……お前に泣かれると、辛い」

ガブリエラは、涙を拭いたハンカチをマティアスに返すと、聞いた。

「……今は、貧血の症状は出ていませんか?」

「……実は、さっき眩暈がした」

「やっぱり、症状が出ているんですね……私の血を吸って下さい」

「……そうさせてもらう。ありがとう……」

マティアスは、ガブリエラの肩に手を置いて、首筋に牙を食い込ませた。


 ガブリエラは、ヴァンパイアである自分の健康まで気遣ってくれる優しい人間だ。早く元の生活に戻れるようにしてやりたい。今でもその気持ちに変わりはないが、もう少しガブリエラ自身の心に寄り添う努力をしよう。マティアスは、そう思いながら血を飲み込んだ。


ロマーナは、ガブリエラを呼び捨てにするようになっています。


よろしければ、ブックマークやいいね等の評価をお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