5/12(金)
ドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!
家中からドンドンと叩く音が響く。
不思議と、うるさく感じない。
というか、もう、どうでもいい。
疲れた。
ベッドに横になりながら、ぼーっと天井を見上げる。
…ドンドンドンドンドンドンドンドン!!
…だんだん、叩く音が遠くなっていく。
……ドンドンドンドンドンドン──…
瞼が…閉じていく─…
「開けて!!」
瞼が閉じようとした瞬間だった。玄関の方から、家中に響くくらいの大声で誰かが叫んだ。何だか、聞き覚えのある声だった。
私はその声にビックリして、はっ!と瞼を開く。そして。
「─あれ?私…いつから仕事に行ってないんだっけ?敷地内の猫たちとはいつから会ってないんだっけ?それに…お父さんたちはどこ?ご飯も何日も食べた記憶がないし、水も飲んでない─…え?」
私はそうひとりごちながら、ベッドからゆっくりと半身を起こす。机の上にあったスマホをタップし『小説家になろう』を開く。そして、最近なろうでつけてたこの『たくとの常日頃録』を読み返す。
「これも…これもこれもこれも、ずっと前の記憶だ。だって、お母さん猫も子猫たちも今はもう家で飼ってるし、それにその子猫たちももう大人になってる。なんでこんな、ずっと前のことを…?ていうか、この日記もいつ書いてたっけ?」
ドンドンドンドンと、玄関からドアを叩く音がする。私は部屋を出て、玄関の方にゆっくりと向かった。すると…
「アケテ…アケテ…ネエ、アケテヨ……」
ドンドンとノックをしながら、ドアの向こうで誰かが言う。その声は一つじゃないようだ。
「そうだ私…行かなきゃ」
そう言いながらドアノブを握り、そして─────…。