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黒髪の薬師1

今回から、『黒髪の薬師』が始まります。

よろしければ、お読み下さい。

 ガブリエラが目を覚ますと、そこは知らない民家だった。ベッドから上半身を起こすと、必死で記憶を辿る。確か、ベルナルドやプリシッラとリビングで雑談していたはずだ。

 ここはどこだろう、どうしてこんな所にいるんだろうと思い周りを見回すと、窓際には植木鉢が何個も並んでおり、綺麗な花を咲かせている。側にある棚には、薬品を詰めたと思われるビンが所狭しと並んでいた。


 しばらくして、部屋のドアが開かれた。

「あら、目が覚めたのね」

そう言ったのは、眼鏡を掛けたロングヘアの女性。二十代くらいで、艶のある黒髪がさらりと揺れた。

 彼女には、見覚えがある。ゲームに出てくるキャラで、名前はロマーナ。母親をヴァンパイアに殺され、復讐の為にヒロインであるアンジェリカに協力するという設定だった。

「……あの、ここは?私はどうして、ここにいるんでしょう?」

ガブリエラが言うと、女性は淡々と答えた。

「まずは自己紹介しましょうか。私はロマーナ・チェステ。薬師をしているの。ここは、私の自宅よ。あなたをここに連れて来たのは、あなたをマティアスから解放する為なの」

「解放?」

「そう。……あなた、マティアス・バルトと契約しているのではなくて?」

ずばりと言われて、ガブリエラは焦った。契約の内容を知られれば、マティアスがヴァンパイアだと露見してしまう。

 ガブリエラが黙っていると、ロマーナはベッドの傍らに腰かけ、ぐっとガブリエラに顔を近づけた。

「ねえ、教えて。契約しているの?契約の内容は?」

ガブリエラは否定しようとしたが、ロマーナの瞳を見ていると、勝手に口が動いた。

「……私を……匿ってもらう代わりに……血を……提供する……契約をしました……」

「その契約に、くすんだ緑色の便箋を使った?」

「……はい」

「やっぱりね。あなた、ガブリエラ・サヴィーニでしょう?聖女様を暗殺しようとしたっていう」

そう言われて、ガブリエラは、自分が今赤毛のままなのに気が付いた。

「安心して。あなたを衛兵に突き出す気は無いわ。暗殺未遂が事実であっても嘘であってもね。……それにしても、人の弱みに付け込んで契約するなんて、マティアスも悪い男ね」

「……違う。契約は、私から言い出した事なんです。しかも、無理矢理契約したんです……」

「嘘、あの男は、自分勝手で他人の命なんて何とも思っていないはずよ。……でなければ、あんな事……」


 その時、玄関のドアを激しく叩く音がした。

「おい、ロマーナ、いるんだろ、出てきてくれ!」

マティアスの声だった。

「マティアス様……!」

「丁度良いわ。少し、彼を試してみようかしら」

 ロマーナは、側にあったナイフをガブリエラに突き付けながら、ガブリエラを玄関まで連れて行った。そして、ドアの向こうのマティアスに声を掛けた。

「どうぞ入って。鍵はかかっていないわ」

 勢い良くドアが開き、マティアスとベルナルドが入ってきた。マティアスは、ナイフを突き付けられているガブリエラを見て、眉根を寄せた。

「……ロマーナ、ガブリエラを放してくれ」

マティアスが、静かに言った。

「嫌よ。あなたも、大切な人を失う辛さを味わうと良いわ」

そう言うと、ロマーナはガブリエラの胸にナイフを突き刺した。ガブリエラの服が赤く染まっていく。

「ガブリエラ!」

マティアスがガブリエラに駆け寄る。ロマーナは、軽くガブリエラの身体を押してマティアスの方へと寄こした。

 マティアスは、ガブリエラを横に寝かせると、懐からナイフを取り出した。そして、自分の左腕を切りつけると、流れる血をガブリエラに飲ませ始めた。先程リディオに血を飲ませたばかりだが、そんな事構っていられなかった。

「死ぬなよ、ガブリエラ……」

「……あの、マティアス様」

「しゃべるな!」

「いえ、あの……ナイフ、胸に刺さっていないんですけど……」

「……ん?」

良く見ると、服を赤く染めているのはインクのようだ。近くに落ちたナイフを拾ってみると、本物のナイフではなく、刃先が引っ込む仕掛けのおもちゃだった。

「……ふざけるなよ。さっきリディオに血を分けたばかりなのに……」

マティアスはそう呟くと、気を失った。


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