オリエンテーションコンサート
楽しい演奏は時間を忘れるものですね。そんなこと、何度も感じて、それが嬉しくて楽しくて、ただただ楽器を吹いて、音楽をした時間がありました。
(全部俺が悪いから…)
「先輩、また泣いてます?」
感情って、抑えられなくなるんですよ。よく歳取ったらとか言いますけど…
「やっぱり気持良いですね。大音量に囲まれるの。」
「寒いのに、先輩よく指、動きますね。」
「??指だけ温くなりません?吹いてる間に。」
「あ、わかる!確かになぜか指だけ温かくなる。」
「ホントかよ?」
「ハハハ、ペットとボーンのトップ。二人共、よく引っ張ってますね。」
「楽しだけで良い。か。なんか分かるような分からないような。でも学内イベントだって、オリテンの頃が一番ハリがあるって言うか…他がつまんないってわけじゃないけど、それ以降はどんどん大変さが大きくなっていくというか…」
「新入生には初ヤーボだしね。」
ほうほう…春になったらまた忙しくなりますね。
「先輩は関学軽音のライブ、見たことありますか?」
軽音のライブ…あれから見てないんですよねぇ。プラザ方面から音が聞こえると、自然と反転して離れていく自分が居ると言うか…
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1994年5月
KGLMC オリエンテーションコンサート
初日がプラザ、二日目が旧学生会館2階ホール.最終日はまた、プラザ。
楽器を買ってここまでの間に、CDコンパと新歓コンパ、大々的な宴会がいくつかあって、そこで関学軽音の大凡の活動について先輩方から教えて貰った。
「お、新歓コンパで大スベリしたホーネット君。確か、照明警備ヤーボだったかな?頑張りたまえよ。」
坪内さんはニヤニヤしながこっちを見ている。
「お、奏汰。」
「おはようございます。」
それに比べて海老川さんは爽やかですよ…
「『友達の家まで匍匐前進で行く人』タイトル聞いたときはオッ?と思ったんだけどなあ」
だめだ、海老川さんまで悪い顔をしているよ。
CDコンパ:2回生(D年)主催の新入生(C年)の歓迎会。CD年のみの会で、D年から関学軽音のしきたり、ルールを教えて貰ったり、軽音主催コンサートでの役割「ヤーボ」の担当について説明してくれる。会の途中でEF年さんが乱入してきて、会を盛り上げつつ、会費のカンパを置いていってくれるのもまた優しくて楽しい。
新歓コンパ:全学年参加の新入生歓迎コンパ。なぜか会場が梅田。ワンフロア貸し切りでマイク、音響使用のそれなりのスケールのイベントなので西ノ宮には会場がなかったのかも。
この新歓コンパでC年は、自己紹介がてらに一発芸を披露することになっていた。
トランペットの隼人は、「ジャズプレイヤー漫談」。先輩からジャズプレイヤーの名前を言われたら速攻でそのプレイヤーのうんちくを一つ言う…みたいオシャレなやつ。少し隼人が嫌いになった。
強烈に印象に残ったのは西神雄大。ピンク色の全身タイツに金髪のカツラ。左手前にはブルボンピッカラの細長い筒。何かを警戒しながらも堂々と登場し、一言。
「スペースコブラ」
ガリガリの高身長がなんともみすぼらしくて。それが悲しいくらいに面白い。
「奏汰!来年はお前がスペースコブラやれよ!」
いやいや、C年の登竜門でしょ。とかなんとかやってる間に、オリエンテーションコンサート(プラザ版)の1日が始まる。
AM 8:00 機材運び出し
部室の前で奥井さんが集合をかける。
奥井さんの後ろにE年さん、幹部と言われる人たちがズラリ。
向かいにCD年。ヤーボな僕たち私たち。
「C年にとっては初めての軽音ライブだ。ただ、大事な大事なライブなので、D年の指示に従って、コンサートを潰すようなことが無いように頼む。では、始めよう!」
奥井さんの掛け声と共に、ヤーボは走り出す。旧学生会館4階の部室から、1階の広場、プラザにコンサート用機材を下ろす所から1日が始まる。
