異世界に召喚されたけど拒否したらこうなった。
「おぉ!・・・勇者よ?・・・勇者様はどちらへ?」
10m近い大規模魔法陣の1番端で偉そうにしている国王風の豪華な織物を着ている人物だが何故か偉そうな事を言って周りをキョロキョロとしている。
「ばぶぅ?」
赤子の声が大規模魔法陣中央から聞こえ、この場にいる全員の視線が一斉に同じ場所に向かう。
「ゆ、ゆ、勇者、様?・・・」
「赤子ではないですかッ!」
「へ、陛下!」
「わしが10年の歳月をかけ。編み出した秘術が・・・」
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遡ること10分前。
平日真っ昼間。1人のイケメン(自称)がスエット姿でコンビニ弁当とコーヒーを買い、日差しを避けながら自宅へ向かう。
俗に言うニートである。まぁまぁ有名大学を卒業し、入社した会社が不祥事を起こし民事再生法を適用した。そしてこのニートは残念なことに役持ちでもないただの平社員で切りやすかった為か尻尾切りに遭い28でリストラ。この2年退職金で自堕落な生活を送っている。
「あっちーな、熱い。もう暑いじゃなくて熱いだな。」
そんな男は再就職先を探すことなく今日も毎日の日課であるコンビニ飯を買いにやってきてた。たった数百メートルの散歩である。
「そろそろ退職金も底が見えてきたからなー何かやらないといけねぇかな、だけどなーまたやめさせらめれてもなー」
と金がないことに言い訳をして自分に嘘を吐く。ここ最近じゃ水道も止められ始めていた。
そんな男でも転機は訪れる。
それが今の現状である。
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『勇者となるために召喚された者よ』
「誰だテメェ」
本人に自覚なく異世界の魔法によりどこまでも永遠と続く不思議な真っ白い空間に2人っきり。
1人は自称イケメンともう1人は性別不明だか体感は女性のような気がする、神と思わしき人物。
『初めてのパターンですね・・・』
顔を背ける。どこかと話をしているのか話し声が聞こえる。
『勇者となるために召喚された者よここは異界でも現世でもない空間。私たちが便宜上『神ノ間』と呼ぶ異空間です』
「おいやり直すな」
神ノ間?何言ってんだこの人?
『私は異界と異界を司る神テレジア』
「筒抜けかよ!」
『意味はわかりませんが貴方の考えは全てわかります。』
「意味わかってるじゃねえかよ!」
『貴方には二つの選択権が与えられます。』
「おい!無視するな!」
『一つは貴方を召喚しようとした貴方が居た異界とは別の異界である世界に勇者として召喚され、壮絶な戦死を遂げるか
はたまた、私が適当に選ぶ異界で赤子として記憶を無くし転生するか。貴方に選択権があります』
「話を聞け!俺を元の世界に返せ!」
『私は忙しいのです少しならお話を聞くことも可能ですが、意見の相違があるようです。私の方で厳正な審査をした結果貴方の言動は勇者として相応しくないと判断しました。赤子となり転生し、新たなる人生を謳歌してください。』
「おい何言ってんだ!テメェ!人の話――『生命逆転』――ばぶぅ?」
そして自称イケメンは赤子となり転生を果たしたのであった。
神はなんでもできると思っていないだろうか。
それは違うのかもしれない。