メインスピーカーは大きくてめちゃくちゃ重い。モニター、これは演奏者に向かって音を出すためのスピーカー。
まずこのあたりの会場設備用機材は照明警備ヤーボが率先して運び出し。
ドラムヤーボ、キーボードヤーボは出演者の楽器を。アンプヤーボがギター、ベース。マイクと、全てのマイクから音を集めて音質やヴォリュームなんかを調整するためのミキサー等の楽器以外の音響機材をPAヤーボ。
あと、本番前後やバンド間のMCを担当するMCヤーボ、お客さんを会場に呼ぶ情報宣伝ヤーボ、ライブ当日は楽屋になる部室の管理をする楽屋・部室管理ヤーボ……などなど、皆で機材をプラザに運び出す。
プラザに荷物を運ぶとその日のステージに合わせて機材の置き場所や、搬送をスムーズに進行させるための、文字通り進行ヤーボが、声を出して仕切っている。
AM 9:00 位置決め、結線
進行ヤーボの中澤さんは、ステージ全体を見ながら、スピーカーの位置や当日の出演者とバンド毎の各楽器の位置を決める。
「奏汰!!下手メイン、内振りすぎ!」
薄らデカ男はその体の大きさから、とにかく大きな物を運ばされ、高い所のものを取ることに長けていた。
「ピアノもう少しドラムに寄って内振り、ベーアンはドラムのちょい前で。」
バンドマスターの黒田さんと話しながら、ステージのヤーボに指示を出し、バンドプレイヤーの位置を決めて行く。進行ヤーボとはなんだかちょっと格好良く見えるヤーボ。
「奏汰!ちょっとデカイ!」
中澤さん、まあ、ウケたので全然良いですよ。好きなだけイジって頂いても。
中澤さんが影月さんにに最終確認を取って、お互いに頷いた。
「チャリオ、位置決めOK!そこでバミって!!」
バミる:ステージの本番での機材設置位置に印を付けること。大体はガムテープでバツ印を貼って「チャリオ、ベース」とか書く。
「てんかーん!!」
次のバンドの機材の位置決めに「転換」。チャリオみたいなビッグバンドはとにかく準備が大変。ドラム、ピアノは電子ピアノだけど、ベース、ギター、トランペット5本にトロンボーン4本、最後にサックス5本。
そこから、次のバンドの位置決めに…っとある時、BGMを流し始めていたメインスピーカーから「ボン!」と音が鳴った。
会場最後尾、客席後ろのミキサー付近でずっと見ていたE年さん達から怒声が飛ぶ…よりも前に、
「おい!!引き締めろ!!」
中澤さんが場にきの入った声を掛けて、皆が一斉に返事をする。
「裕也!メインスピーカーから音全部を出てる?」
客席後ろのミキサーは通称「メイン卓」。そこでPAチーフのE年、宮村さんがメインスピーカーから出る音のバランスや左右のスピーカーへの楽器の割り振りなどをする。
位置決めと並行して、PAヤーボはドラムの太鼓一つ一つ、ヴォーカル、管楽器にマイクを向ける。そのマイクやキーボード、アンプからの「シールド(線のこと)」をステージ真ん中のボックスに結線する。ボックスからメイン卓と、ステージ袖のモニター用ミキサー、通称モニ卓の2つの「卓」にシールドが結線される。
そのボックスを、位置決め中のヤーボの一人が躓いて蹴ってしまい…その「ボン!」である。
その手の音は、スピーカーを酷く痛める。最悪の場合はスピーカーの心臓部分、振動して音を出すための部品が壊れてしまうこともある。これを、「スピーカーが飛ぶ」と言うのだが、軽音のメンバーは、その「ボン!」を聞いて瞬間的にスピーカーの故障を気にしたのである。
「宮村さん、大丈夫です!」
「頼むよ〜」
中澤さんと宮村さんの掛け合いが終わり、E年さんも少しホッとした顔をする。
再び転換が開始され、今度はR&Bのバンド、ベジタブルブルースの位置決めになり、それが終わると、しばし休憩…と言っても次のリハーサルがめちゃくちゃ大変。
次回、オリエンテーションコンサート Part2




